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市川レポート

REPORT

【No.510】米朝首脳会談中止と米自動車関税引き上げ検討について

2018年05月25日

●米朝会談中止は、非核化の手順で意見調整が進まなかったことが主因、今後の実現は見通せず。
●米国は日本やカナダなどから自動車を輸入、実際に関税引き上げなら、各国メーカーへの影響大。
●ただし、いずれもトランプ流の交渉術であり、軍事的緊張の高まりや関税引き上げの可能性は低い。

米朝会談中止は、非核化の手順で意見調整が進まなかったことが主因、今後の実現は見通せず

トランプ米大統領は5月24日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長にあてた書簡の中で、米朝首脳会談を中止する考えを明らかにしました。米国は北朝鮮に対し、「完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄(CVID, Complete Verifiable Irreversible Dismantlement)」を求め、経済制裁の解除はその後という立場です。一方、北朝鮮側の主張は、非核化を段階的に進め、その都度、制裁解除などの見返りを受けるというものです(図表1)。

今回の会談中止は、非核化と経済制裁の解除を巡る手順について、米朝の意見調整が進まなかったことが主因と考えられます。また、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官がペンス米副大統領を名指しで非難したことなども、トランプ米大統領の判断に影響したと推測されます。なお、米国は書簡で将来的な会談の可能性に含みを残しており、北朝鮮も5月25日、いつでも会談の用意はあると述べましたが、現時点で会談の実現は見通せません。

米国は日本やカナダなどから自動車を輸入、実際に関税引き上げなら、各国メーカーへの影響大

また、トランプ米政権は5月23日、安全保障を理由に自動車や自動車部品に追加関税を課す検討に入ると発表しました。米通商拡大法232条は、輸入品が安全保障上の脅威になる場合、大統領に関税引き上げなどの権限を認めています。現在、乗用車には2.5%の関税が課されていますが、報道によれば、25%の関税を追加的に上乗せする案が浮上しているとのことです。

米国の主な自動車の輸入国は日本、カナダ、メキシコ、ドイツ、韓国などです。なお、2017年における米国の対日貿易赤字は688.5億ドルでした。このうち自動車の赤字は392.7億ドル、自動車部品およびアクセサリーの赤字は77.9億ドルで、対日貿易赤字に占める割合は、それぞれ57.0%、11.3%です(図表2)。そのため、実際に関税が引き上げられた場合、日本の自動車・自動車部品メーカーへの影響はかなり大きなものになります。

ただし、いずれもトランプ流の交渉術であり、軍事的緊張の高まりや関税引き上げの可能性は低い

これらトランプ米政権による一連の政策判断は、中間選挙を強く意識したものと考えます。トランプ米大統領は、北朝鮮の非核化について、従来からCVIDを主張しています。譲歩するくらいなら会談を中止して「最大限の圧力」を継続した方が、強い指導者の姿を米国民に印象付けることができます。北朝鮮の動向は引き続き注意を要しますが、今回の会談中止で、直ちに軍事的緊張が高まる可能性は低いと思われます。

また、追加関税は、あくまで米国の「交渉カード」とみています。トランプ米大統領の真の狙いは、追加関税をちらつかせて、カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を有利に進めること、また、日本には2国間の自由貿易協定(FTA)を促すことであり、それによって、有権者の支持を獲得することにあると考えます。そのため、実際に自動車や自動車部品に追加関税が課される公算は現時点で小さいと思われます。

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