市川レポート

REPORT

英国のEU離脱問題~現時点での市場の織り込み

2019年10月23日

●英議会下院は10月19日、新たな離脱協定案の採決は、離脱関連法案の成立まで保留と決定。
●ただ離脱関連法案の早期審議は否決、首相はEUが離脱期限の延期承認ならば総選挙の意向。
●市場は協定案の採決遅延や合意なき離脱回避は織り込み済み、混乱継続でも影響は限定的。

英議会下院は10月19日、新たな離脱協定案の採決は、離脱関連法案の成立まで保留と決定

英国の欧州連合(EU)離脱問題について、最近の動きを整理します(図表1)。英国とEUは10月17日、新たな離脱協定案で合意しました。従来の協定案には、アイルランド国境問題を解決する具体策がみつかるまで、英国はEUの関税同盟にとどまる「安全策」が盛り込まれていました。新たな協定案ではこの安全策が削除され、2020年末の移行期間終了後、英国は北アイルランドも含めて関税同盟から離脱することになります。

英議会下院では、10月19日に新たな協定案が採決される予定でしたが、同日、超党派議員団の「離脱関連法案が成立するまで採決を保留する」という修正動議が先に可決されました。これにより、ジョンソン首相はEUに対し、離脱期限を2020年1月末まで3カ月延ばす申請を強いられました。また、ジョンソン首相は10月21日、新たな協定案の採決を再び議会に求めましたが、下院のバーコウ議長はこれを却下しています。

ただ離脱関連法案の早期審議は否決、首相はEUが離脱期限の延期承認ならば総選挙の意向

離脱関連法案の大枠については、10月22日の英議会下院で可決されました。一方、同法案を早期に成立させるため、ジョンソン首相が提出した「議事進行動議」は否決されました。これにより、ジョンソン首相が掲げる10月末のEU離脱は、難しい状況となりました。英議会下院の決定を受け、EUのトゥスク大統領はEU加盟国に対し、英国からの離脱期限の延期申請を受け入れるよう、呼びかける意向を明らかにしました。

こうしたなか、英首相官邸当局者は10月22日の遅くに、EUが離脱期限の延期申請を受け入れた場合、ジョンソン首相は解散総選挙の実施を目指すことになるだろうと述べました。しかしながら、英国では議会任期固定法の規定で、首相の議会解散権が制限されており、解散には内閣不信任案の可決、または下院議員の3分の2以上の同意が必要と定められています。

市場は協定案の採決遅延や合意なき離脱回避は織り込み済み、混乱継続でも影響は限定的

このように、英国ではEU離脱問題を巡る混乱が続いていますが、EUは英国からの離脱期限の延期申請を受け入れる可能性が高く、英国がEUとの合意のないまま、10月末にEUから離脱する事態は避けられるとみています。市場も、英国で離脱協定案の採決に時間がかかることや、10月末の合意なき離脱が回避されることを、ある程度、織り込んでいると思われます。

そのため、英国で離脱関連法案の成立が遅れ、新たな離脱協定案の採決に相当時間がかかっても、また、仮に解散総選挙となっても、合意なき離脱が回避される見通しである限り、改めて市場が混乱する公算は小さく、株式市場への影響も限定的と考えます。なお、ポンド相場は、EU離脱問題に敏感に反応する傾向がありますが、1ポンド=1.20ドル近辺で、いったん底をつけたのではないかとみています(図表2)。