市川レポート

REPORT

19年7月FOMCレビュー~パウエル発言の波紋

2019年08月01日

●利下げは予想通りで、声明にも緩和スタンス示唆の文言が残るも、パウエル発言はややタカ派的に。
●利下げ期待が幾分後退し、米国株は下落、米国債利回りは一時上昇して米ドルも対円で上昇。
●パウエル発言は本来株価には心強い材料、弊社は9月の追加利下げとその後の据え置きを予想。

利下げは予想通りで、声明にも緩和スタンス示唆の文言が残るも、パウエル発言はややタカ派的に

米連邦準備制度理事会(FRB)は、7月30日、31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年2.25%~2.50%から年2.00%~2.25%へ引き下げることを決定しました。FOMC声明では、緩和スタンスを示唆する「見通しへの不確実性」、「適切に行動する」の文言は維持され(図表1)、また、米国債などの保有総額の縮小措置を2カ月前倒しで終了することが発表されました。

パウエル議長はFOMC終了後に記者会見を行い、今回の利下げは、世界景気の減速や貿易を巡る不確実性、物価上昇の鈍化を受けた調整であると述べ、長期的な利下げサイクルの始まりではないとの見解を示しました。しかしながらその後、利下げは1回だけとは言っていないと補足し、やや緩和的な政策に次第に調整することが大切であると説明しました。

利下げ期待が幾分後退し、米国株は下落、米国債利回りは一時上昇して米ドルも対円で上昇

7月30日時点のFF金利先物市場では、0.25%の利下げについて、2019年に2.6回、2020年に1.4回の実施が織り込まれていました。しかしながら、今回のパウエル議長の発言によって利下げ期待が幾分後退し、7月31日時点での利下げの織り込みは、2019年に2.4回、2020年に1.4回となりました。これを受けて、同日の米国の株式市場などにも顕著な動きがみられました。

ダウ工業株30種平均は、利下げ期待の後退から、前日比333ドル75セント安で取引を終えました(図表2)。米10年国債は、パウエル議長の記者会見が始まると、一時2.07%水準まで利回りが上昇(価格は低下)しましたが、利下げは1回だけではないとのコメントなどが材料視され、利回りは低下に転じました。米ドルは、米10年国債利回りに連れた動きとなり、利回りが上昇する場面では、対円で一時109円水準までドル高が進行しました。

パウエル発言は本来株価には心強い材料、弊社は9月の追加利下げとその後の据え置きを予想

FOMCが終了した翌8月1日、日経平均株価は寄り付き後、一時21,300円を割り込みましたが、ドル円が109円台前半を回復したこともあり、前場は前日比小幅高で取引を終えています。株式市場は、パウエル議長の「利下げサイクルの始まりではない」との発言に失望したと見受けられますが、このコメントは、裏を返せば、「米国経済はそれほど悪い状況にはない」と解釈できるため、株式市場にとっては本来、心強い材料です。

なお、次回のFOMC(9月17日、18日開催)までに、世界景気の減速や貿易を巡る不確実性、物価上昇の鈍化、これらの問題がすべて解消される可能性は低いと思われます。そのため、弊社は9月に0.25%の追加利下げが行われるとみており、その後はしばらく据え置きを予想しています。年末にかけて、米国などの経済指標が好転し、貿易を巡る米中の緊張が緩和に向かえば、利下げ期待が一段と後退しても、株式市場に上昇余地は広がると考えます。