市川レポート

REPORT

【No.603】Buy the rumor, sell the fact (噂で買って事実で売れ)

2018年12月05日

●米中首脳会談前後の株高と株安は、Buy the rumor, sell the factの格言が当てはまる動き。
●ただ会談後の株安はトランプ米大統領発言や米逆イールドによる先行き不透明感の増大も影響。
●英議会採決は悪い予想のためSell the rumor, buy the factか、掉尾の一振となるかに注目。

米中首脳会談前後の株高と株安は、Buy the rumor, sell the factの格言が当てはまる動き

相場の格言に、「Buy the rumor, sell the fact (噂で買って事実で売れ)」というものがあります。この格言は一般によく知られており、具体的には次のような内容になります。例えば、あるイベントに対し、市場に好結果を期待する向きが多い場合は、先んじて株式を購入しておき、イベントが終了して、その結果が事実として公表された段階では、早々に株式を売却した方が賢明である、というものです。


つまり、株式市場など相場は一般に、事実が公表されるよりも先に噂や思惑で動く傾向があり、事実が公表された段階では、すでに「織り込み済み」となっていることが多い、ということを教示する格言といえます。今回の米中首脳会談前後の株式市場は、まさにこの格言が当てはまるような動きとなりました。実際、会談前は何らかの進展があるとの期待で株価が上昇し、会談後は下落に転じています(図表1)。

ただ会談後の株安はトランプ米大統領発言や米逆イールドによる先行き不透明感の増大も影響

なお、米中首脳会談後の株安は、米国の要人発言も影響していると思われます(図表2)。トランプ米大統領は12月4日、ツイッターで、中国との協議は延長しない限り90日で終了すると述べ、また「私はタリフ・マン(関税が好きな男)だ」とし、関税が米国の経済力を最大限に発揮する最良の方法だとの見解を示しました。これにより、米中協議の先行きに対する懸念が市場に広がったと思われます。


さらに、このところ、米国債の利回り曲線(イールドカーブ)の動きも材料視されています。12月3日の米国債券市場では、5年国債利回りが2年国債利回りを下回る「長短逆転(逆イールド)」が発生しました。長短利回りの逆転は、一般に景気後退の予兆と解釈されるため、市場参加者の間に景気減速への警戒感が強まっています。そのため、これも株安要因の1つと考えられます。

英議会採決は悪い予想のためSell the rumor, buy the factか、掉尾の一振となるかに注目

なお、英国では12月4日、欧州連合(EU)からの離脱に関する協定案などの審議が始まりました。5日間(4日から6日、10日と11日)の審議を経て、11日に採決が行われます。政府の決議案は、離脱協定案と政治宣言案を「下院は承認する」と簡潔に宣言する内容になるとみられます。採決の結果は、集計が終わり次第公表され、早ければ日本時間12日の午前5時半頃に判明しますが、可決の可能性は低いとの見方が市場では優勢です。


否決の場合、EUとの「合意なし」離脱の可能性が浮上し、市場が混乱する恐れがあります。ただ、与野党とも「合意なし」の離脱は回避したいとの立場ですので、最終的には「合意あり」の離脱で着地すると思われます。そこで、少し冷静になって前述の格言を考えます。今回は米中首脳会談と違い、悪い結果が予想されていますので、「Sell the rumor, buy the fact」になります。実際に、悪材料出尽くしから株高に転じることを「あく抜け」といいますが、年末に向けて株価が上昇する「掉尾の一振(とうびのいっしん)」がみられるか、注目したいと思います。