市川レポート

REPORT

北朝鮮情勢~今後のためのポイント整理

2017年09月15日

●米国は北朝鮮の核放棄が対話の前提、北朝鮮は核保有の認定が前提、対話の動きはみられず。
●朝鮮半島の非核化のため米日韓は経済制裁の強化を重視、ただカギを握る中ロは慎重な姿勢。
●6カ国の歩み寄りは困難だが、少なくとも軍事衝突は避けたいという点では一致していると思われる。

米国は北朝鮮の核放棄が対話の前提、北朝鮮は核保有の認定が前提、対話の動きはみられず

北朝鮮を巡る情勢は、米国、韓国、日本、中国、ロシアの思惑が複雑に絡み合い、混迷を極めています。そこで今回は、一般に報道されている情報に基づいて、各国の主張を改めて検証し、北朝鮮情勢をみる上でのポイントを整理します。まず米国の主張は、「朝鮮半島の非核化」です。具体的な手段は、「経済制裁の強化」であり、核放棄を前提に北朝鮮を対話の場に引き出し、核問題の平和的解決を目指します。

これに対し北朝鮮の主張は、「現行体制の維持」です。具体的な手段は、「核・ミサイル開発」であり、国際社会に核保有国と認めさせることを重視しています。また、米朝対話について、米国は北朝鮮の核放棄を前提としていますが、北朝鮮は米国による核保有の認定を前提としています。前提条件がこのように相反しているため、現時点で米朝両国に対話の動きはみられません。

朝鮮半島の非核化のため米日韓は経済制裁の強化を重視、ただカギを握る中ロは慎重な姿勢

日本と韓国の主張は、基本的に米国と同じ「朝鮮半島の非核化」です。北朝鮮の核保有が容認されることになれば、日韓両国は長きにわたって核の脅威にさらされることになり、安全保障上、極めて深刻な問題となります。そのため、日韓ともに「経済制裁の強化」を通じた核問題の平和的解決が喫緊の課題となります。そして「経済制裁の強化」について、カギを握るのが中国とロシアです。

中国の主張は「米国と対等かつ安定した関係の構築」です。米国は、「経済制裁の強化」を遂行するにあたり、北朝鮮と関係の深い中国に、影響力の行使を促しています。中国としてはある程度、米国の要求を受け入れざるをえないと思われますが、北朝鮮の体制が崩壊するほどの強い経済制裁には慎重です。これは、体制崩壊となれば、多くの難民が中国に押し寄せる恐れがあるためです。

6カ国の歩み寄りは困難だが、少なくとも軍事衝突は避けたいという点では一致していると思われる

ロシアの主張は、「自国に対する経済制裁の緩和」です。ロシアはウクライナ侵攻を巡って欧米から経済制裁を受けているため、その緩和と引き換えに、北朝鮮への「経済制裁の強化」に協力するという交渉も可能と思われます。ただ、ロシアは極東地域で北朝鮮労働者を受け入れている事情などもあり、中国ほど北朝鮮の体制崩壊を懸念していませんが、あまりに強力な経済制裁には、一定の距離を置いています。

そのため、①経済制裁の強化で核放棄を求める米国・日本・韓国、②自国の利益を鑑み、強い制裁には慎重な中国・ロシア、③その隙を狙って核実験やミサイル発射実験を続ける北朝鮮、この構図はしばらく続く見通しです(図表1、2)。これに終止符を打つのは米朝対話ですが、対話の前提を、北朝鮮の核放棄とするか、あるいは核保有認定とするかは、極めて難しい判断です。ただこれら6カ国は、少なくとも「朝鮮半島での軍事衝突は避けたい」という考えに相違はないと思われます。