ホームマーケット週次・月次市場情報先月のマーケットの振り返り(2016年11月)【マンスリー】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

先月のマーケットの振り返り(2016年11月)【マンスリー】

2016年12月2日

1.概観

トピックス (1)米大統領選挙後、世界の金融市場では顕著な変化がみられました。
(2)トランプ次期大統領の政策「期待」から、ドル円は3週間足らずで約10円の円安が進行しました。
株式 米国の株式市場は、トランプ次期大統領の政策期待が強まり、NYダウ、S&P500、ナスダックの主要3指数が揃って史上最高値を更新しました。           
欧州の株式市場は、フランスが若干上昇し、英国FTSEやドイツDAXが軟調となるなど、全体としては月間でほほ横這いとなりました。
日本の株式市場は、欧米の長期金利の大幅上昇に伴い、為替市場で円安が進んだことから、大きく反発しました。日経平均株価は、年初来の1万8,000円台を回復しました。
債券 トランプ次期米大統領選出後、米債市場では景気回復による物価上昇期待と将来の財政悪化懸念を背景に金利が上昇しました。これまで総じて低水準で推移していた世界の金利も上昇し、水準訂正が進みました。
為替 欧米の長期金利が大きく上昇し、日本との金利差が拡大したことを背景に、円相場は対ドル、対ユーロで下落しました。
商品 原油価格は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の減産合意を巡る思惑から一時は45ドル/バレルを割り込む局面もありましたが、月末に向け次第に落ち着きを取り戻しました。30日に、OPECは8年ぶりの減産で合意をとりまとめ、ロシアも減産を表明しました。


(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)米大統領選挙後、世界の金融市場では顕著な変化がみられました。

<注目点>

米大統領選挙では、大規模減税とインフラ投資を政策に掲げるトランプ候補が勝利しました。その結果、米国の景気拡大、物価上昇、利上げペース加速という見方が強まり、米国市場は素直に株高、債券安(利回りは上昇)、ドル高で反応しました。日本株は米国株の上昇や円安の進行で買い安心感が広がり、堅調に推移しました。また米インフラ投資への期待は総じてコモディティ市場の追い風となりました。一方、米長期金利の上昇でハイイールド債券が下落(利回りは上昇)し、多くの新興国ではドル高で相対的に通貨安が進行し、株式や債券が下落しました。

<ポイント>

現時点でトランプ次期大統領の政策はまだ何も決まっていません。そのため大統領選挙後の世界の金融市場は、過度な「期待先行」、「思惑先行」で動いていることになります。したがってその持続性にはやや疑問が持たれ、新興国市場のトリプル安もいったん落ち着く可能性があります。この先は、新興国の資産のみならず日米の株価や長期金利、そしてドル円についても、次第に明らかになる具体策をにらみつつ、適正水準を模索する展開が予想されます。

(2)トランプ次期大統領の政策「期待」から、ドル円は3週間足らずで約10円の円安が進行しました。

<注目点>

ドル円は11月9日に1ドル=101円20銭水準をつけた後に急反転し、11月25日には113円90銭水準をつけました。トランプ次期大統領の大規模減税やインフラ投資などが材料視され、3週間足らずで約10円のドル高・円安が進行したことになります。過去、アベノミクスへの「期待」で円安が進行しましたが、当時は約2カ月で9円58銭程度でした。両者のケースを単純に比較することはできませんが、今回はトランプ次期大統領の政策に対する「期待」が、短期間で急激にドル円相場に織り込まれた格好になっています。

<ポイント>

トランプ次期大統領は、2017年1月20日の就任式を経て、「就任100日行動計画」に基づき具体的な政策を打ち出す見通しです。足元で相当な「期待」を織り込んでいるドル円相場を一段と押し上げるには、政策が「期待」以上の内容となることが求められます。

3.景気動向

<現状>

米国は、消費が堅調を維持する中、在庫調整圧力が一巡し、緩やかな景気拡大が続いています。
欧州は、緩やかな景気拡大が続いています。現時点で、英国がEU離脱を選択した影響は限定的です。
日本は、雇用環境が引き続き堅調です。設備投資や個人消費が力強さを欠いており、景気は全体として足踏み状態です。
中国は、生産者物価のデフレ脱却と民間投資の持ち直しで、景気は安定に向かっています。
豪州は、雇用環境が引き続き概ね良好です。家計の支出も底堅く推移しており、景気は緩やかな拡大が続いています。

