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対米ドルで過去最安値をつけた『ブラジルレアル』

2019年12月5日

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世界的な景気減速を背景に資源輸出の低迷などから南米通貨は総じて弱い動きとなっています。『ブラジルレアル』も大きく下落し、11月27日には対米ドルで過去最安値をつけました。ブラジルではボルソナロ政権の下、経済立て直しのために様々な改革が進められており、10月は年金改革法成立に向けた動きが市場で評価され、『ブラジルレアル』は堅調に推移していました。ここでは下落の要因と今後の見通しについてまとめました。

【ポイント1】対米ドルで過去最安値、4.26レアル

年金改革など政府の改革姿勢は高評価も悪材料が重なる

■10月の『ブラジルレアル』は、懸案だった年金改革法の成立に向けた動きを織り込み堅調に推移しました。歳出削減などを目指す行政・財政改革案も発表され、市場はボルソナロ政権の改革姿勢を高く評価しました。しかしその後『ブラジルレアル』は反落し、11月下旬には対米ドルで過去最安値をつける展開となりました。

■堅調を維持できなかった要因は、期待外れに終わった油田入札、南米諸国で広がるデモやルラ元大統領の釈放、利下げ観測などの悪材料が重なったためと見られます。足元ではやや戻ったものの、年初からの下落率は対米ドル、対円でともに8%程度となっています。

【ポイント2】油田入札の不調、南米デモなど大きく3つの要因

■11月初旬の過去最大規模の油田入札では、海外からの入札参加が見込まれていましたが、欧米エネルギー企業の多くが契約金の高さなどを敬遠して参加せず、期待外れの結果となりました。

■南米地域の政治的リスクも嫌気されました。アルゼンチンの政治不安、チリやコロンビアの反政府デモに加え、国内では汚職で逮捕されたルラ元大統領の釈放を受け、野党勢力が盛り返すとの見方が広がりました。

■米国の政策金利据え置き姿勢が明確となる中で、ブラジル中銀の追加緩和観測が根強いことも挙げられます。

【今後の展開】来年前半にかけて景気指標の動向が『ブラジルレアル』反転のカギ

■弊社では、改革の進展や景気回復を見込み『ブラジルレアル』の緩やかな回復を予想してきましたが、上記の要因などからある程度慎重な見通しとする必要があると考えます。

■但し、『ブラジルレアル』が大きく下落するリスクは限定的と見ています。現在の政策は国内経済を改善するものです。通貨の下落にも拘わらずインフレ率も安定しています。『ブラジルレアル』が下げ止まり安定するには、金融緩和による実質金利の低下によって成長率が持ち直し、中銀の利下げに一服感がでることが必要です。ブラジル経済は2019年に1.0%成長の後、2020年は2.4%程度に回復すると予想していますが、これが実現するか、特に来年前半にかけて景気指標の動向が『ブラジルレアル』反転のカギになりそうです。

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