市川レポート

REPORT

日本企業向け資金繰り支援策〜問題点の整理と今後の課題

2020年05月25日

●中小企業などは政府系だけでなく民間金融機関からも実質無利子・無担保の融資を受けられる。
●持続化給付金は10万円未満の額も給付、雇用調整助成金は新制度で補完など、改善が進む。
●全企業規模で、資本注入による支援策も検討、ここからは政策実行のスピード感が極めて重要に。

中小企業などは政府系だけでなく民間金融機関からも実質無利子・無担保の融資を受けられる

現時点で、日本政府による企業向けの資金繰り支援策は、ほぼ出そろったように思われます。主な政策として、①政府系金融機関による実質無利子・無担保融資、②民間金融機関による実質無利子・無担保融資、③持続化給付金、④雇用調整助成金、⑤全企業規模に向けた資本支援、が挙げられます(図表1)。そこで、今回のレポートでは、それぞれの政策について問題点を整理し、今後の課題を考えます。

①は、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫による、中小企業や個人事業主向けの融資です。「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用により、当初3年間は実質的に無利子となります。ただ、企業が支援を求めて殺到したため、窓口を民間金融機関にも広げるために新設されたのが②の制度です。企業は日頃から取引のある銀行や信用金庫、信用組合に、①と同じ仕組みの融資を申し込むことができます。

持続化給付金は10万円未満の額も給付、雇用調整助成金は新制度で補完など、改善が進む

③の持続化給付金は、感染症の拡大により、営業自粛などで大きな影響を受ける事業者に対し、事業の継続・再起を目的に給付するものです。給付額の上限は、中小企業の場合が200万円、個人事業主の場合は100万円です。4月30日に成立した2020年度の補正予算では、約2兆3,000億円が計上されました。また、給付額は当初、10万円未満は切り捨てでしたが、5月8日に10万円未満の金額も給付するとの方針転換が発表されています。

④の雇用調整助成金は、景気悪化などで、企業が雇用調整(休業、教育訓練、出向)した場合、企業が従業員に支払う休業手当の一部を、国が助成する制度です。ただ、雇用調整助成金は申請にあたり、法定書類の準備などが必要で、申請してから支給までの手続きに数カ月を要することなどから、利用が広がっていませんでした。そのため、政府は5月13日、雇用保険の特例制度を設け、休業者本人に直接給付する方針を固めました。

全企業規模で、資本注入による支援策も検討、ここからは政策実行のスピード感が極めて重要に

なお、日銀も、銀行を通じた企業の資金繰り支援に乗り出しています。3月に感染症拡大を受けた金融支援特別オペを新設し、4月には対象金融機関に信用組合などを含め、対象担保に企業債務だけでなく家計債務を加えるなど、制度を拡充しました。また、実質無利子・無担保融資などを実行した金融機関に対し、期間1年以内の資金をゼロ金利で融通する、30兆円規模の新たな資金供給手段の導入を、先週末に発表しました。

このように、①から④は、融資や一時金給付にかかわる制度ですが、⑤の資本支援は、資本注入による企業救済制度です。大企業、中堅企業、中小企業、それぞれについて制度設計が行われ、全企業規模の救済措置となる見通しです。企業向けの資金繰り支援は全体として、ここから先、1日でも早く企業の手元に資金が届くよう、政策実行の「スピード感」が極めて重要となります。