市川レポート

REPORT

米予算審議の基礎知識

2017年09月25日

●米議会における2018会計年度の予算審議は、10-12月期に市場の重要な材料となる可能性。
●予算審議では、「予算決議」、「歳出予算法」、「財政調整法」についての審議・可決が行われる。
●共和党の税制改革案は9月25日週に公表の見通し、ただし実施時期は来年にずれ込む恐れも。

米議会における2018会計年度の予算審議は、10-12月期に市場の重要な材料となる可能性

米国では、2017年10月1日から2018会計年度が始まります。ただ、新年度の予算審議が遅れており、10月1日から12月8日までは、暫定予算が適用されます。そのため、米議会は、暫定予算の期限である12月8日までに、新年度の予算を成立させなければなりません。もし期限までに新年度予算が成立しない場合、米政府機関は一部閉鎖に追い込まれることになります。

12月は12日、13日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますので、米政府機関の一部閉鎖で市場が動揺した場合、政策判断への影響が懸念されます。また、新年度予算には、減税やインフラ投資などの景気対策が盛り込まれますので、予算審議の行方は、10-12月期に市場の重要な材料となる可能性が高いと思われます。そこで今回は、米国の予算審議について、大まかな流れを確認します。

予算審議では、「予算決議」、「歳出予算法」、「財政調整法」についての審議・可決が行われる

予算審議は、①「予算決議」、②「歳出予算法」、③「財政調整法」について、それぞれの法案を審議、可決するという手順を踏みます(図表1、図表2)。①の「予算決議」は、歳出、歳入、財政収支など、予算の全体像を示すものです。上下両院の一致決議で可決され、大統領の署名は必要ありません。②の「歳出予算法」は、「予算決議」の成立が遅れた場合、未決でも審議が始まりますが、③の「財政調整法」の審議は、「予算決議」の成立が必要です。

②の「歳出予算法」は、各省庁の年度予算を定めます。これにより、国防費や教育関係費など、「裁量的経費」の歳出が可能になります。なお、「裁量的経費」は、米国の歳出の約3分の1を占め、残りの約3分の2を「義務的経費」が占めます。「義務的経費」には、社会保障(年金)、メディケア(高齢者等医療保険)、メディケイド(低所得者医療扶助)などが含まれます。恒久法で歳出権限が付与されており、毎年度の予算策定は不要です。

共和党の税制改革案は9月25日週に公表の見通し、ただし実施時期は来年にずれ込む恐れも

この「義務的経費」や税制を変更する場合、恒久法の改正が必要となりますが、その際、「財政調整法」が重要な役割を果たします(図表2)。「財政調整法」による審議手法を財政調整措置といい、改正法を迅速に成立させるため、審議時間は20時間に制限され、上院での法案は全100議席中51議席の単純過半数で可決されます。そのため上院で52議席を持つ共和党は、財政調整措置により、単独で税制改革案を可決することが可能となります。

なお、共和党の税制改革案が、9月25日の週に公表される見通しで、法人税や所得税の減税規模も明らかになる可能性があります。ただ実施の時期については、前述の予算審議の流れを踏まえると、来年にずれ込む恐れがあります。弊社では減税が10年で約1.3兆ドル、インフラ投資は5年で約1,500億ドルを見込んでいます。仮に2018年の年初に実施された場合、1年で米成長率を0.4%程度、押し上げる効果はあると考えます。