市川レポート

REPORT

ポスト安倍政権と日銀の金融政策

2020年09月03日

●菅官房長官は、大規模金融緩和継続の意向、岸田政調会長は、マイナス金利深堀りには反対。
●石破元幹事長は、アベノミクス継続も変更の可能性を示唆、ただ3氏とも当面は緩和継続の考え。
●しかしながら、これまでの金融緩和で物価目標は未達、改めて政策の枠組みの検証は必要だろう。

菅官房長官は、大規模金融緩和継続の意向、岸田政調会長は、マイナス金利深堀りには反対

今回のレポートでは、ポスト安倍政権と日銀の金融政策について考えます。安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選への立候補者は9月2日、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3氏に確定しました。総裁選は8日に告示され、14日に両院議員総会で投開票が行われます。国会議員票394票と47都道府県連の代表が各3票を投じる地方票141票の合計535票を争うことになります。

まず、金融政策に関する3候補の見解を確認します(図表1)。菅氏は、2日の記者会見で、日銀との関係も安倍首相と同じように進めていきたいと述べ、大規模な金融緩和を継続する意向を示しました。一方、岸田氏は、これ以上の金融緩和はどうだろうかという議論があり、地方の金融機関など様々なところで弊害が出ていると指摘し、更なるマイナス金利の深堀りには反対の姿勢です。

石破元幹事長は、アベノミクス継続も変更の可能性を示唆、ただ3氏とも当面は緩和継続の考え

石破氏は2018年4月、アベノミクスについて、大胆な金融緩和も機動的財政出動も、未来永劫続くものではないと述べていますが、政策そのものは否定していません。9月1日の記者会見では、アベノミクスには評価すべき点がたくさんあるとしつつも、個人の所得が伸び悩んでいる点を指摘しました。それを踏まえ、アベノミクスは継続し、消費性向の高い人の所得を上げていくことを考え、変えるべきものは変えるとの見解を示しました。

なお、岸田氏は、金融政策の弊害に触れながらも、政策は市場に織り込み済みで、これを変えると別の弊害になると述べています。また、石破氏も、金融政策を急に変えることはないと明言しています。したがって、3氏のうち誰が新総裁になっても、現行の大規模な金融緩和政策は継続される可能性が高いと考えられます。それでは次に、アベノミクス下における日銀の金融政策の経緯を振り返ります。

しかしながら、これまでの金融緩和で物価目標は未達、改めて政策の枠組みの検証は必要だろう

日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」の導入を決定し、いわゆる異次元緩和を開始しました。その後、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決め、マイナス金利という未踏の領域に踏み込み、同年9月には「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、イールドカーブ・コントロールに挑みました。ただ、2%の物価目標は未達のままです(図表2)。

なお、現代の標準的な動学的マクロ経済理論においては、金利が下限に張り付いたもとで純粋にマネタリーベースの量を増大させる政策は効果を持たないと考えられています。ポスト安倍政権で、金融政策の基本的な方向性が変わらないことは、市場にとって短期的には安心材料ですが、改めてこれまでの政策効果を振り返り、日銀の若田部副総裁が9月2日の講演で示したように、金融政策の枠組みを検証する必要性はあると考えます。