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先月のマーケットの振り返り(2019年6月)

2019年7月3日

1.概観

株式 米国の株式市場は、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待の高まりや米中首脳会談開催による協議進展期待等から、大幅に上昇しました。
欧州の株式市場は、FRBや欧州中央銀行(ECB)による金融緩和期待の高まりなどから大幅に上昇しました。
日本の株式市場は、FRBやECBによる金融緩和期待が高まり、欧米株式市場が堅調に推移したことから投資家心理が強気に傾き、上昇しました。
債券 米国の長期金利は、FRBの年内利下げ観測の高まりを受けて低下しました。
欧州の長期金利は、FRBやECBの利下げ期待の高まりを受けて、ドイツや英国など域内の金利が軒並み低下しました。
日本の長期金利は、米欧での利下げ期待の高まりにより世界的に長期金利が低下したことを受けて国内債にも買いが波及し、利回りが低下しました。
米国社債については、利回りを求める資金が流入し、国債との利回り格差が縮小しました。
為替 円は対米ドルで上昇し、対ユーロ、豪ドル、英ポンド等では下落しました。FRBによる早期利下げへの期待の高まりを受けて米ドルが主要通貨に対して売られたことから、円の対米ドルレートは上昇しました。豪ドルは、前月の大幅な下落からやや持ち直し、対円で円安・豪ドル高となりました。
商品 原油先物価格は、ホルムズ海峡近くのタンカー襲撃を受けた原油供給への警戒感の高まりや、米国とイランの対立を巡る中東情勢の緊迫等から大幅に上昇しました。

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+3.1%と、堅調に成長しました。
欧州は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.6%となりました。昨年末の落ち込みから回復しました。
日本は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.2%となりました。輸入の減少幅が大きかったことから、実態よりも押し上げられました。
中国は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前年同期比+6.4%となり、前期の同+6.4%から横ばいとなりました。
豪州は、19年1-3月期の実質GDP成長率が前年同期比+1.8%と、3期連続で伸びが減速しました。

<見通し>

米国は、米中貿易摩擦が再燃し企業活動が再び慎重化したことなどから、景気の持ち直し時期が年後半から後ずれする見込みです。米中首脳が協議再開に合意し対立の全面衝突が回避できる展開となったことから、20年にかけて緩やかな持ち直しが期待されます。
欧州は、米中貿易摩擦の影響による輸出の鈍化など製造業を取り巻く環境が悪化しているため、景気回復時期が遅れ20年以降となる見込みです。
日本は、外部環境の不透明感が高まったことなどから19年後半にかけて足踏みとなりそうです。その後も緩やかな成長に止まると見られます。
中国は、米中貿易摩擦の影響による企業心理の悪化などから一時的に景気が減速すると見られますが、政府の景気対策が下支えとなりそうです。
豪州は、設備投資の回復が見込まれるものの、可処分所得の鈍化や国内住宅投資の減速が続くことから、緩やかな成長が続くと予想されます。

3.金融政策

<現状>

FRBは、6月18、19日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25%~2.50%に据え置きました。FOMC声明文では、経済見通しに関する不確実性に対し「辛抱強くなる」との文言が削除され、「適切に対応する」と修正されました。
ECBは、6月6日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。また、政策⾦利の⽔準を少なくとも20年前半まで据え置くとし、19年末までとしていた従来から先送りました。
日銀は6月19、20日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。また、長期国債を買い増すペースを年間で約80兆円を目途とすること、ETFやリートの買入れ方針に加え、フォワードガイダンス(先行きの指針)も据え置きました。

 <見通し>

米国では、FRBはなお足元のコア物価の下振れは一時的なものと見ているものの、中国やメキシコとの貿易摩擦など通商問題がもたらす不透明感への警戒を強めていると見られることから、景気の下方リスクに対する予防的な措置として早ければ7月のFOMCで0.25%の利下げが行われるとみられます。
ユーロ圏では、製造業の低迷が長期化していることやFRBが利下げに動くと見られる中、ECBも追随する必要性が高まっていることなどから、年末までに預金ファシリティ金利の引き下げと、債券購入再開がアナウンスされると想定します。
日本では、物価(コア)上昇率はマイナス圏に鈍化するとみられ、日銀の追加緩和期待がくすぶりやすい状況が続くと予想されます。日銀は、少なくとも20年春頃まで金融政策を維持すると見られますが、海外中銀の緩和を受けて急激な円高が進む場合は、追加緩和の検討もあり得ると考えます。