<見通し>

米国は、雇用と消費の堅調が続きそうです。緩やかな景気拡大となる見込みであることから、12月の追加利上げが想定されます。
欧州は、米国、アジア向けを中心に輸出の増加が続き、雇用や所得の拡大を背景に個人消費の増加傾向が見込まれます。
日本は、海外景気の拡大が続く中、第二次補正予算の効果が下支えとなり、緩やかな回復が17年度半ばごろまで続く見通しです。
中国は、財政政策を中心とした景気下支えにより、17年までの景気は安定した成長となる見込みです。
豪州は、消費や住宅などの非資源セクターが景気を下支えし、17年前半からは設備投資の回復も加わり、景気はやや加速する見通しです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500指数の16年7-9月期の1株当たり予想利益(EPS)は前年同期比+4.2%の増益(トムソンロイター12月1日発表ベース)となり、4-6月期を底に増益へと転換しました。続く10-12月期は同+6.2%、17年1-3月期は同+14.1%、17年4-6月期は同+11.9%、17年7-9月期同+9.8%と増益が見込まれています。一方、日本の東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは16年6月に底をつけ、7月以降は改善傾向にあります。11月は102.35円と2カ月連続の上昇、4カ月連続の100円台維持となりました。

<見通し>

米国株式市場は、トランプ次期大統領の成長を呼び込む「強いアメリカの復活」に期待を寄せ上昇基調が続く見通しです。「強いアメリカの復活」期待がセンチメントを大幅に改善させ、これに企業業績の回復期待が加わることで堅調な展開が期待できそうです。一方、日本の株式市場では円高修正の動きが企業業績の改善期待に結びつきやすく、株価にとってプラスです。2016年度の経常利益は通期で前年度比▲1.8%(東証1部(除く金融)、3月期決算、東洋経済予想ベース、12月1日時点)と減益の見通しですが、円高修正を踏まえれば増益への転換の可能性も出てきました。経済環境や業績の改善期待が強まることで堅調な展開が期待できそうです。

5.金融政策

<現状>

11月1-2日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利(FFレート)の誘導レンジを0.25%~0.50%で据え置くことを決定しました。
欧州中央銀行(ECB)は10月20日の理事会で、政策金利、預金ファシリティ金利をそれぞれ0.00%、▲0.40%に据え置くことを決定しました。
日本銀行は、10月31-11月1日の金融政策決定会合で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の現状維持を決定しました。これは、①長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、②インフレが2%を安定的に超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」が2本柱です。

<見通し>

米国では、イエレンFRB議長ら金融当局者が利上げに前向きな発言を繰り返していることから、12月のFOMCで利上げが実施される可能性が高いと考えられます。
ユーロ圏では、12月8日の欧州中央銀行(ECB)理事会で追加緩和を行う見通しです。追加緩和策としては、①17年3月までの実施が公約されている量的金融緩和の終了時期の延長(+6カ月)、②ECBの国債買取条件の緩和(より期間の長い国債、中銀預金金利以下の利回りの国債購入)等が考えられます。
日本では、日銀は9月の金融政策決定会合で政策の枠組みを「量」から「金利」へ転換し、緩和期間を長期化するという「持久戦」へと舵を切りました。12月の金融政策決定会合でも現状の金融政策を維持すると見られます。

6.債券

<現状>

日米欧の長期金利は上昇しました。米大統領選挙でトランプ氏が勝利し、上下院とも共和党が制した11月9日に10年国債利回りが大きく上昇し、今年1月下旬以来となる2%台に乗せました。トランプ氏の考える財政支出の拡大や減税が進むとの思惑が高まったことが背景です。金利はその後も上昇し、月末には2.367%となりました。欧州では、英国の10年国債の利回りが月間で0.18%上昇したほか、ドイツ10年国債の利回りも0.11%上昇しました。日本の10年国債利回りは10月末▲0.05%でしたが11月末は0.0198%とプラスに転じました。社債は、投資家の利回りへの需要が継続していることから、社債スプレッドはやや縮小しました。

<見通し>

米国では、12月にも利上げが行われる可能性がありますが、日欧の低金利環境下で投資家の米国債に対する需要が強いことがサポート要因となることから、米金利の上昇は限定的となり、その後利回りはレンジ圏で推移すると見込まれます。欧州では、ECBが金融緩和策を強化する見通しですが、テーパリング(金融緩和策の縮小)の観測もくすぶるため、長期金利は緩やかにレンジを切り上げる展開が見込まれます。日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、日本国債の利回りは低位での推移が見込まれます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。

