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【デイリー No.1,849】最近の指標から見る日本経済(2014年4月)

2014年4月22日

<ポイント>
・輸出が鈍化した一方、輸入は駆け込み需要もあり増加が加速したため、貿易収支の赤字幅が拡大しました。
・天候不順で生産は減少しましたが在庫の低下が続いており、生産の急速な悪化は見られないと思われます。
・4月からの消費税率の引き上げなどで企業の景況感は低下し、4月の消費も減速が見られます。
⇒世界経済が回復基調にあることなどから増税による景気減速への影響は一時的にとどまると思われます。

1.輸出の伸び鈍化などで貿易収支の赤字幅は拡大

①貿易統計
 3月の貿易収支は▲1兆7,142億円(季節調整後)と赤字幅が再び拡大しました。この赤字額は統計開始来最大だった今年1月に次ぐ大きさです。季節調整前では▲1兆4,463億円でした。
 輸出額(季節調整前、以下同様)は前年同月比+1.8%と、前月の同+9.8%から鈍化しました。品目別では、全体の15%弱を占める自動車が前年同月比+9.0%と引き続き全体をけん引しました。一方、輸入額は同+18.1%と再び2桁の伸びに加速しました。消費税増税前の駆け込み需要の影響もあったとみられます。品目別では原油などの鉱物性燃料やスマートフォンなど向けの半導体等電子部品などが伸びました。輸出額を地域別に見ると、中国向けやアジア向けの伸びが大きく鈍化しており、全体の動向に影響しました。
 輸出の伸びが2013年12月以降、鈍化していることはやや懸念材料です。しかし米国を中心に世界的に景気は回復傾向にあることから、今後輸出は、徐々に持ち直すと思われ、貿易赤字の拡大には徐々に歯止めがかかると思われます。

②鉱工業生産
 2月の鉱工業生産指数は前月比▲2.3%と6カ月ぶりにマイナスになりました。大雪により一部工場の操業が停止になったことなどが影響したと見られます。業種別に見ると、輸送機械工業(普通乗用車など)が同▲5.8%、情報通信機械工業(携帯電話、カーナビなど)が▲10.1%と低下しました。また、在庫指数は鉄鋼業や輸送機械工業で低下したことなどから同▲0.9%と、7カ月連続の低下となりました。
 今後の生産動向の見通しを示す製造工業生産予測調査(企業の生産計画に基づく)を見ると、3月は前月比+0.5%、4月は同▲0.6%の見込みです。4月は消費税率引き上げ後の消費低迷で生産の減少も見込まれますが、3月の生産の増加が小幅なため、4月の生産は比較的緩やかな減少にとどまる見通しです。在庫の低下が続いていることなどからも、5月以降の生産の急速な悪化は避けられそうです。

2.消費税率引き上げで企業の景況感や消費に変化

①日銀短観
 3月調査の日銀短観では大企業・製造業の業況判断DIは+17と4四半期連続のプラスとなりました。このほか、大企業、中堅企業、中小企業の製造業・非製造業の全ての分類において、前回の12月調査より改善しました。なかでも中堅企業は製造業が+12(前期比+6ポイント)、非製造業が+17(同+6ポイント)と改善幅が大きく、中小企業でも大企業を上回る改善幅となりました。先行して景況感が回復していた大企業を追う形で、中堅・中小企業にも景気回復が本格的に波及したと見られます。
 一方、大企業・製造業の3カ月先の景況感を示す「先行きDI」は+8と最近(業況判断DI)から9ポイントの悪化が見込まれています。このほか全ての分類において9~12ポイントの悪化が見込まれており、なかでも中小企業は製造業・非製造業ともにマイナスに転じる見込みです。消費税率の引き上げに対し、企業の慎重な姿勢が見られます。

②全国百貨店売上高
 3月の全国百貨店売上高は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響で前年同月比+25.4%の6,819億円と前回の消費税率引き上げ前(1997年3月)と同程度の伸びとなりました。高額商品の家具や家電などの雑貨が同+67.2%、化粧品や宝飾品などの身の回り品が同+38.6%と大きく伸びました。一方、生活必需品である食料品は同+5.0%と駆け込み需要の影響はあまり見られませんでした。
 消費税導入を含め過去に2回(1989年4月と1997年4月)の消費税率の変更がありましたが、いずれも3月に駆け込み需要が大きく起こり、4月はその反動で減少し、今回も4月は前回と同様に10%前後の減少が見込まれます。国内景気は緩やかながら回復の傾向にあることや、17日に公表された経団連の1次集計によると、今年の大企業における賃上げ率は15年ぶりに2%を超える見通しであることなどから、消費は夏場以降に回復することが期待されます。

3.今後の見通し

 4-6月期の国内消費は駆け込み需要の反動で減少が見込まれますが、国内景気は夏場以降に回復へ向かうと思われます。日銀は異次元緩和策を継続していますが、15日の安部総理との会談で黒田総裁は「物価安定目標の達成に支障をきたすような恐れがあれば、ちゅうちょなく金融政策を変更する」とコメントしていることから、追加の金融緩和策も期待されます。30日には消費税引き上げ後最初の「展望レポート」が公表される予定であり、景気や物価に対する評価が注目されます。
 一方、海外の景気を見ると緩やかながら回復基調となっています。米国は昨年末からの大寒波の影響が和らぎつつあり、雇用や個人消費に回復の兆しが見え、景気は緩やかな回復基調が続いていると見られます。欧州も内需が安定しているドイツがユーロ圏をけん引し景気は底堅く推移すると見られます。中国も成長率はやや鈍化傾向にありますが、先進国と比較すると高い成長率を維持する見通しです。
 前回の消費税率引き上げ時(1997年4月)と比較すると、世界経済は回復基調にあり、また世界的に金融システムの安定が見られることから、今回の増税による景気減速への影響は一時的にとどまると思われます。

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