市川レポート

REPORT

2018年の米利上げペースの織り込みはこれから

2017年11月06日

●次期議長にパウエル理事指名で市場は落ち着いた反応、ここからは副議長と理事の人事に注目。
●新たな副議長と理事、そしてクォールズ理事の政策スタンスが焦点、ドットチャートも変化の可能性。
●タカ派の副議長や理事でも政策方針は当面不変、来年3月までのドル高・円安の目途は118円。

次期議長にパウエル理事指名で市場は落ち着いた反応、ここからは副議長と理事の人事に注目

トランプ米大統領は11月2日、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に、ジェローム・パウエル理事を指名しました。パウエル理事は今後、米議会上院の承認を経て、2018年2月に退任するイエレン議長の後任として、正式に議長に就任します。この結果、イエレン議長の任期は1期4年にとどまり、長期体制を敷く場合が多いFRB議長としては、異例の短さとなります。

パウエル理事は、イエレン議長とともに緩やかなペースでの利上げを進めてきたことから、議長就任後も現行の政策運営を踏襲するものとみられます。政策の一貫性が保たれるとの期待は、市場の安心感につながります。実際、パウエル理事の指名を受け、市場はおおむね落ち着いた反応をみせています。そしてここからは、副議長や理事の人事に注目したいと思います。

新たな副議長と理事、そしてクォールズ理事の政策スタンスが焦点、ドットチャートも変化の可能性

現在、2017年に投票権を持つ米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーのうち、副議長1名と理事2名が空席です。このまま2018年にパウエル理事が議長に就任した場合、副議長1名と理事3名が不在のままとなります(図表1)。4名ともFOMCで投票権を持つため、それぞれの政策スタンス次第で、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)は変化し、市場が織り込む利上げペースも変化します。

また、10月に就任したクォールズ理事は、ややタカ派的との見方も一部にありますが、今後の発言から政策スタンスを見極める必要があります。なお、2018年はリッチモンド地区連銀総裁が輪番で投票権を持つことになります。同総裁はタカ派とされるラッカー氏が務めていましたが、2017年4月に辞任しています。現在、マーク・マリニックス第一副総裁が総裁代行を務めており、タカ派の政策スタンスを受け継いでいるとみられます。

タカ派の副議長や理事でも政策方針は当面不変、来年3月までのドル高・円安の目途は118円

以上より、2018年に投票権を持つメンバー定員12名のうち、政策スタンスがある程度明らかなのはわずか7名です。また、この7名の中で、ニューヨーク地区連銀のダドリー総裁が、2018年の春か夏に退任の意向を近く表明するとの報道もみられます。この状態では、さすがに市場は先行きの利上げペースを明確に織り込むことはできません。フェデラルファンド(FF)先物金利市場が織り込む2018年の利上げ回数は、2017年11月3日時点で約1.7回にとどまっており(図表2)、ドル高の進行も今のところ限定的です。

なお、弁護士出身のパウエル理事は法律の専門家であるため、副議長や理事には、マクロ経済や金融政策に精通する学者が選ばれる可能性があります。タカ派色の強い人選となれば、利上げの織り込みが進み、為替市場はドル高で反応する可能性があります。ただ、弊社では2018年以降も米金融政策の正常化はゆっくり進められるとみており、来年3月までのドル円相場を展望した場合、ドル高・円安が進行しても118円程度と予想しています。