マーケットレポート

MARKET REPORT

先月のマーケットの振り返り(2018年11月)【マンスリー】

2018年12月05日

1.概観

トピックス (1)需給面からみた日本株の動き
(2)最近の米連邦準備制度理事会(FRB)高官発言とドル円相場
株式 米国の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)高官のハト派的発言や米中首脳会談への期待の高まり等から上昇しました。
欧州の株式市場は、英国の欧州連合(EU)離脱問題を巡る不透明感の高まり等により下落しました。
日本の株式市場は、米株式市場が堅調に推移したことに加え、為替も円安の方向に進んだこと等から上昇しました。
債券 米国の長期金利は、景気指標の軟化、米株価や原油価格の下落、FRB高官のハト派的な発言を受けた利上げ観測の後退等により低下しました。欧州の長期金利も、英国とEUの離脱交渉を巡る不透明感の強まり等から、低下しました。
為替 11月は円が、米ドルやユーロといった主要通貨に対して下落しました。11月上旬に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)において利上げ継続の方針が確認されたことや、主要国の株価が反発に転じたこと等からリスク回避の円買いの動きが後退したためです。
商品 原油先物価格は、サウジアラビアの原油生産が過去最高を記録との報などを受け、急落しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

2.トピックス

(1)需給面からみた日本株の動き

<注目点>

今回のレポートでは、日本株の需給面に注目し、最近の動きを確認します。    

<ポイント>

はじめに、空売り比率からみていきます。空売り比率とは、空売り売買代金が、実注文売買代金と空売り売買代金の合計に占める割合のことで、一般に40%を超えると高水準とされます。直近の動きをみると、10月1日から11月21日まで37営業日連続で40%を超えて推移しています。これは、下げ相場に収益機会を見込む投資家が多いことを示唆すると同時に、将来の買い戻し圧力も高まっていることを意味しています。
次に、ネット裁定残高に目を向けます。ネット裁定残高とは、裁定取引にかかわる現物の買いポジションから売りポジションを差し引いた株数です。一般に株高局面で先物が割高になると裁定買いの取引が増え、ネット裁定残高は増加、株安局面ではネット裁定残高が減少する傾向があります。過去ネット裁定残高は概ね5億株から20億株程度で推移していましたが、11月21日時点のネット裁定残高は、下限の目安である5億株を下回り、約3億株まで減少しました。そのため、残高が増加に転じるタイミング、すなわち株価反発のタイミングは、さほど遠くないように思われます。
最後に、投資部門別の日本株売買状況を確認します。主要投資部門について、年初からの売買代金累計をみると、海外投資家の売り越しが4兆円を超え、突出した動きとなっています。一般に、日本株は海外投資家の動向に影響を受けやすい傾向があることを踏まえると、10月以降に日本株が調整色を強めたのも、海外投資家の売りが関係したと推測されます。この先は、やはり海外投資家の動向が焦点になりますが、すでに年初から大幅に売り越しているだけに、株価反転の際には、買い戻しの余力は十分あると考えられます。

 

(2)最近の米連邦準備制度理事会(FRB)高官発言とドル円相場

<現状>

このところ、FRB高官から、利上げ継続に慎重ともとれる発言が相次いでいます。パウエルFRB議長は11月14日、米テキサス州ダラスで講演し、海外景気の減速や、米財政刺激効果の剥落、米利上げが時間差をもって経済に与える影響を潜在的な課題として列挙したうえで、「あとどれくらい利上げをするか、今後の利上げペースについて考えなければならない」と述べました。また、アトランタ地区連銀のボスティック総裁は11月15日にスペインの首都マドリードで開催された講演で、「(景気を刺激も抑制もしない)中立金利からあまりに遠く離れているとは思わない」と指摘しました。さらに、クラリダFRB副議長は11月16日、米CNBCのインタビューのなかで、米政策金利は「中立水準に近づいている」、「一部では減速しつつある世界経済も考慮に入れる必要がある」、ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁は11月19日、米ニューヨーク州ブロンクスで行われたイベントで、「われわれは若干の(somewhat)利上げを行う可能性が高い」と述べました。なお、パウエル議長、ボスティック総裁、クラリダ副議長、ウィリアムズ総裁は、いずれもFOMCにおける議決権を有しています。

