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『原油価格下落』はプラス?マイナス?

2020年5月1日

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足元、原油価格が大幅に下落しています。原油(石油)由来の製品は身の回りに多く、生活に密接に関わっています。『原油価格下落』はガソリン価格が下がったりすることから生活にはプラスに思われますが、原油価格が急落するたびに金融市場では動揺が走り、危機が叫ばれています。『原油価格下落』は果たしてプラスなのでしょうか?マイナスなのでしょうか?

【ポイント1】新型コロナウイルスの影響から、原油価格は大幅に下落

■3月以降、原油価格が大幅に下落しています。代表的な原油指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は、昨年末と比較して▲8割近い下落になっています。新型コロナウイルスの感染拡大により世界景気が鈍化し、原油需要が大幅に減少したことが要因です。4月12日、主要な産油国は過去にない規模の協調減産で合意しましたが、需要の減少を賄いきれず在庫が急増しています。

【ポイント2】『原油価格下落』には、プラス面とマイナス面が

■原油価格が下落すると、ガソリンなど原油(石油)由来の製品は値下がりするため、家計の支出面に対してはプラスになります。また、企業にとっても原材料価格が下がったり、生産現場における燃料コストや輸送コストが値下がりするため、費用面からは業績にプラスとなります。

■一方、原油(石油)価格は幅広い製品・商品価格に影響するため、低価格が継続するとデフレによる低温経済に陥り、企業の売上が減少し、ひいては個人所得が減ってしまう可能性があります。また、オイルメジャーのような原油(石油)に関係する多くの企業が設備投資を控えることも想定されるなど、実体経済に対するマイナス影響も考えられます。

■更に、米国シェールオイル企業は大量の低格付け債を発行しており、『原油価格下落』によって、これらの企業の経営破綻や債務不履行が相次げば信用不安問題に飛び火する恐れがあります。また、足元の原油価格は、産油国の財政を支える価格を割り込んでいることから、産油国が歳出費用を賄うために株式などの保有資産を売却する懸念もあります。金融市場に対するマイナス影響も大きそうです。

【今後の展開】短期的には金融市場への影響が懸念

■以上のように、『原油価格下落』はプラス面とマイナス面があり、一概にどちらということは難しいですが、少なくとも短期的には金融市場への影響が強く懸念されることになりそうです。『原油価格下落』が長引けば、産油国が多いアラブ諸国の政情不安も台頭してくることから、安定した価格への復帰が望まれます。

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