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先月のマーケットの振り返り(2020年4月)

2020年5月8日

1.概観

株式 世界の株式市場は新型コロナ感染拡大による急落から反発しました。月後半、原油先物価格の急落を受けて株式市場も下落する場面もありましたが、米欧での感染拡大がピークを越えたとの見方から経済再開への動きや期待感が広がったことや、各国の積極的な財政金融政策を好感し株式市場は上昇しました。米国の株式市場では、トランプ大統領が経済再開の指針を発表したことや、新型コロナ治療薬への期待などを背景にNYダウ工業株30種平均が10%を超える上昇となりました。欧州の株式市場も、イタリアやスペイン、フランスなどで感染拡大が落ち着き、各国でロックダウン解除に向けた報道が相次いだことから総じて上昇しました。日本の株式市場は、海外市場の上昇に支えられましたが、国内での感染拡大がまだ続いていることなどから米欧に比べ小幅な上昇となりました。
債券 米国や欧州では、中央銀行の国債買い入れ、景気低迷や原油価格の下落による金利低下圧力から利回りが低下しました。3月に大きく売られた社債は持ち直し、国債と社債の利回り格差は縮小しました。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)による社債市場への資金供給策が好感されました。日本では下旬に日銀が資産買い入れ額を増額するとの観測が高まり、利回りが低下しました。
為替 米ドル、ユーロは各国の金融緩和を背景に対円で下落しました。豪ドルはこれまでの下落の反動や感染拡大の落ち着きなどから上昇しました。
商品 原油先物価格は、新型コロナの影響による経済停滞を背景とした原油需要の大幅減少で一時史上初のマイナス価格となるなど、大幅に下落しました。

 

(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

2.景気動向

<現状>

米国の20年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲4.8%となり、急激な新型コロナ感染拡大によりわずか半月間で経済が失速し大幅なマイナス成長となりました。設備投資と個人消費が大きく下振れた一方、住宅投資は金利低下の影響で上振れました。政府支出もわずかながらプラスとなりました。
欧州(ユーロ圏)の20年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲14.4%となり、ロックダウンの影響が小売業や消費活動など予想以上に幅広い分野にみられ、大幅なマイナス成長となりました。
日本の19年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲7.1%となり、設備投資や個人消費などが大きくマイナスとなりました。
中国の20年1-3月期の実質GDP成長率は、前年同期比▲6.8 %となり、個人消費や固定資産投資の下振れを主因に市場予想を大幅に下回りました。
豪州の19年10-12月期の実質GDP成長率は、前年同期比+2.2%でした。1-3月期の成長予想は2月以降下方修正されています。

<見通し>

米国は、新型コロナ抑制のための行動規制により、4-6月期の経済成長率も大きく落ち込みますが、新規感染者数の増加ペースが低下してきているため、徐々に経済活動が再開され正常化へ向かうと期待されます。迅速かつ大規模な金融緩和や景気対策により、比較的早期の回復が期待されます。
欧州でも、新型コロナの影響で4-6月期も引き続き大きなマイナス成長になると予想されますが、徐々に経済活動が再開されるため、緩やかながら経済は回復に向かうとみられます。ECBは大規模な金融緩和を展開していますが、ユーロ圏全体での足並みをそろえた大型の景気対策は米国比遅れが感じられます。
日本は、新型コロナの感染拡大を受けて全国に緊急事態宣言が出されています。期限延長により消費行動を中心とした経済活動が正常化に向かうには時間がかかる見込みです。
中国は、新型コロナの影響により20年1-3月期の実質GDP成長率は大幅な下落となりました。一方、感染拡大は概ね収束し、鉱工業生産の持ち直しなどによって4-6月期から景気回復が期待されます。政府による財政政策を中心とした大規模な景気対策が景気回復をサポートするとみられます。
豪州は、新型コロナの感染抑制のための経済封鎖によって4-6月期の経済活動が大幅に減速すると見込まれますが、政府の財政支援策や豪州準備銀行(RBA)による追加的金融政策実施により、感染拡大に起因する経済や金融の混乱緩和が期待されます。

3.金融政策

<現状>

米連邦準備制度理事会(FRB)は新型コロナの感染拡大を受け、3月には緊急利下げによる事実上のゼロ金利政策と、国債などの買い入れによる量的金融緩和を再開させました。その後も、CP市場や社債市場等の支援策を導入し、4月には、企業や州政府の資金繰り支援のため大規模なローン制度を導入しました。これらによりFRBは、流動性を求めた金融市場の混乱を抑えた他、資金難に苦しむ中小企業の破綻を防ぐ手立てを講じました。
欧州中央銀行(ECB)は、3月の大規模な金融緩和(マイナス金利での長期資金の供給やQE拡大)に加え、4月には緊急理事会で資金供給オペの適格担保基準を緩和し、格下げに伴う投げ売りの抑制に動きました。4月の理事会ではこれらの金融政策を据え置きましたが、銀行への長期資金の貸し付け条件のさらなる緩和や、パンデミック緊急長期資金供給オペレーションを新たに導入しました。
日銀は4月の政策決定会合で金融緩和を強化し、CP・社債等買い入れの増額、新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充、国債のさらなる積極的な買い入れ、を決定しました。

