ホームマーケット経済指標解説15年10~12月期実質GDP(第1次速報値)について

15年10〜12月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年2月15日

●15年10~12月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比▲0.4%、前期比年率▲1.4%と、個人消費や輸出が減少したことを主因に、2四半期ぶりのマイナス成長になった。なお、前の四半期である7~9月期実質GDPは前期比+0.3%、前期比年率+1.0%から前期比+0.3%、前期比年率+1.3%へとやや上方修正となった。

●10~12月期の名目GDP成長率は▲0.3%、前期比年率▲1.2%と、こちらも2四半期ぶりのマイナス成長になった。

●10~12月期第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は▲0.8%だった。雇用者報酬の前期比は名目+0.4%、実質+0.2%と、7~9月期に続き両方とも所得が前期比増加となる中での消費の減少となった。実質賃金(毎月勤労統計)が伸びないことが消費の悪化要因だというようなコメントも出ようが、毎月勤労統計はサンプル替えの影響があると日銀が指摘しているように幅を持ってみた方が良い統計である。GDPの雇用者報酬の動きから見ると、98年以来の強いエルニーニョ現象により暖冬となり、冬物関連の消費が伸びなかった影響が大きかったのだろう。GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている消費総合指数の最新データは2月12日に公表されたが10~12月期の前期比は▲0.7%であった。消費総合指数の前月比は10月+0.1%、11月▲1.0%、12月+0.1%であり、気温の高かった11月での悪化が目⽴っている。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は▲3.1%と4四半期連続の減少になった。半耐久財の前期比は▲3.7%と2四半期ぶりの減少になった。非耐久財の前期比は▲3.7%と2四半期ぶりの減少になった。サービスの前期比は▲0.1%と僅かだが5四半期ぶりの減少になった。

●実質設備投資10~12月期の前期比は+1.4%と2四半期連続の増加になった。名目の前期比(季節調整済み)は+1.2%とこちらも2四半期連続の増加になった。名目の前年同期比は+4.0%で7~9月期の+3.3%から伸び率を高めている。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲8.7%の減少で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲0.9%の減少であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、15年10~12月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。なお、法人企業統計の類似データと言われている建設物価調査会・設備投資調査12月調査(調査時点12月1日)の発表は今回も遅れている。2月下旬頃発表とのことで、現時点での法人企業統計の予測などには使えない。通常の公表ペースに戻すよう対応中とのことだ。なお、古い数字だが、9月調査では設備投資調査(土地・ソフトウエア除く)前年同期比は、7~9月期(実績見込み)では▲4.6%の減少だが、10~12月期(計画)では+19.3%と増加に転じることになっていた。

●実質住宅投資は前期比▲1.2%と、4四半期ぶりの減少になった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度▲0.0%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.2%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は0.0%、残る流通在庫は前期比寄与度0.0%だった。

●実質政府最終消費は前期比+0.5%と6四半期連続増加。実質公共投資は、前期比▲2.7%と2四半期連続の減少だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は0.0%であった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.1%と2四半期連続のプラス寄与になった。実質輸出は前期比▲0.9%と2四半期ぶりの減少になった。財は前期比▲1.1%と日銀の実質輸出と逆方向の予想外の2四半期ぶりの減少、サービスは前期比+0.1%と2四半期連続の増加になった。実質輸入の前期比は▲1.4%と2四半期ぶりの減少になった。財に関しては前期比▲2.1%と2四半期ぶりの減少、サービスは前期比+1.7%と3四半期連続の増加になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は前期比+0.1%の増加になった。5四半期連続の増加である。

●10~12月期のGDPデフレーターの前年同期比は+1.5%で、8四半期連続プラスの伸び率になった。輸入デフレーターが原油価格下落の影響などで前年同期比▲11.8%と7~9月期の前年同期比▲7.2%からマイナス幅が拡大した分、GDPデフレーターの前年同期比は上昇した。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.2%と、4~6月期、7~9月期の0.0%からマイナスに転じた。一方、10~12月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.1%で5四半期連続のプラス、国内需要デフレーターの前期比は+0.0%になった。

●15年の実質GDP成長率は+0.4%と2年ぶりのプラスの伸び率になった。

●15年度実質GDP成長率の政府見通し実績見込みは+1.2%だが、達成には1~3月期の前期比が+2.15%(前期比年率+8.9%)となることが必要で厳しくなった感じだ。14年度から15年度へのゲタは+0.9%だ。

●3月8日に発表される7~9月期第2次速報値では3月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定されるので、法人企業統計の内容が注目される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.4%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、原材料在庫だけが前年同期比小幅マイナス寄与だった模様だ。残りは全てプラス寄与で、流通在庫のプラス寄与度が一番大きかった模様だ。プラス寄与度が2番目に大きいのが仕掛品在庫だったようだ。製品在庫の前年同期比寄与度はゼロに近いプラスだったようだ。