市川レポート

REPORT

日本企業の資金繰りを更に支援する方法

2020年04月15日

●外出自粛や休業要請の環境下では十分な資金繰り支援がない限り多くの企業が倒産する恐れ。
●政府と日銀は企業の資金繰り支援策を打ち出すも、融資実行に時間がかかり企業に不安の声も。
●日本も米MSLP型制度の検討は可能、資金繰りに窮する企業に対し、より効果的な支援が必要。

外出自粛や休業要請の環境下では十分な資金繰り支援がない限り多くの企業が倒産する恐れ

今回のレポートでは、政府と日銀が日本企業の資金繰りを更に強く支援する方法はないか、具体的に考えてみます。まず、企業の資金繰りについて、一般的な例を解説します。ある企業が、材料を100万円で仕入れ、製品を製造し、120万円で販売したとします。材料費の支払いは1週間後(買掛金100万円)、販売代金の受け取りは1カ月後(売掛金120万円)で、その間に、人件費や家賃などの固定費の支払いも発生すると仮定します。

この企業は、売掛金を回収する前に、買掛金と固定費を支払わなければならず、一時的に資金不足が発生します。これを補うため、企業は通常、金融機関から「運転資金」を借り入れます。ただ、現在のように外出自粛や休業要請の環境下では、企業の売り上げは大きく減少し、材料費も減る一方、固定費の支払いは残ります。そのため、運転資金の借り入れなど、十分な資金繰り支援がない限り、多くの企業が倒産する恐れがあります。

政府と日銀は企業の資金繰り支援策を打ち出すも、融資実行に時間がかかり企業に不安の声も

こうしたなか、日銀は3月16日の日銀金融政策決定会合で、政府は4月7日の緊急経済対策で、それぞれ企業の資金繰り支援策を発表しました(図表1)。中小企業の資金繰り支援は当初、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫など、主に政府系金融機関が担当していましたが、企業が殺到したため、支援の窓口は民間金融機関にも広がっています。それでも、融資実行までに1カ月以上かかるなど、中小企業からは不安の声も聞かれます。

米国に目を向けると、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的に企業向けの支援を行っています。詳細は、4月14日付レポート「FRBの新たな流動性支援制度~主な政策のポイント解説」で説明していますが、例えば、「メインストリート融資プログラム、Main Street Lending Program(MSLP)」では、FRBは特別目的事業体(SPV)を通じ、民間金融機関から中小企業向け融資額の95%を買い取っています(図表2)。

日本も米MSLP型制度の検討は可能、資金繰りに窮する企業に対し、より効果的な支援が必要

日本でも、日銀がSPVを設立し、財務省がそれに資金拠出を行い、SPVが国内の民間金融機関から中小企業向け融資を一定額買い取る、MSLPと同様の制度は検討可能と思われます。民間金融機関は、SPVの融資買い取りにより残高を圧縮できるため、新たな融資を実行しやすくなります。その結果、中小企業が迅速に融資を受けられる余地は広がると考えられます。

なお、米国のMSLPの規模は6,000億ドル(1ドル=107円換算で、約64.2兆円)で、日本の緊急経済対策における「雇用の維持と事業の継続」(中小企業支援を含む)の財政支出は22兆円程度です。国際通貨基金(IMF)は、資金の貸し手と借り手の経済的つながりを維持するための大規模かつ的を絞った財政対策が必要と主張しており、資金繰りに窮する国内企業が増加するなか、より効果的な支援の実施が必要と思われます。