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7月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年8月31日

- 7月分鉱工業生産指数・前月比▲0.6%で2カ月ぶりの減少 -

- 生産の基調判断は「生産は一進一退で推移している」で据え置き -

- 7月分景気動向指数判断は、「足踏み」で据え置きの見通し -

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・7月分速報値前月比は▲0.6%となった。2カ月ぶりの減少である。一方、前年同月比は+0.2%と2カ月連続の増加になった。

●7月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が5業種、減少が10業種だった。化学工業(除.医薬品)、金属製品工業、石油・石炭製品工業等が増加し、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業、情報通信機械工業等が減少した。

●輸送機械工業の生産は前月比▲1.4%、出荷が前月比+2.1%、在庫の前月比が▲6.2%、在庫率指数が前月比▲9.2%だった。7月分で在庫の調整が進んだ業種と言えよう。

●電子部品・デバイス工業の生産は前月比▲3.7%。出荷とともに3カ月連続の減少だ。在庫率指数が4カ月連続上昇している。但し、製造工業予測指数では8月の生産が前月比+3.0%、9月の生産が前月比+7.2%それぞれ増産の見込みとなっている。新商品の発売時期に大きく影響される、この業種の生産の動向も注目される。

●製造工業生産予測調査によると、8月分前月比は+2.8%増加、9月分は同▲1.7%減少である。予測調査の提出期日は10日で、8月11日からの人民元の基準値切り下げ、天津の大爆発、中国発世界同時株安の影響が含まれていない点には留意が必要だ。

●製造工業の実現率は▲1.2%と2カ月ぶりのマイナスになった。予測修正率は▲1.0%と2カ月ぶりにマイナスになった。

●情報通信機械工業が実現率▲10.7%と見通しより一番下振れたが、予測修正率は▲1.4%にとどまり、8月分予測指数の前月比は+16.2%の大幅な伸び率になっている。生産の時期がズレ込んだとみられる。

●先行きの鉱工業生産指数の8・9月分を製造工業生産予測指数の前月比で延長して計算すると、7~9月期は前期比+0.6%と2四半期ぶりの増加基調に戻る見込みだ。

●7月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲0.3%と2カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫指数は前月比▲0.8%と2カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫率指数は112.2、前月比▲1.1%で2カ月連続の低下となった。

●経済産業省の基調判断は14年3月分まで、「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」とされていたが、消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向だったので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。前回6月分に続き今回7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまった。14年7~9月期で、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同+4.1%、と45度線を上回り、14年10~12月期で、出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同+6.2%、15年1~3月期で、出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同+6.2%、15年4~6月期で、出荷の前年比が▲0.3%、在庫が同+4.0%、と45度線を上回っている。15年7月分では、出荷の前年比が▲0.7%、在庫が同+2.7%とまだ45度線を上回っている。在庫サイクル図からは、依然、在庫積み上がり局面にあると言える。

(7~9月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7月分の対4~6月平均比は反動増で+3.7%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.4%の減少だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7月分の対4~6月平均比は0.0%の横這いになった。乗用車販売台数の7月分の対4~6月平均比は▲1.0%の減少になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4~6月期から7~9月期へのゲタは▲0.3%だ。雇用・所得環境が緩やかに改善している中、関連データから総合的に考えると、7~9月期第1次速報値の個人消費は、前期比で若干のプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の7月分の対4~6月平均比は+0.8%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同+1.7%の増加になった。また、建設財は同+0.8%の増加になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資・前期比はプラスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の7月分の対4~6月平均比は▲0.5%の減少になった。輸入は同+1.1%の増加になっている。7~9月期のモノだけでみると外需はマイナス寄与になる可能性が大きそうだ。

●現段階ではまだ7月分のデータしか出ていないがそれらをもとに総合的に判断すると、11月16日に発表される7~9月期の実質GDP第1次速報値・前期比は緩やかなプラス成長に戻るとみられるが、8・9月分のデータを予断をもつことなく注視していきたい状況だ。

(7月分景気動向指数予測)

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.4程度と5カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、8月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列である。これらのうち鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、マネーストックの3系列は前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与となると予測した。

●7月分の一致CIは前月差▲0.2程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、8月31日午前9時時点で数値が判明している7系列では耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の4系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差マイナス寄与となっている。残る2系列の、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数は前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は、6月分の「足踏みを示している」という判断が7月分でも継続になろう。機械的な景気の基調判断が「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。今回予測通りなら、3カ月後方移動平均の前月差はマイナスに転じてしまい、8月分からの3カ月連続上昇が最短になろう。一致CIが8月分以降10月分まで各々前月差+0.1、+0.2、+0.1で3カ月後方移動平均の前月差は3カ月連続上昇になる。早ければ「改善」への上方修正は10月分が発表される12月上旬になる可能性が大きいだろう。

●なお、判断が「下方への局面変化」に下方修正される条件は、一致CIの7カ月後方移動平均の前月差が、1カ月、2カ月、または3カ月の累積で1標準偏差分(0.85)以上のマイナスになることである。7月分が予想通りなら7カ月後方移動平均の前月差は2カ月ぶりの下降になるが、小幅マイナスなので3カ月の累積でも▲0.85には届かない。7月分が予測通りなら11月上旬発表の9月分で「下方への局面変化」に下方修正されるためには8・9月分が各々前月差▲0.7ずつ下降になることが必要だ。これで3カ月の累積が▲0.86程度になるがその可能性は小さいと思われる。

●7月分の先行DIは55.6%程度と4カ月連続の50%超になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、8月31日午前9時時点で数値が判明している、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、最終需要財在庫率指数、新規求人数、マネーストック、東証株価指数の4系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは44.4%以上55.6%以下が確定している。残る新設住宅着工床面積がプラス符号になると予測する。

●7月分の一致DIは33.3%程度と2カ月ぶりに50%割れになると予測する。足元の景気もたつきを示唆する数字となってしまおう。速報値からデータが利用可能な9系列では、8月31日午前9時時点で数値が判明している、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の3系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の4系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは33.3%以上55.6%以下が確定している。残る、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数の2系列がマイナス符号になるとみた。