市川レポート

REPORT

【No.608】米中貿易摩擦問題と英国のEU離脱問題~解決の方向性を考える

2018年12月18日

●米中の関税引き上げ合戦は終了し、英国は合意ありのEU離脱へ、景気減速懸念は後退しよう。
●米中首脳とも、自国経済や企業にダメージを与える政策は最終的に断念し、歩み寄るとみられる。
●英国も合意ありの離脱という方向性がみえてくれば、割安に放置された株価水準の修正が進もう。

米中の関税引き上げ合戦は終了し、英国は合意ありのEU離脱へ、景気減速懸念は後退しよう

主要国の株価指数は依然として不安定な動きが続いています。背景には、米中貿易摩擦問題や英国の欧州連合(EU)離脱問題に起因する、世界的な景気減速への強い懸念があると思われます。いずれの問題も、悪化した場合の世界経済への影響が甚大で、かつ、先行きが極めて読みにくいタイプであるため、相場の材料としては株安を促しやすい性質を持っています。

なお、米中貿易摩擦問題については、米国の制裁対象(および中国の報復対象)は今後、「関税の引き上げ」から、ハイテクなど特定分野の「個別企業」に移ると考えています。また、英国の欧州連合(EU)離脱問題については、最終的に「合意あり」の離脱で着地するとみています。つまり、これらの問題は、時間の経過とともに着地の方向性がみえてくるようになり、世界的な景気減速への強い懸念は徐々に後退することが予想されます。

 

米中首脳とも、自国経済や企業にダメージを与える政策は最終的に断念し、歩み寄るとみられる

米中による関税引き上げ合戦の影響は、すでに両国の経済に出始めています。米国では製造業や大豆農家などに実害が広がっており、中国では経済指標に減速感がみられます。米国はこれまで、中国との貿易交渉を有利に進めるために、関税引き上げを脅しの手段として用いてきましたが、今後はその方針を変更する可能性が高く、対中制裁関税第4弾の発動見送りも考えられます。

次に米国が制裁対象とするのは、ハイテクなど特定分野における個別の中国企業と思われます。この場合、世界経済への影響は関税引き上げほど大きくないものの、制裁対象企業のサプライチェーン(供給網)に米国企業が含まれていれば、いずれは米国内の問題として表面化します。そのため、米中両国の首脳は自国の経済や企業にダメージを与え続ける政策を最終的には断念し、ハイテクや知的財産分野における現実的な落としどころを探るために歩み寄るとみています(図表1)。

 

英国も合意ありの離脱という方向性がみえてくれば、割安に放置された株価水準の修正が進もう

一方、英国ではメイ首相が12月17日の議会演説で、EUからの離脱案の採決を2019年1月14日の週に行う意向を表明しました。ただ、国内外の意見調整は難航しており、今後の展開は複数のシナリオが想定されます(図表2)。それでも英国とEUは「合意なし」の離脱を回避したい点では一致しています。その限りにおいては、多少の紆余曲折があっても、最終的に「合意あり」の離脱で着地する公算は大きいと思われます。

以上より、米中貿易摩擦問題は、米中両国が次第に自国経済や企業に配慮する形で交渉を進めることにより解決に向かい、英国のEU離脱問題は、合意ありの形で落ち着くことにより解決に向かうと考えます。足元の軟調な株式市場は、これらの問題について、かなり悪いシナリオを織り込んでいるとみられます。そのため、問題解決の方向性が明らかになるにつれ、割安な株価水準の修正が進むと予想します。