市川レポート

REPORT

【No.519】米朝首脳会談に対する市場の評価

2018年06月12日

●米朝の合意文書では北朝鮮が朝鮮半島の「完全な非核化」に向けて努力することが明記された。
●ドル円と日本株は、米朝首脳会談の結果について、取り敢えず冷静に受け止めたものと思われる。
●初回で全問題の解決は困難、今後の協議に向けた道が開けたことで両国に一応の成果はあった。

米朝の合意文書では北朝鮮が朝鮮半島の「完全な非核化」に向けて努力することが明記された

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は6月12日、シンガポールで首脳会談に臨みました。会談は日本時間の午前10時から始まり、昼食を経て、午後15時前に合意文書への署名という流れになりました。その後、合意文書の内容は、報道を通じて明らかになり、北朝鮮が朝鮮半島の「完全な非核化」に向けて努力するなどの項目が含まれていました(図表1)。

合意文書に「完全な非核化」という文言が入ったことは評価すべき点だと思いますが、具体的なプロセスやスケジュールなどの詳細までは明記されませんでした。非核化を進めるための具体策については、今後、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官が主導する形で、協議を行う見通しです。その他、朝鮮半島の戦争終結や拉致問題についての言及は、合意文書にみられませんでした。

ドル円と日本株は、米朝首脳会談の結果について、取り敢えず冷静に受け止めたものと思われる

市場の反応ですが、ドル円は日本時間の朝方、1ドル=110円前後で推移していましたが、米朝首脳会談に対する楽観的な見方が広がり、一時110円49銭付近までドル高・円安が進行しました。しかしながら、会談開始前に利益確定のドル売りが出回ると、その後は110円台前半での膠着が続きました。合意文書の内容が明らかになった後も、目立った反応はみられませんでした(図表2)。

日経平均株価は、ドル高・円安の進行を受け、寄り付き後、一時23,011円57銭の高値をつけました。しかしながら、ドル円が反転すると、日経平均株価も上げ幅を縮小し、結局、前日比74円31銭高の22,878円35銭で取引を終えています。その後、日本時間夕方の日経225先物の取引にも目立った動きはなかったため、日本株は米朝首脳会談の結果を取り敢えず冷静に受け止めたとみています。

初回で全問題の解決は困難、今後の協議に向けた道が開けたことで両国に一応の成果はあった

今後、完全な非核化を進めるにあたり、米国は以下の諸点を北朝鮮に求めると思われます。すなわち、①核放棄のスケジュールの明示、②国際原子力機関(IAEA)による査察・検証の受け入れ、③核弾頭の解体と搬出の承諾、です。米朝の実務家レベルでの協議で、これらの話が進むようであれば、朝鮮半島を巡る地政学リスクは、次第に後退していくものと考えます。

なお、6月12日の欧州株式市場も、比較的落ち着いた動きをみせています。そのため、米朝首脳会談は、少なくとも市場のリスクオフ(回避)を促す結果にはならなかったといえます。そもそも初回の会談で、全ての問題を解決することは困難です。まずは、今後の協議に向けた基礎作りができたという意味で、米国と北朝鮮の双方に、一定の成果があったと考えています。