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【デイリー No.1,920】最近の指標から見る中国経済(2014年7月)

2014年7月24日

<ポイント>
・景気支援策を背景に、GDPや生産の伸びが底を打ちました。小売売上高は底堅さを保っています。
・固定資産投資は、インフラ投資の急増が不動産投資の鈍化の影響を和らげ、鈍化に歯止めがかかりました。
・米欧の景気回復を受けて、貿易黒字額は比較的大きなものとなり、外需が景気の支援要因となっています。
⇒財政支出、規制緩和、金融緩和などの追加余地があり、年+7.5%前後の成長目標は達成されそうです。

1.GDPや生産の鈍化に歯止め、小売売上高は底堅さ保つ

①GDP成長率、工業生産
 4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.5%と、3四半期ぶりに鈍化に歯止めがかかりました。前期比では+2.0%と、持ち直しがより明確に見られ、3四半期ぶりの伸び幅となりました。
 背景には、4月から政府が景気支援姿勢を強め、①鉄道などインフラ投資計画の上積みで企業が増産に動きやすくなったこと、②金融環境を緩和的にしたこと(6月は銀行貸出も目立って増加)、③先進国需要の回復と人民元安で輸出が好調だったことなどが挙げられます。
 6月の工業生産を見ると、前年同月比+9.2%と、昨年12月以来の高い伸びとなりました。足元では、自動車の生産が5月、6月と前年から2桁の伸びを続けて全体をけん引し、伸び悩んでいた鉄鋼生産なども持ち直しています。
 6月の製造業景況感指数(PMI)は51.0ポイントと、6カ月ぶりの高水準となりました。指数の内訳からは、国内と海外向けの新規受注がともに伸び、企業の在庫も積み上がっていない状況が見て取れます。生産は緩やかな持ち直しが続きそうです。

②小売売上高
 6月の小売売上高は前年同月比+12.4%となり、5月の同+12.5%を小幅に下回りました。ただし、物価を調整した実質ベースでは同+10.7%と、5月から横ばいでした。伸びが目立つのは、携帯電話、家具、住宅の内装など、都市部拡大の追い風を受ける分野です。
 1-6月累計の賃金上昇率(名目)は、都市部で前年同期比+9.6%、農村部で同+12.0%と、大幅な増加が続きました。2012年夏から消費者物価が概ね年+2~3%に抑えられているなか、消費者の購買力は着実に向上しています。

2.固定資産投資も鈍化に歯止め、外需は景気支援材料

①固定資産投資
 1-6月累計の固定資産投資(農村部除く)は前年同期比+17.3%と、9カ月ぶりに鈍化に歯止めがかかりました。年初来累計での伸びが年半ばから反発したことから、直近の投資の加速感がうかがわれます。
 なお、足元の加速感は、既存計画の前倒しや資金繰り環境の好転などによるところが大きいと思われます。政府が4月から発表したインフラ投資計画の上積みの影響は、これからとなりそうです。
 6月は新規着工計画の伸びがようやく反転上昇したところです。2012年半ばからインフラ投資を前倒し・拡充した際は、同年末にかけ、まず新規着工計画が急増し、固定資産投資を支えました。今後の固定資産投資の水準を占ううえで新規着工計画の推移が注目されます。

②貿易統計
 6月の貿易収支は316億米ドル(約3.2兆円)の黒字と、高めの水準が続きました。輸出額が前年同月比+7.2%と伸びがやや加速し、輸入額も同+5.5%と、2カ月ぶりに増加に転じました。
 6月の輸出を国・地域別に見ると、欧州向けが同+12.5%と2桁増を続け、全体をけん引しました。年初に伸び悩んだASEAN向けが同+9.7%、米国向けが同+7.5%まで回復してきたことも好材料です。

3.今後の見通し

 GDP成長率が年後半に失速する可能性は総じて低下しており、2014年通年の目標である「+7.5%前後」の成長は達成されそうです。なお、現地報道では中国政府が4月~6月に政府系銀行へ1兆元規模(約16.3兆円)の大型の資金供給を行ったと伝えられています。これは、主に都市部の貧困地区の再開発などに向けた資金供給と指摘されており、その規模からも、経済の拡大基調を維持することに寄与しそうです。加えて、中国政府には、財政支出の拡大や規制緩和、金融政策の緩和方向への調整など、支援策の拡充を続ける余地があると見られ、景気鈍化への懸念は抑えられそうです。
 金融政策においては、一部銀行への預貸率、預金準備率の緩和など、対象を限定した緩和策が続けられそうです。政府は、影の銀行の規模拡大をけん制するために、正規の銀行貸出や政府系銀行を通じた貸出の促進などに動いています。一方、既存案件の資金繰りを支援するため、市場には今後も潤沢に資金が供給されると見られ、これも景気を支えそうです。
 中国の株価は、春先から政府の支援姿勢によって景気下振れを回避できるとの安心感が徐々に広がり、足元では上昇傾向にあります。この株高を踏まえたうえでも、中国株が歴史的に見て、または他の先進国と比較して、割安な水準にあることには変わりは無いと見られます。今後の株価は、改革の進展や企業業績の回復期待、相対的に高い成長力への評価などから、緩やかな上昇基調を続けるものと思われます。

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