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12月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年1月29日

- 12月分鉱工業生産指数・前月比▲1.4%の減少 -
- 基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置き -
- 12月分景気動向指数・一致CIは2カ月連続前月差下降の見通し -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・12月分速報値前月比は▲1.4%となった。2カ月連続の減少である。前年同月比は▲1.6%と2カ月ぶりの減少に転じた。

●12月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が4業種、減少が11業種だった。はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業等が減少し、窯業・土石製品工業、情報通信機械工業、化学工業(除.医薬品)等が増加した。モイスチャークリーム、クレンジングクリームの増加には爆買いの影響も大きそうだ。

●前回の製造工業生産予測調査によると、12月分前月比は+0.9%増加であったが、実現率は▲2.4%の下振れだった。製造工業生産予測調査ベースの12月分前月比は▲1.5%減少が実績だった。

●情報通信機械工業の12月の実現率は▲11.9%、はん用・生産用・業務用機械工業は同▲3.4%だった。10日時点の見通しとその月の実績が大きく乖離した。

●今回の製造工業生産予測調査によると、1月分前月比は+7.6%、2月分は同▲4.1%の見通しである。

●先行きの鉱工業生産指数を製造工業生産予測指数の前月比で延長し、3月の前月比をゼロで計算すると、10~12月期の前期比+0.6%に続き1~3月期も同+3.3%と2四半期連続の増加になる見込みだ。年明け以降のマーケットの混乱など不透明要因はあるものの、生産は一進一退ながら緩やかな増加基調にはあるのだろう。

●12月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲1.7%と2カ月連続の減少になった。鉱工業在庫指数は前月比+0.4%と2カ月連続の増加になった。鉱工業在庫率指数は116.0、前月比+0.4%と2カ月連続の上昇になった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると10~11月分で変化が現れた。14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年7~9月期では、出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同+2.1%、と在庫の前年比は鈍化してきたものの、まだ45度線を上回っていて在庫調整局面にあることを示していた。15年10~11月分では、出荷の前年比が▲0.1%、在庫が同▲0.4%とどちらの前年比もマイナスなものの、いったん45度線を下回った。1年半ぶりに15年10~12月期で45度線を割り込むことへの期待があったが、実際は10~12月期では、12月分の落ち込みが響き出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同0.0%、と45度線を上回ったままとなった。

●経済産業省の基調判断は14年12月分で「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●しかし、9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になった。前回11月分に続き今回12月分でも「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」という判断で据え置きになった。

10~12月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10~12月期の前期比は+2.2%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.4%の増加だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売指数の10~12月期の前期比は0.0%と横這いになった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10~12月期の前期比は▲2.0%の減少だ。乗用車販売台数の10~12月期の前期比は+1.6%の増加だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の10~11月平均対7~9月平均比は▲0.6%だ。総合的に判断すると、エルニーニョ現象による暖冬の影響で冬物の消費が鈍かったことなどから、10~12月期第1次速報値では個人消費の前期比はマイナスの伸び率になってしまいそうだ。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10~12月期の前期比は▲1.7%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲0.9%の減少である。また、建設財は同▲2.4%の減少になった。投資財総供給は10~11月平均対7~9月平均比はプラスだが、12月の投資財出荷指数が大きく低下した。供給サイドから推計される10~12月期の実質設備投資・前期比はマイナスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の10~12月期の前期比は+2.7%の増加になった。輸入は同▲1.5%の減少になっている。10~12月期はモノだけからみると、10~12月期第1次速報値の外需はかなりのプラス寄与になりそうだ。

●2月15日に発表される10~12月期の実質GDP第1次速報値・前期比は微減の可能性がある状況だろう。

12月分景気動向指数予測

●12月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.0程度と2カ月連続の低下になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、1月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列である。これらのうち最終需要財在庫率指数、新規求人数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る新設住宅着工床面積1系列が若干の前月差プラス寄与になると予測した。

●12月分の一致CIは前月差▲1.0程度と2カ月連続の低下になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、1月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列である。耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の2系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、の5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る中小企業出荷指数1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●12月分の景気動向指数で、一致CIを使った景気の基調判断は、「足踏みを示している」という判断が継続になろう。

●機械的な景気の基調判断が、「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。11月分の3カ月後方移動平均の前月差はゼロ、12月分の3カ月後方移動平均の前月差はマイナスだ。「改善」になるのは最速でも3月分が発表される5月ということになる。しばらくはもたついた景況感が続くことになってしまった。

●12月分の先行DIは66.7%程度と6カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回る数字になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、1月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列である。そのうち、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、マネーストックの3系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは55.6%以上66.7%以下と50%超が既に確定している。残る新設住宅着工床面積はプラス符号になると予測する。

●12月分の一致DIは25.0%程度と予測する。3カ月ぶりに景気判断の分岐点となる50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、1月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列である。耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは25.0%以上37.5%以下と50%割れが既に確定している。残る、中小企業出荷指数はマイナス符号になると予測する。