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7月分機械受注について

2015年9月10日

― 7月分機械受注(除船電民需)は前月比▲3.6%と予想外に2カ月連続減少 ―
― 7~9月分機械受注(除船電民需)は5四半期ぶり前期比減少の可能性も ―
― 内閣府判断は「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正 ―

●7月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲3.6%と2カ月連続の減少になった。6月分の反動で増加になるとみられていたが予想外の減少となった。一方、機械受注(除船電民需)前年同月比は+2.8%と6月分の+16.6%という2ケタの伸び率から1ケタに鈍化したものの8カ月連続の増加となった。

●機械受注(除船電民需)の大型案件は7月分も6月分と同様にゼロだった。除船電民需以外では、非製造業の電力業でその他重電機の1件大型案件があったという。外需は6月分では火水力原動機1件、発電機1件、化学機械2件、鉄道車両1件、航空機3件、船舶3件の合計11件大型案件があったが、7月分では化学機械3件、航空機1件、船舶5件の合計9件だった。

●7月分の製造業の前月比は▲5.3%と2カ月連続の減少になった。製造業15業種中、7業種が増加で8業種が減少で増減まちまちだ。6月分で前月比+186.6%だった食品製造業や、+47.1%だった電気機械が7月分は反動減で、それぞれ▲62.2%、▲27.3%の大幅減になったマイナス寄与度を、増加した業種のプラス寄与度でカバーできなかったようだ。

●7月分の非製造業(除船電民需)の前月比は▲6.0%と2カ月ぶりの減少になった。非製造業全体では、前月比は▲6.6%と2カ月ぶりの減少である。非製造業12業種中、4業種が増加で8業種が減少となった。

●7~9月期の機械受注(除船電民需)の見通しは前期比+0.3%と小幅な増加である。この見通しを達成するには8・9月分で各々前月比+9.6%の高い伸び率が必要になる。また8・9月分が各々前月比+9.2%でも7~9月期の機械受注(除船電民需)前期比は0.0%と横ばいだ。

●7~9月期の機械受注(除船電民需)の前期比+0.3%の見通しは単純集計値に過去3四半期平均達成率(季節調整済)104.0%を乗じて求めている。この単純集計値の数字が実現すると7~9月期の機械受注(除船電民需)の前期比▲3.6%程度の減少だ。この数字を達成するには8・9月分で各々前月比+5.5%が必要となる。

●但し7~9月期に関しては実績が見通しから上振れる傾向がある。2009年(平成21年)5月15日に達成率の計算手法に季節調整値を使用するという変更が行われて以降、2009年(平成21年)~14年(平成26年)の6年間では全て「実績」が「見通し」を上回っている。平均で4.9ポイント上回っており、見通し計算のかさ上げ分4.0ポイントを上回っている。今年は、予期せぬかたちで8月に中国初の世界同時株安など先行きの景気減速懸念が生じているため、いつものように実績が見通しから上振れる可能性は低そうだ。

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注の7月分前月比は▲10.2%と2カ月ぶりの減少になった。7~9月期の見通しは▲2.1%の減少だが、この見通しを達成するには8・9月分で各々前月比+2.7%の伸び率が必要になる。8・9月分で各々前月比+4.7%以上なら実績が2四半期連続の増加になる。

●7月分の外需は、前月比+10.2%と3カ月連続の増加となった。7~9月期見通しは前期比+8.0%の増加だが、この見通しを達成するには8・9月分が各々前月比▲14.7%の伸び率で良い。これは、4~6月期から7~9月期へのゲタが+13.9%あることと7月分が2ケタの前月比であったことが大きい。最近、中国の動向など世界経済の見通しが一段と不透明になっている中で、意外にも7月分の外需はしっかりしている。

●内閣府の基調判断は、14年7月分では「機械受注は、一進一退で推移している」であったが、8月分では「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と5カ月ぶりの上方修正になり、9月分・10月分では据え置きとなった。11月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に3カ月ぶりに下方修正されたが、それも一時的で、12月分では「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と、2カ月ぶりに上方修正され、8~10月分と同じ判断に戻った。15年1月分・2月分・3月分と「機械受注は、緩やかな持ち直しの動きがみられる」と判断据え置きになっていたが、4月分で「機械受注は、持ち直している」に4カ月ぶりに上方修正され、5月分と6月分では据え置かれていた。

●今回7月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に8カ月ぶりの下方修正となった。8月には中国発世界同時株安など企業心理を冷え込ませる状況が生じているだけに先行きが懸念されるが、昨年末のように基調判断の下方修正が一時的なものにとどまることを期待したい。

●7月分景気動向指数・CI改定値で新たに改定値から加わる系列として、先行系列では実質機械受注(製造業)がある。前月差寄与度は▲0.19程度のマイナス寄与になるとみる。先行CI・改定値の前月差は速報値の▲1.6の下降からやや下方修正される可能性が大きいとみる。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)がマイナス符号で加わり、40.0%程度と速報値の44.4%から下方修正になると予測する。