 <見通し>

FRBは28-29日のFOMCで現状の大規模な金融緩和を維持しました。米国経済の中長期的な下方リスクを警戒し、低金利がしばらくの間続くことを示唆しました。経済再開は新型コロナの感染再発を避けるために慎重に行われるとみられ、FRBの大規模緩和は当面継続されるとみられます。
欧州でも、ECBや英国中央銀行(BOE)が大規模な金融緩和を継続する見込みです。
日本では、金融市場調整と資産買い入れ措置を通じた大規模な金融緩和を継続すると思われますが、マイナス金利の深堀りは回避するとみられます。

4.債券

<現状>

米国の10年国債利回りは低下しました。FRBの積極的な金融緩和策や景気低迷、原油価格の下落による金利低下圧力から利回りが低下しました。3月に大きく売られた社債は持ち直し、国債と社債の利回り格差は縮小しました。
ユーロ圏でも、ECBが利下げは見送ったものの量的緩和政策の拡大を決定し、その後の緊急会合においてさらなる拡大を決定するなど、金融緩和を進めました。これらを受けてドイツの10年国債利回りも低下しました。
日本では、下旬に日銀が資産買い入れ額を増額するとの観測が高まり、利回りが低下しました。

<見通し>

米国では、年央以降は新型コロナの影響緩和と景気持ち直しなどから長期金利は水準を切り上げるとみられますが、低インフレの下、FRBが慎重な姿勢を続けるため、上昇は緩やかとみられます。社債はFRBの信用緩和策もあり、国債との利回り格差は低水準で推移するとみられます。
欧州も、年央以降は新型コロナの影響緩和と景気持ち直しが見込まれますが、米国よりも景気の反発には力強さを欠くとみられること、ECBが大規模な金融緩和を続けることから、長期金利の上昇は極めて緩やかなものになると予想されます。
日本では、追加緩和は利下げを見送りつつ資金供給中心に緩和が強化されました。財政赤字急拡大により国債発行は増加しますが、物価の上昇ペースも引き続き緩慢で、日銀の国債買い入れが金利上昇を抑制するとみられます。

5.企業業績と株式

<現状>

S&P500種指数の4月の1株当たり予想利益(EPS)は前年同月比▲18.0%(前月同▲7.7%)の142.35と大きく悪化しました。一方、東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは107.69で、伸び率は同▲17.1%となりました(いずれもBloomberg予想)。米国株式市場は、月初は新型コロナ懸念から大幅下落となりましたが、新規感染者がピークアウトするとの見方が出たこと、FRBが間接融資や低格付け社債の買い入れなど企業金融を支えるために資金供給を大幅に拡大したことなどから安心感が広がりました。S&P500種指数が前月比+12.7%、NYダウが同+11.1%、ナスダック総合指数が同+15.4%と、主要指標は軒並み底打ちし、上昇に転じました。一方、日本株式市場も、欧米での新規感染者数の減少や米の治療薬への期待などから底打ちしましたが、緊急事態宣言から国内景気の回復が遅れるとの懸念が重石となりました。TOPIXが前月比+4.3%、日経平均株価が同+6.7%でした。

<見通し>

米国株式市場は、S&P500種指数の20年1-3月期の利益成長率は4月30日現在前年同期比▲14.4%と3月末時点の予想同▲3.7%から悪化、4-6月期も▲36.9%(同▲9.6%)と月を追うごとに減益予想が大幅に悪化しています。しかし、その後は7-9月期同▲20.2%、10-12月期同▲10.0%、21年1-3月期同+15.4%と徐々に回復に向かう見通しです。米国株式市場は、今後の新型コロナ感染拡大と米景気の動向を睨みつつ、引き続き変動幅の大きな展開が予想されます。日本は緊急事態宣言が延長されるなど、新型コロナ感染拡大の歯止めや抑制の動向が引き続き重要と思われます。日本株式市場も神経質な展開が続くと考えられます。

6.為替

<現状>

円は対米ドルでやや上昇しました。米国の積極的な経済対策や新型コロナの治療薬に対する期待などから米ドルが強含む場面もみられましたが、米国の大規模金融緩和や経済悪化懸念などから米ドルは下落し、月末は1米ドル=107円近辺で推移しました。
円は対ユーロでやや上昇しました。イタリアなど欧州での感染拡大が嫌気されユーロは売られました。ただし、月末にかけては欧州での感染拡大がピークを迎えたとの見方などからユーロは回復に向かいました。
円は対豪ドルで下落しました。豪ドルは、豪州での新型コロナ感染者数が大幅に減少し感染拡大が収束に向かっていることや、これまでの下落の反動などから上昇基調を辿りました。