4.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の6月の1株当たり予想利益(EPS)は176.23米ドル、前年同月比の伸び率は+4.4%で、7カ月ぶりに史上最高を更新しました。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは123.16円(同▲6.2%)で、5カ月連続のマイナスでした(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。6月の米国株式市場は、メキシコへの追加関税が懸念されましたが、パウエルFRB議長の利下げ含みの発言や、米雇用統計の非農業部門雇用者の伸びが大幅に鈍化したこと等から利下げ期待が強まったことを背景に堅調な推移となりました。下旬はイランへの地政学リスクの高まりや米中首脳会談を控えて様子見の姿勢が強まりましたが、米中協議の進展が期待されたこと等から小幅な下落にとどまって引けました。S&P500種指数は前月比で+6.9%、ナスダック総合指数は同+7.4%、NYダウは同+7.2%でした。一方、日本株式市場も米国の利下げ期待や米中交渉の進展期待などから上昇しましたが、円の対米ドルレートが一時106円台を付けるなど、円高基調が株価の上値を抑えました。TOPIXは前月比+2.6%、日経平均株価は同+3.3%でした。

<見通し>

S&P500種指数採用企業のEPSは19年が前年比+2.4%(前月同+2.9%)、20年が同+11.5%(同+11.7%)と小幅下方修正となりました(19年6月28日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は19年度(20年3月期決算)が前年度比+2.9%(前月同+7.1%)、20年度(21年3月期決算)が同+6.7%(前月同+6.5%)(東証一部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年6月28日現在)と、今年度の下方修正幅が足元で大きくなっています。業績予想の面からは、米国の株式市場は底堅く、日本の株式市場はやや上値の重い展開となりそうです。

5.債券

<現状>

米国では、10年国債利回りが低下しました。米国内の低調な物価指標やFRBによる早期利下げ期待の高まりに加え、中東の地政学リスクの高まり等を受けて、月間を通じて利回りは低下基調となりました。一時16年11月以来となる2.0%を下回る場面がありました。
欧州では、FRBによる利下げ観測や、ドラギECB総裁による金融緩和をめぐる発言などを受けてドイツの10年国債利回りが低下しました。また、フランスの10年国債利回りが初めてマイナス圏まで低下しました。ドラギ総裁は、物価の伸びが低迷し目標を達成できない状況が続いた場合、ECBは利下げや資産買い入れなどの金融緩和を再度行うと明言し、物価押し上げへの決意を表明しました。
日本の10年国債利回りは、米欧の早期利下げ期待から世界的に長期金利が低下したことを受けて国内債にも買いが波及し、利回りが低下しました。
米国の社債については、利回りを求める資金が流入し、国債との利回り格差が縮小しました。

<見通し>

米欧の長期金利は、FRBやECBが年内にも利下げに動くと見られることから、当面低位での推移が続くと見られます。米中貿易問題で米中首脳が協議の再開を合意したことから緩やかながら徐々に水準を上げると思われますが、上昇度合いは限定的と見られます。
日本では、欧米中銀の政策スタンスが利下げ方向へ転じる中、日本の物価(コア)上昇率はマイナス圏に鈍化する見通しです。秋には消費増税も予定されており、日銀への追加緩和期待がくすぶり続けること等から、長期金利は当面マイナス圏での推移が継続する見通しです。

