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運用者の視点:中国のコーヒー『スタートアップ』企業

2019年2月14日

<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回は、中国の『スタートアップ』企業として、米スターバックスの牙城にチャレンジする、コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」を取り上げます。

【ポイント1】中国にコーヒー文化を根付かせた米スターバックス

■中国の飲み物の定番といえば「お茶」というのがかつての常識でしたが、近年は中国でもコーヒーを飲む習慣が拡がっています。中国に本格コーヒーを楽しむ文化を根付かせたのは米スターバックス(以下スタバ)でした。今から20年前の1999年に中国に進出し、挽きたての本格コーヒーをお洒落で落ち着いた空間とセットで提供するスタイルで、高めの価格設定にもかかわらず、若年層を中心に顧客を拡大してきました。今や、中国のコーヒー業界におけるスタバの存在感とブランド力は圧倒的です。

【ポイント2】スタバに挑戦する『スタートアップ』企業、「ラッキン」

■しかし、昨年の初め、スタバの牙城にチャレンジする中国発のコーヒーチェーンが突然現れました。ラッキンコーヒー(以下ラッキン)という、『スタートアップ』企業です。豆やミルクにこだわり、挽きたての本格コーヒーを提供するという点はスタバと共通です。異なるのは、店舗運営に対する考え方です。スタバが居心地の良い空間の提供を重視するのに対し、ラッキンは持ち帰りやデリバリーを前提としたコンパクトな店舗運営を基本コンセプトとし、狭いスペースでも出店可能なモデルとしています。もう1つの違いは価格戦略です。もともと定価はスタバよりも20~30%程度安い商品が多いのですが、2杯買ったら1杯無料、5杯買ったら5杯無料といった割引クーポンの提供で、実質的にスタバの半額程度でコーヒーを販売しています。

【今後の展開】中国の『スタートアップ』企業としてラッキンに注目

■ラッキンのこうした戦略が、味と値段と利便性のすべてを求める消費者のハートをつかみ、店舗数は2018年1月の1号店出店からわずか1年で2,000店超に達しました。ラッキンは2019年も積極的な出店を続ける方針で、年内に新たに2,500店をオープンして4,500店体制とし、スタバを抜いて中国最大のコーヒーチェーンになると宣言しました。また、株式公開による資金調達の準備に入ったとの報道もありました。一方で、急激な拡大戦略に対し、短期間で一気に苦境に陥ったシェア自転車業界の二の舞いになるのでは、といった懸念の声も出てきました。今でこそ時流に乗ったデリバリーサービスや割安な価格設定で顧客を増やしていますが、デリバリー自体の差別化は難しく、割引キャンペーンも永遠に続けるわけにはいきません。中国の『スタートアップ』企業の成長をリアルタイムでウォッチ出来る好例として、注目していきたいと思います。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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