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1月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年2月27日

- 1月分鉱工業生産指数・前月比+4.0%で2カ月連続増加 -
- 3月分予測指数減少もあり、生産の基調判断は「緩やかな持ち直し」で据え置き -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・1月分速報値は製造工業生産予測指数の前月比+6.3%に比べれば低いものの+4.0%と2カ月連続の増加になった。また、前年同月比は、昨年1月分が消費税率引き上げ前の駆け込み需要対応の生産のピーク(2月分では大雪の影響)だった反動で、前年同月比は▲2.6%で2月ぶりの減少になった。

●1月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が13業種、減少が2業種と大半が増加だった。はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、電気機械工業等が増加し、パルプ・紙・紙加工品工業、石油・石炭製品工業の2業種だけが減少した。

●1月分速報値の鉱工業生産指数は102.6で昨年1月分の103.9以来の水準になった。

●製造工業生産予測調査によると、2月分は前月比+0.2%の増加、その後1~2月分が高水準であることの反動もあり、3月分は前月比▲3.2%である。

●製造工業の実現率は10カ月連続のマイナスで▲2.7%になった。

●製造工業の予測修正率は▲0.7%と12カ月連続のマイナスになった。

●先行きの鉱工業生産指数を2・3月分の製造工業生産予測指数の前月比で延長すると、1~3月期は前期比+3.4%となる。2四半期連続の増加になる見込みだ。

●なお、4月15日発表の2月分確報値段階で年間補正が行われ、過去の季節調整値も修正される。東日本大震災の後、企業の生産パターンが変わってきていることもあり、3月分の前月比が予測指数通り大幅に減少するかどうかは、現時点ではわからない点に留意しておくことが肝要だろう。

●1月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は+5.8%と2カ月連続の増加になった。鉱工業在庫指数は前月比▲0.6%と2カ月連続の減少になった。鉱工業在庫率指数は108.1、前月比▲3.5%で2カ月連続の下降となった。

●経済産業省の基調判断の推移を少し長いスパンでみてみよう。13年9月分で「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」と6カ月ぶりの上方修正となった。ここでようやく「緩やかな」がとれた。10月分では「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」と言葉は若干変わったが基調判断据え置きとなった。その後13年11月分・12月分・14年1月分・2月分に続き、3月分も「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」と据え置いていた。

●弱含んだのは消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断は継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向なので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直し」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直し」で据え置きになった。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、13年10~12月期では、出荷の前年比が+6.4%、在庫が同▲4.3%、14年1~3月期でも、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.4%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が6四半期ぶりに前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+1.3%、在庫が同+2.8%、と45度線を上回ってしまった。14年7~9月期でも、出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同+4.0%、と45度線を上回り、14年10~12月期でも、出荷の前年比が▲1.5%、在庫が同+6.1%、と45度線を上回っている。15年1月分でも、出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同+5.7%、と45度線を上回っている。在庫の前年比は足元も高めで推移している感じがある。在庫サイクル図からは、依然、在庫積み上がり局面にあると言える。

1~3月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1月分対10~12月分平均比は+13.0%の大幅増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.5%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1月分対10~12月分平均比は+0.0%(+0.03%)の微増になった。乗用車販売台数の1月分対10~12月分平均比は年末の軽自動車の販売促進の反動などで▲8.4%の減少になった。供給サイドのデータの方が需要サイドのデータより強い感じでスタートしている。さらにGDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)10~12月期から1~3月期へのゲタは0.0%である。総合的に考えると、1~3月期第1次速報値の個人消費は、前期比で増加となる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1月分対10~12月分平均比は+7.6%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+12.7%の増加になった。また、建設財は同+2.9%の増加になった。総合的に考えると、供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資は前期比増加となりそうだ。

●実質輸出入の動向をみると輸出の1月分対10~12月分平均比は+6.8%の大幅増加になった。輸入は同+3.3%の増加になっている。旅行収支の動向なども考慮して、1~3月期の外需の前期比寄与度は4四半期連続で前期比プラス寄与になると予測する。

●総合的に判断すると、5月20日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値はしっかりしたプラス成長率になりそうだ。

1月分景気動向指数予測

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.2程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、2月27日午前9時現在、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数の3系列が前月差プラス寄与、新規求人数、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●1月分の一致CIは前月差+1.5程度と2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な10系列では、2月27日午前9時現在、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数の2系列はプラス寄与になると予測する。なお、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業は前年同月比データのため、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動があるため弱含みやすいという面がある。

●一致CIを使った景気の基調判断は前回12月分でそれまでの「下方への局面変化」から景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正された。今回1月分も判断継続になろう。1月分が予測通りなら、3カ月後方移動平均は前月差で4カ月連続の上昇に、7カ月後方移動平均は前月差で8カ月ぶりの上昇になろう。

●1月分の先行DIは55.6%程度と5か月ぶりの50%超になると予測する。2月27日午前9時現在、速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、東証株価指数の5系列がプラス符号、日経商品指数、長短金利差、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは55.6%以上66.7%以下と50%超が確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●1月分の一致DIは70.0%程度と景気の分岐点である50%を5カ月連続で上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な10系列では、2月27日午前9時現在、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の6系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは60.0%以上80.0%以下と50%超が確定している。残る2系列では、所定外労働時間指数がプラス符号、中小企業出荷指数がマイナス符号になると予測した。