6.為替

<現状>

円は対米ドルで上昇し、対ユーロ、豪ドル、英ポンドでは下落しました。FRBによる早期利下げへの期待の高まりを受けて米ドルが主要通貨に対して売られたことから、円の対米ドルレートは上昇しました。ユーロ圏では経済指標が低調ながら概ね予想に沿った数字となったこと等から、欧州景気への過度な懸念が後退し、円は対ユーロで下落しました。月末の主要20カ国・地域(G20)大阪サミットに合わせて開催された米中首脳会談で、米中協議が進展するとの期待が広がったことも円売りを促しました。また、豪州では豪州準備銀行(RBA)の利下げ観測の高まりを受けて5月に豪ドルが大幅に下落していたことから6月は持ち直し、円の対豪ドルレートは下落しました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、日米実質金利差が引き続き米ドルの支援材料になると考えられますが、FRBが年内にも利下げを実施すると見られる一方、日銀の緩和余地は小さいため、米中貿易摩擦の推移や米国の経済指標等によっては円高方向で推移する可能性があります。ただし、大局的にはレンジ相場となると見られます。
円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが利下げを行うと見られることがユーロ圏の上値を抑制すると見られます。ただし、ユーロは底値圏にあると見られ、米中対立の更なる激化には歯止めがかかったと見られることなどから、中期的に回復に向かうと思われます。
円の対豪ドルレートは、RBAが6月以降も利下げを実施する可能性が高いこと等からレンジが下方へシフトしています。ただし、米中対立の更なる激化に歯止めがかかったと見られることから、グローバル景気が持ち直しに向かえば豪ドルも堅調さを取り戻すと考えられます。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は、主要中銀が年内利下げに動く可能性が高まったことを受けて長期金利が低下したことなどから、相対的に利回りの高いリートが選好され、前月末比で1.53%上昇しました(現地通貨ベース)。一方、円ベースの月間変化率では、米ドルが主要通貨に対して下落し円高となったため、為替はマイナスに寄与し、前月比0.75%の上昇となりました。

<見通し>

主要中銀が年内の利下げを実施する可能性が高く、低金利環境が当面継続すると見られることはリートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。

8.まとめ

株式 S&P500種指数採用企業のEPSは19年が前年比+2.4%(前月同+2.9%)、20年が同+11.5%(同+11.7%)と小幅下方修正となりました(19年6月28日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は19年度(20年3月期決算)が前年度比+2.9%(前月同+7.1%)、20年度(21年3月期決算)が同+6.7%(前月同+6.5%)(東証一部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年6月28日現在)と、今年度の下方修正幅が足元で大きくなっています。業績予想の面からは、米国の株式市場は底堅く、日本の株式市場はやや上値の重い展開となりそうです。
債券 米欧の長期金利は、FRBやECBが年内にも利下げに動くと見られることから、当面低位での推移が続くと見られます。米中貿易問題で米中首脳が協議の再開を合意したことから緩やかながら徐々に水準を上げると思われますが、上昇度合いは限定的と見られます。
日本では、欧米中銀の政策スタンスが利下げ方向へ転じる中、日本の物価(コア)上昇率はマイナス圏に鈍化する見通しです。秋には消費増税も予定されており、日銀への追加緩和期待がくすぶり続けること等から、長期金利は当面マイナス圏での推移が継続する見通しです。
為替 円の対米ドルレートは、日米実質金利差が引き続き米ドルの支援材料になると考えられますが、FRBが年内にも利下げを実施すると見られる一方、日銀の緩和余地は小さいため、米中貿易摩擦の推移や米国の経済指標等によっては円高方向で推移する可能性があります。ただし、大局的にはレンジ相場となると見られます。
円の対ユーロレートは、欧州景気の低迷を背景にECBが利下げを行うと見られることがユーロ圏の上値を抑制すると見られます。ただし、ユーロは底値圏にあると見られ、米中対立の更なる激化には歯止めがかかったと見られることなどから、中期的に回復に向かうと思われます。
円の対豪ドルレートは、RBAが6月以降も利下げを実施する可能性が高いこと等からレンジが下方へシフトしています。ただし、米中対立の更なる激化に歯止めがかかったと見られることから、グローバル景気が持ち直しに向かえば豪ドルも堅調さを取り戻すと考えられます。
リート 主要中銀が年内の利下げを実施する可能性が高く、低金利環境が当面継続すると見られることはリートにとって好材料となりそうです。一方で、中期的に見れば米国の不動産市況はピーク圏にあり、その市況の下支えとなる経済成長はペース鈍化の流れにあることは重石となりそうです。ただし、リートの安定的な賃貸収入や相対的に高い利回りは着目されやすい展開が続くと見られ、リートが選好されやすい状況が続くと考えられます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。