<ポイント>

これら一連の発言を受け、市場では利上げペースが鈍化するのではないかとの観測が広がっています。弊社では、米利上げについて、年内は12月、来年は3月と6月に実施され、そこでいったん打ち止めと予想しています。また、米国の景気循環はピークアウトしつつあるも、一気にボトムに向かう展開ではないとみています。そのためドル円は、ドル高、ドル安、いずれの方向にも大きくは振れにくく、目先は110円から115円のレンジ内で推移する可能性が高いと思われます。

 

3.景気動向

<現状>

米国は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.5%となり、4-6月期の同+4.2%からは鈍化したものの、高い成長が続きました。
欧州は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+0.7%にとどまり、4-6月期の同+1.8%から大幅に鈍化しました。
日本は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率▲1.2%と、2四半期振りにマイナス成長となりました。
中国は、18年7-9月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.5%となり、政府の成長率目標である同+6.5%前後に沿った結果となりました。
豪州は、18年4-6月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.5%と、7四半期連続のプラス成長となりました。

 <見通し>

米国は、19年にかけて財政支出の拡大効果一巡が見込まれるものの、雇用増を支えとする個人消費の拡大を牽引役に安定成長を続ける見通しです。
欧州は、米中貿易摩擦の影響等はあるものの、雇用や賃金の増加に加え、財政による景気刺激もあり、緩やかな成長軌道を辿る見込みです。
日本は、良好な雇用・所得環境を背景とした内需の拡大から、緩やかな成長軌道を辿る見通しです。
中国は、対米貿易摩擦の影響を受けた減速が見込まれるものの、政府による経済政策やIT産業の高成長により、高めの成長を続けると予想されます。
豪州は、資源セクターの調整が一巡するため、景気拡大の足取りが、より力強さを増す見込みです。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の18年11月の予想1株当たり利益(EPS)は175.35米ドル(前年同月比+20.8%)と、25カ月連続で過去最高を更新し、かつ13カ月連続で前年同月比二桁の伸びとなりました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは133.79円(同+10.4%)と、18カ月連続で二桁の伸びとなりました(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。
11月の米国株式市場は、S&P500種指数で前月比+1.8%の上昇となりました。上旬から中旬にかけては米中貿易摩擦への警戒感が浮上するなか、ハイテク株が軟調な動きとなったほか、原油価格の値下がりを受けエネルギーセクターが下落しました。下旬はパウエルFRB議長が「金利水準は中立金利のわずか下にある」と述べ、利上げ打ち止めが近いことを示唆したことや、米中首脳会談への期待が高まったこと等から、米株は上昇しました。一方、日本株式市場も、TPOIXで前月比+1.3%と先月の下落から反発しました。堅調な米国株式市場の動きに加えて、米ドルの対円レートが113円台を保ったこと等も支えとなりました。

<見通し>

S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+24.0%、19年が同+8.4%の増益が予想されています(18年11月27現在、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+8.3%、19年度(20年3月期決算)が同+7.8%と10月のそれぞれ同+9.5%、同+8.1%より下方修正となりました(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年11月30日現在)。日米株式市場は、大幅な株価調整によって、利益との関係から見て割安感も台頭しています。

5.金融政策

<現状>

FRBは、11月7日、8日に開催したFOMCで、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.00%~2.25%で据え置くことを決定しました。 
欧州中央銀行(ECB)は、10月25日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。量的緩和政策である資産購入プログラムについては、月間150億ユーロの規模で18年末まで継続する方針です。
日本銀行は10月30日、31日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも引き続き年間約80兆円を目処にします。   

<見通し>

米国では、年内が12月、来年は3月と6月に利上げが実施され、FFレートの誘導目標値は中立金利と推計される3.00%程度で着地する見通しです。   
ユーロ圏では、18年末に量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債等の保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年9月に預金ファシリティ金利の引き上げ、同年12月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続け、物価上昇率は高まるものの、日銀が目標とする2%に到達するには時間がかかる見通しのため、当面、金融政策を据え置く見込みです。

6.債券

<現状>

米10年国債利回りは、9月中旬に3%台に乗せ、11月8日には3.24%まで上昇しましたが、その後は低下基調を辿りました。11月上旬は10月の雇用統計で雇用者数が上振れたことや、FOMCにおいて利上げ継続の方針が確認されたこと等から、利回りは上昇しました。ところが、中旬以降は米景気指標の軟化、米株価や原油価格の下落、パウエル議長をはじめとするFRB高官のハト派的な発言を受けた利上げ観測の後退等により低下し、11月末の10年国債利回りは前月末より低い水準で引けました。欧州では、英国のEU離脱交渉を巡る不透明感が強まったこと、11月のドイツPMIが製造業、非製造業とも市場予想を下回ったこと等を受けて、ドイツ10年国債利回りは低下しました。日本の10年国債利回りも、米長期金利の低下や欧米株式市場の下落等により、低下しました。米国の社債については、国債との利回り格差が前月末に比べ拡大しました。

