ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目【No.481】パウエルFRB議長の議会証言と市場の反応

パウエルFRB議長の議会証言と市場の反応

2018年2月28日

●書面の証言内容に新味なく市場の反応は限定的、ただ質疑応答でのパウエル発言に大きく反応。
●パウエル発言を受け市場は米長期金利上昇、ドル高、米株安で反応、利上げの織り込みも進む。
●物価がよほど急伸しない限り、3月のFOMCでドットチャートが大幅に引き上げられる可能性は低い。

書面の証言内容に新味なく市場の反応は限定的、ただ質疑応答でのパウエル発言に大きく反応

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2月27日、米下院金融委員会で議会証言を行いました。証言内容は事前に書面で公表されましたが、趣旨は1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨とほぼ同じでした。具体的には、(1)景気は底堅く労働市場も堅調、財政は刺激的、(2)物価は今年上昇し、中期的に目標とする2%近辺で安定する、(3)更なる緩やかな利上げが適切である、との指摘がみられました。

その後、議会証言において、年3回以上の利上げの可能性について尋ねられると、パウエル議長は以下のように述べ、市場はこれに大きく反応しました。すなわち、「経済に関する個人的な見通しは12月以降強まった」、「FOMCの各メンバーは、12月以降に起きた全てのことを考慮に入れるだろう」という旨の発言です。ただ、「3月のFOMCを控え、新たな金利予測に予断を持ちたくない」とし、利上げ回数についての明言は避けています。

パウエル発言を受け市場は米長期金利上昇、ドル高、米株安で反応、利上げの織り込みも進む

市場はパウエル議長のこの発言をややタカ派的と解釈し、利上げペースの加速に備える動きを示しました。米10年国債利回りが一時2.9%台まで水準を切り上げると、ドルは対主要通貨で買い優勢となり、対円で107円台後半まで上昇しました(図表1)。一方、米国株式市場では、金利上昇に対する警戒感が強まり、ダウ工業株30種平均は前日比で299ドル24セント下落しました。

なお、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む2018年の利上げ回数は、2月26日時点は2.76回でしたが、2月27日の議会証言後は2.9回に増加しました。FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)は、2018年に3回の利上げが行われることを示唆していますので、市場の織り込みがFOMCメンバーの見方に近づいていることが分かります(図表2)。

物価がよほど急伸しない限り、3月のFOMCでドットチャートが大幅に引き上げられる可能性は低い

パウエル議長は、今年の物価は上昇すると述べていますので、3月9日の2月雇用統計における平均時給、3月13日の2月消費者物価指数が注目されます。賃金と物価の伸びが確認されれば、市場は利上げペースの加速をもう一段織り込み、2月28日のような米長期金利上昇、ドル高、米株安の反応を示すことが予想されます。ただ、米株に連れて日本株も下落した場合、リスクオフの流れからドル高・円安方向の動きは限定されるとみています。

金融政策について、3月20日、21日に開催されるFOMCでは、議会証言以上の手掛かりが得られると思われます。利上げはほぼ織り込み済みですが、今回の会合では、パウエル議長の記者会見が予定されており、ドットチャートを含むFOMCメンバーによる最新経済見通しが公表されます。この先、物価がよほど急伸しない限り、ドットチャートが示唆する年内の利上げ回数(現在3回)や、FOMCメンバーが適切と考える長期の政策金利水準(ターミナルレート、現在2.75%)が大幅に引き上げられる可能性は低いと考えます。