ホームマーケット経済指標解説15年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について

15年7〜9月期実質GDP(第1次速報値)について

2015年11月16日

●15年7~9月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比▲0.2%、前期比年率▲0.8%と、設備投資や在庫投資が減少したことを主因に、2四半期連続のマイナス成長になった。但し、前の四半期である4~6月期実質GDPは前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%から前期比▲0.2%、前期比年率▲0.7%に上方修正となった。

●7~9月期の名目GDP成長率は前期比+0.0%、前期比年率+0.1%と、微増ながら、こちらは4四半期連続の前期比プラス成長になった。

●7~9月期第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は+0.5%だった。雇用者報酬の前期比が名目+0.9%、実質+0.8%と伸び率を高める中で、底堅い動きとなった。GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている消費総合指数の最新データは9月12日に公表されたが4~6月期の前期比は▲0.7%、7~9月期の前期比は+0.4%の増加であった。本日発表された民間最終消費支出の4~6月期の前期比は▲0.6%、7~9月期の前期比は+0.5%であるので、消費総合指数よりもしっかりした伸び率になった。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は+1.4%と2四半期ぶりの増加になった。半耐久財の前期比は+2.6%と2四半期ぶりの増加になった。非耐久財の前期比は+0.2%で2四半期ぶりの増加になった。サービスの前期比は+0.4%で4四半期連続の増加になった。

●実質設備投資7~9月期の前期比は▲1.3%と、企業収益が改善する中で2四半期連続の減少になった。中国経済の先行きに対する懸念などが企業マインドを慎重にさせているのだろうか。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲1.5%の減少で、また需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+11.5%の増加であると、公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、15年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。なお、法人企業統計の類似データと言われている建設物価調査会・設備投資調査(土地・ソフトウエア除く)(調査時点9月1日)の発表は今回も遅れている。12月上旬頃公表とのことで、現時点での法人企業統計の予測などには使えない。あと2回の遅れで通常の公表ペースに戻すよう対応中とのことだ。

●住宅投資は前期比+1.9%と、3四半期連続の増加になった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.5%だった。GDPと比較すると、在庫投資を除いた最終需要はプラスの伸び率であることがわかる。民間在庫投資の内訳をみると、全てマイナス寄与で、製品在庫が前期比寄与度▲0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫も▲0.0%とマイナス寄与で、残る流通在庫は前期比寄与度▲0.3%だった。

●政府最終消費は前期比+0.3%と6四半期連続増加。公共投資は、前期比▲0.3%と2四半期ぶりの減少だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%.公的需要全体の前期比寄与度は+0.0%となった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.1%と3四半期ぶりのプラス寄与になった。実質輸出は前期比+2.6%と2四半期ぶりの増加になった。財は前期比+1.8%と2四半期ぶりの増加、サービスは前期比+7.0%と2四半期ぶりの増加になった。実質輸入の前期比は+1.7%と2四半期ぶりの増加になった。財に関しては前期比+2.3%と2四半期ぶりの増加、サービスは前期比▲1.0%と2四半期連続の減少になった。

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は+2.0%で、7四半期連続プラスの伸び率になった。輸入デフレーターが原油価格下落の影響で前年同期比▲7.2%と4~6月期の前年同期比▲4.6%からマイナス幅が拡大した分、GDPデフレーターの前年同期比は上昇した。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.2%と、4~6月期の0.0%からプラスに転じた。一方、7~9月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.2%で4四半期連続のプラス、国内需要デフレーターの前期比は+0.2%で2四半期連続のプラスになった。

●15年度実質GDP成長率の政府見通しは+1.5%だが、各四半期の前期比が+1.2%(小数点第二位までだと+1.14%)が達成には必要だ。14年度から15年度へのゲタは+0.9%になった。なお、実質GDPの14年度から15年度へのゲタは+0.4%→+0.7%→+0.9%(+0.88%)→+0.9%(+0.89%)→+0.9%(+0.92%)と発表の度に上方修正されている。

●4~6月期第2次速報値時点のものと比べてみると、残り3四半期ゼロ%で+0.6%だったのが、残り2四半期ゼロ%で+0.6%になっていることから、7~9月期の実質GDPは過去の変化も織り込めば実質ゼロ成長だったと言えそうだ。

●12月8日に発表される7~9月期第2次速報値では12月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定されるので、法人企業統計の内容が注目される。また、2013年度が確確報に、2014年度が確報に数字が大きく変わる影響を受けるので過去の数字の変化にも注目したいところだ。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、仕掛品在庫だけが前年同期比小幅マイナス寄与だった模様だ。残りは全てプラス寄与で、原材料在庫、製品在庫の前年同期比寄与度がゼロに近いプラスだったようだ。流通在庫のプラス寄与度が一番大きかった模様だ。