<見通し>

米国では、10月以降ドル高や株式市場の変動など金融環境が引き締まってきており、FRBがタカ派色を強めるリスクは後退しました。長期金利は当面レンジ内で推移する見通しです。欧州では、緩やかながらも景気拡大が続くなか、ECBによる緩和縮小の推進が想定され、長期金利も緩やかに水準を切り上げると予想されます。一方で、英国のEU離脱問題やイタリアの政局不安のため、リスク回避傾向は残存すると見られます。よって、金利の上昇は限定的と考えられます。日本では、物価上昇が緩慢なものにとどまるため、日銀の緩和的な金融政策は長期化し、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。

7.為替

<現状>

11月は円が米ドル、ユーロ、豪ドルといった主要通貨に対して下落しました。11月に開催されたFOMCにおいて利上げ継続の方針が確認されたことや、主要国の株価が反発に転じたこと等を受けリスク回避の円買いの動きが後退したことによるものです。

<見通し>

円の対米ドルレートは、米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、110円を中心とするレンジでの推移となる見通しです。
ユーロは、製造業の緩慢な景況回復や、イタリアの政治リスク等により短期的には頭を抑えられる可能性がありますが、ユーロの経常黒字が高水準にあるうえ、景気も崩れているわけではありません。市場がECBの金融緩和縮小を意識し始めるにつれ、ユーロは緩やかな反発に向かうと予想されます。
一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気が堅調さを増すと見られることや、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、底堅い推移が見込まれます。

8.リート

<現状>

11月のグローバルリート市場は、主要国の長期金利低下を受けて上昇しました。円ベースの月間上昇率は、為替効果がプラスに寄与したため、ドルベースの上昇率を上回りました。

<見通し>

FRBによる利上げは、緩やかなペースで実施されると見られ、長期金利は当面、レンジ内での動きになると予想されます。相対的に高い利回りを求める投資家からの需要は根強く、これが引き続きグローバルリート市場を支援すると考えられます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。

9.まとめ

株式 S&P500指数採用企業のEPSは18年が前年比+24.0%、続く19年は同+8.4%が予想されています(予想はリフィニティブI/B/E/S)。一方、日本の予想経常利益増益率は、18年度(19年3月期決算)が前年度比+8.3%、19年度(20年3月期決算)は同+7.8%の見込みです(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、18年11月27日現在)。日米株式市場は、大幅な株価調整によって利益との関係から割安感も台頭しています。
債券 米国では、利上げやFRBの資産圧縮など金融政策を正常化する動きが継続する見通しです。もっとも、物価が落ち着いていること等から、FRBによる利上げは緩やかなものになると見られ、長期金利は当面レンジ内での推移が予想されます。
欧州では、ECBが18年末に量的緩和政策を終了し、19年秋以降に利上げを実施する見込みです。インフレが緩やかに持ち直していくとともに、長期金利も徐々に水準を切り上げていくと予想されます。
日本では、日銀の緩和的な金融政策が長期化する見通しです。債券需給の逼迫もあり、長期金利は低位での安定した推移が予想されます。
米国など主要国の社債市場は、企業の堅調な業績などを背景に、社債スプレッドは安定的に推移する見通しです。
為替 米景気の強さや日米実質金利差(米ドル高円安要因)と、日本の経常黒字、米国の双子の赤字(米ドル安円高要因)の綱引きとなり、円の対米ドルレートはレンジ内での動きが見込まれます。
対ユーロでは、堅調な域内経済やECBの金融緩和縮小の方針がユーロの支援材料になると予想されます。一方、豪ドルの対円相場は、豪州景気の堅調さが増すと見られること、先行きは豪日間の金利差が広がると予想されること等を踏まえると、今後、底堅い推移が見込まれます。
リート FRBによる利上げは緩やかなペースで進められる見通しであり、長期金利は当面、レンジ内での動きになると予想されます。こうしたなか相対的に高い利回りを求める投資家からの需要が根強いことが、引き続きグローバルリート市場をサポートすると見られます。世界的な景気拡大と低金利環境の下で、グローバルリート市場は底堅い展開が予想されます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。