ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目米中第1段階の合意~両国の説明のずれをどう解釈するか

米中第1段階の合意~両国の説明のずれをどう解釈するか

2019年12月16日

●米国側は中国が2年で対米輸入を2,000億ドル拡大すると述べ、関税引き下げは小幅にとどめる。
●中国側は農産品の輸入規模の数値言及は避け、米国が段階的な関税撤廃を約束したと説明。
●両国の事情を勘案すれば多少の表現相違はやむなし、日本株は慎重に上値を試す展開を予想。

米国側は中国が2年で対米輸入を2,000億ドル拡大すると述べ、関税引き下げは小幅にとどめる

米国と中国は12月13日、貿易交渉で第1段階の合意に達しました。しかしながら、合意内容について、両国の説明に食い違いもあります(図表1、図表2)。米通商代表部(USTR)が同日に公表した資料によると、第1段階の合意には、知的財産、技術移転、農産品、金融サービス、為替、貿易拡大、紛争解決制度が含まれています。また、貿易拡大に関し、中国は今後2年で対米輸入を2,000億ドル拡大するとの記述がみられます。

対中制裁関税については、第1弾から第3弾までの2,500億ドル分は税率25%を維持、第4弾の1,100億ドル分は税率15%を7.5%に引き下げ、第4弾の1,600億ドル分は発動見送りとなりました。ライトハイザーUSTR代表は、2020年1月第1週に合意文書の署名を目指すと述べています。なお、第2段階の交渉開始時期は、トランプ米大統領が即開始とする一方、ライトハイザーUSTR代表は未定としており、米国内でも見解が異なります。

中国側は農産品の輸入規模の数値言及は避け、米国が段階的な関税撤廃を約束したと説明

次に中国側の説明を確認します。中国は12月13日の時点で、米国が第1段階の合意に含まれるとした技術移転について言及していません。また、米農産品の輸入規模について、少なくとも年400億ドル、最大で年500億ドルという数値が米国から示されたのに対し、具体的な規模は後日発表するとのコメントにとどめています。さらに、米国が対中制裁関税の段階的な撤廃を約束したと説明しています。

合意文書への署名については、両国が法律の審査と翻訳を終えた後、署名の準備について話し合うとし、具体的な時期を示しませんでした。第2段階の交渉開始時期についても、第1段階の合意が履行されてからの話とし、明確な言及はありませんでした。中国は、第1段階に関する合意文書への署名とその履行が、現時点での最優先事項と考えている模様です。

両国の事情を勘案すれば多少の表現相違はやむなし、日本株は慎重に上値を試す展開を予想

確かに両国の説明には食い違いがみられますが、米国には来年の大統領選挙を控え、有権者に協議の成果を強くアピールしたい事情があり、中国には、米国と対等の立場で交渉している「強い習政権」をアピールしたい事情があります。そのため、合意内容の表現に多少の違いが生じてもやむを得ないと思われます。少なくとも、米中両国は第1段階に関する合意文書の署名を重視しており、第2段階の交渉も視野に入れていると推測されます。

貿易拡大の規模は、合意文書に署名される時点では明らかになります。また、合意文書の署名、履行の確認、第2段階の交渉開始、と進んで行けば、米国による対中制裁関税の段階的な撤廃も見込まれます。今後は、これらのスケジュールを見極める必要はありますが、米中の緊張が緩和に向かい始めたことは評価すべき点です。このような状況下で、日本株はこの先、慎重ながらも徐々に上値を試す展開が予想されます。