7.為替

<現状>

円相場は、対ドル、対ユーロで下落しました。トランプ次期大統領の掲げる拡張的な財政政策を嫌気して米国の長期金利が大幅に上昇したことで、日本との金利差が拡大し、低金利通貨の円は下落して11月を終えました。月初は対ドルで104円台から始まりましたが、8日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利してからは、ドル高の流れが一挙に加速しました。円相場は、対ドルでは114円半ばで取引を終了し、5月以来の安値水準となりました。一方、ユーロは、119円台前半までユーロ高が進みました。

<見通し>

ドル円相場については、トランプ次期大統領の政策に対する期待が強く、日米長期金利差の拡大が見込まれることから、米ドル高・円安へと向かいやすい環境が当面続くと考えられます。ユーロ円相場については、低インフレを背景に、ECBが12月理事会で量的緩和を延長する可能性が高いため、ユーロは当面軟調な展開が見込まれます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感から、英ポンドは当面下落圧力を受けやすい地合いが引き続き予想されます。

8.リート

<現状>

11月のリート市場は中旬にかけて調整色を強めましたが、その後は値を戻す展開となりました。上旬は、米大統領選挙後に長期金利が世界的に上昇し、リートと国債の利回り格差の縮小が嫌気されリートは調整しました。中旬は、17日にイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議会証言で12月利上げの可能性を示唆したことから長期金利が上昇し、リート市場は軟調となりました。下旬は、トランプ次期大統領の経済対策に対する期待などから株式市場が堅調に推移し、10月の中古住宅販売件数が2007年2月以来の高水準となるなど、経済指標にも明るさが見えたことなどからリート市場は値を戻す展開となりました。S&Pグローバルリートインデックスの変動率は米ドルベースで▲6.2%、日本円ベースで▲2.7%でした。

<見通し>

FRBが12月に追加利上げに踏み切る可能性が高まり、これまでの低金利環境に若干の修正が入りました。当面は長期金利の水準訂正が落ち着くのを待つ必要がありますが、景気の拡大も物価の上昇も緩やかとみられ、長期金利は低いレンジでの推移が続く見込みです。長期金利が低いレンジで推移すれば、リート市場にも安心感が広がりやすくなると予想されます。

9.まとめ

株式 米国株式市場は、トランプ次期大統領の成長を呼び込む「強いアメリカの復活」に期待を寄せ上昇基調が続く見通しです。「強いアメリカの復活」期待がセンチメントを大幅に改善させ、これに企業業績の回復期待が加わることで堅調な展開が期待できそうです。一方、日本の株式市場では円高修正の動きが企業業績の改善期待に結びつきやすく、株価にとってプラスです。2016年度の経常利益は通期で前年度比▲1.8%(東証1部(除く金融)、3月期決算、東洋経済予想ベース、12月1日時点)と減益の見通しですが、円高修正を踏まえれば増益への転換の可能性も出てきました。経済環境や業績の改善期待が強まることで堅調な展開が期待できそうです。
債券 米国では、12月にも利上げが行われる可能性がありますが、日欧の低金利環境下で投資家の米国債に対する需要が強いことがサポート要因となることから、米金利の上昇は限定的となり、その後利回りはレンジ圏で推移すると見込まれます。欧州では、ECBが金融緩和策を強化する見通しですが、買取ルールの見直しにより、テーパリング(金融緩和策の縮小)の観測もくすぶるため、長期金利は緩やかにレンジを切り上げる展開が見込まれます。日本では、日銀のイールドカーブ・コントロールにより、日本国債の利回りは低位での推移が見込まれます。米国など主要国の社債市場は、企業の底堅い業績などを背景に、社債スプレッドは引き続き安定的に推移する見通しです。
為替 ドル円相場については、トランプ次期大統領の政策に対する期待が強く、日米長期金利差の拡大が見込まれることから、米ドル高・円安へと向かいやすい環境が当面続くと考えられます。ユーロ円相場については、低インフレを背景に、ECBが12月理事会で量的緩和を延長する可能性が高いため、ユーロは当面軟調な展開が見込まれます。また、英国のEU離脱選択に伴う不透明感から、英ポンドは当面下落圧力を受けやすい地合いが引き続き予想されます。
リート FRBが12月に追加の利上げに踏み切る可能性が高まり、これまでの低金利環境に若干の修正が入りました。当面は長期金利の水準訂正が落ち着くのを待つ必要がありますが、景気の拡大も物価の上昇も緩やかとみられ、長期金利は低いレンジでの推移が続く見込みです。長期金利が低いレンジで推移すれば、リート市場にも安心感が広がりやすくなると予想されます。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。