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2015年を振り返るキーワード  「新興国通貨」の下落(グローバル)【キーワード】

2015年12月24日

<今日のキーワード>
「新興国通貨」は2015年の夏以降、対米ドルで下げ幅を拡大しました。その背景にあったのが、米国の利上げ観測と中国の景気減速懸念です。つまり、米国が利上げをすれば新興国から米国へ資金が流出する、中国の景気減速は貿易取引を通じて周辺国経済に悪影響を及ぼす、このような見方が市場で強まり、「新興国通貨」の下落につながりました。

【ポイント1】米国の利上げ観測

新興国から資金が流出するという思惑
■米国の利上げが行われた場合、過剰流動性相場が縮小に向かい、リスクオフの動きが強まるとの予想が市場で優勢となりました。そのため、より高い金利を求めて新興国市場に流入した投資資金はゼロ金利から脱却する米国に回帰するとの思惑が浮上し、アジア、中南米、欧州、アフリカなどの新興国において、広く通貨が対米ドルで下落する展開となりました。

【ポイント2】中国の景気減速懸念

周辺国への悪影響という思惑
■中国では上海株が6月半ば以降下げ足を速め、8月に人民元の切り下げが行われました。アジア諸国は総じて貿易を通じた中国との結び付きが強く、金融市場の混乱で中国景気が一段と減速すれば、周辺国経済に悪影響が及ぶとの思惑から、主にアジア通貨が下落しました。

■また中国や新興国経済が鈍化した場合、国際商品需要が減少するとの見方が強まり、商品相場の低迷につながりました。その結果、資源国通貨も対米ドルで下げ幅を拡大しました。

【今後の展開】連鎖的な通貨危機の発生リスクは過去に比べ小さくなっている

■新興国では近年、変動相場制を採用する国が増えています。そのため通貨が下落しても、為替レート維持のための自国通貨買い・外貨売りの為替介入を行う義務はありません。従って過去のように外貨準備が減少し、対外債務の返済懸念が強まり、通貨危機に発展してしまうリスクは小さくなっています。

■ただ国によっては政局不安や財政問題を抱え、また高いインフレ率に苦しむケースもみられます。そのため「新興国通貨」は各国個別の悪材料を主因に、今しばらく不安定な動きが続くことも考えられます。ただ少なくとも連鎖的な通貨危機の発生を懸念する状況にはないようです。

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