<見通し>

円の対米ドルレートは、FRBの大規模金融緩和は米ドル安要因ですが、他国でも大規模緩和が行われている他、世界的に米ドル需要が強いことなどから現行のレンジでの推移が見込まれます。
円の対ユーロレートは、主要各国が金融緩和を継続・強化していることや、経済見通しも各国同時に悪化していることから、主要通貨間の為替レートは一方的な動きになりにくく、当面は現行のレンジでの動きが予想されます。長期的にユーロは底値圏とみられ新型コロナの影響が緩和すればユーロは持ち直すとみられます。
円の対豪ドルレートは、新型コロナ感染拡大の鎮静化を好感した豪ドルの回復傾向が続くとみられます。感染が再拡大する場合は豪ドルに売り圧力がかかる他、RBAの金融緩和は豪ドルの上値を抑制するとみられます。

7.リート

<現状>

グローバルリート市場(米ドルベース)は、欧米での新型コロナ感染拡大がピークを迎えたとの見方が広がり、経済再開への期待が高まったことや、各国の積極的な経済対策や金融政策に支えられ上昇に転じ、前月末比7.55%上昇しました。また、円ベースの月間変化率では、新型コロナ収束や治療薬への期待などから米ドルが上昇する場面もありましたが、FRBの大規模金融緩和を背景に円が買われたことなどから、同6.52%の上昇となりました。

<見通し>

新型コロナ感染拡大を受けた主要各国の金融緩和措置等により、長期金利は低位で推移する見通しです。グローバルリート市場は、新型コロナが収束するにつれて、低金利環境下でのインカム商品へのニーズが着目されることが見込まれます。ただし、新型コロナの景気への影響度合いによっては、セクターごとの格差が広がる可能性があります。Jリート市場では、オフィス・住宅の賃料上昇期待は剥落し、商業施設やホテルは厳しい業況が見込まれる他、外部成長が難しくなるとみられます。一方で価格は一定の配当成長悪化を織り込んでおり、当面は市況の悪化と評価の見極め期間となり横ばい圏で推移するとみられます。

8.まとめ

債券 米国では、年央以降は新型コロナの影響緩和と景気持ち直しなどから長期金利は水準を切り上げるとみられますが、低インフレの下、FRBが慎重な姿勢を続けるため、上昇は緩やかとみられます。社債はFRBの信用緩和策もあり、国債との利回り格差は低水準で推移するとみられます。
欧州も、年央以降は新型コロナの影響緩和と景気持ち直しが見込まれますが、米国よりも景気の反発には力強さを欠くとみられること、ECBが大規模な金融緩和を続けることから、長期金利の上昇は極めて緩やかなものになると予想されます。
日本では、追加緩和は利下げを見送りつつ資金供給中心に緩和が強化されました。財政赤字急拡大により国債発行は増加しますが、物価の上昇ペースも引き続き緩慢で、日銀の国債買い入れが金利上昇を抑制するとみられます。
株式 米国株式市場は、S&P500種指数の20年1-3月期の利益成長率は4月30日現在前年同期比▲14.4%と3月末時点の予想同▲3.7%から悪化、4-6月期も▲36.9%(同▲9.6%)と月を追うごとに減益予想が大幅に悪化しています。しかし、その後は7-9月期同▲20.2%、10-12月期同▲10.0%、21年1-3月期同+15.4%と徐々に回復に向かう見通しです。米国株式市場は、今後の新型コロナ感染拡大と米景気の動向を睨みつつ、引き続き変動幅の大きな展開が予想されます。日本は緊急事態宣言が延長されるなど、新型コロナ感染拡大の歯止めや抑制の動向が引き続き重要と思われます。日本株式市場も神経質な展開が続くと考えられます。
為替 円の対米ドルレートは、FRBの大規模金融緩和は米ドル安要因ですが、他国でも大規模緩和が行われている他、世界的に米ドル需要が強いことなどから現行のレンジでの推移が見込まれます。
円の対ユーロレートは、主要各国が金融緩和を継続・強化していることや、経済見通しも各国同時に悪化していることから、主要通貨間の為替レートは一方的な動きになりにくく、当面は現行のレンジでの動きが予想されます。長期的にユーロは底値圏とみられ新型コロナの影響が緩和すればユーロは持ち直すとみられます。
円の対豪ドルレートは、新型コロナ感染拡大の鎮静化を好感した豪ドルの回復傾向が続くとみられます。感染が再拡大する場合は豪ドルに売り圧力がかかる他、RBAの金融緩和は豪ドルの上値を抑制するとみられます。
リート 新型コロナ感染拡大を受けた主要各国の金融緩和措置等により、長期金利は低位で推移する見通しです。グローバルリート市場は、新型コロナが収束するにつれて、低金利環境下でのインカム商品へのニーズが着目されることが見込まれます。ただし、新型コロナの景気への影響度合いによってはセクターごとの格差が広がる可能性があります。Jリート市場では、オフィス・住宅の賃料上昇期待は剥落し、商業施設やホテルは厳しい業況が見込まれる他、外部成長が難しくなるとみられます。一方で価格は一定の配当成長悪化を織り込んでおり、当面は市況の悪化と評価の見極め期間となり横ばい圏で推移するとみられます。
  ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。