ホームマーケット経済指標解説2016年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年5月18日

実質GDP成長率は前期比年率+1.7%と2四半期ぶりの増加
13日夜発表の消費総合指数と同様、個人消費はしっかりした伸び率に
-政府経済見通し+1.7%達成に16年度各四半期・前期比年率+2.4%必要-

●16年1~3月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.4%、前期比年率+1.7%と、2四半期ぶりのプラス成長になった。住宅投資、設備投資は前期比マイナスになったが、個人消費が前期比+0.5%とプラスの伸び率になったことや、純輸出の前期比寄与度が+0.2%とプラス寄与になったことを主因に増加した。国内景気は緩やかな回復基調が続いていることを裏付ける内容になった。

●1~3月期の名目GDP成長率は前期比+0.5%、前期比年率+2.0%と、こちらも2四半期ぶりのプラス成長になった。

●1~3月期第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は+0.5%と、98年以来の強いエルニーニョ現象による暖冬の影響で前期が落ち込んだ反動と、うるう年効果で、しっかりした伸び率になったようだ。先週までは前期比微増という予測が多かったが、5月13日夜に発表された内閣府の消費総合指数(GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている指数)で1月分が前月比+0.5%から+0.6%に、2月分が同▲0.2%から+0.1%に大きく上方修正され、3月分が前月比▲0.1%でも、1~3月期の前期比が+0.4%になっていた。この時点でGDPの個人消費は予測対比上振れる可能性がありそうなことは認識されていたとみられる。

●雇用者報酬の前期比は名目+0.6%、実質+1.3%と、名目は10四半期連続、実質は7四半期連続で前期比増加となった。所得が伸びないことが消費の悪化要因だというようなコメントもあるが、GDPの雇用者報酬の動きから見ると、所得の動向は個人消費の下支え要因になっているようだ。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は+5.0%と2四半期ぶりの増加になった。半耐久財の前期比は+0.7%と2四半期ぶりの減少になった。非耐久財の前期比は▲0.0%と4四半期連続の減少になった。サービスの前期比は+0.2%と2四半期ぶりの増加になった。

●実質設備投資1~3月期の前期比は▲1.4%と3四半期ぶりの減少になった。名目の前期比(季節調整済み)は▲2.2%とこちらも3四半期ぶりの減少になった。名目の前年同期比は▲1.5%で11四半期ぶりの減少になった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+6.3%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+25.7%であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、16年1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。仮置き値より高めの伸び率になる可能性もあると考えられる。なお、法人企業統計の類似データと言われている建設物価調査会・設備投資調査は12月調査(調査時点12月1日)の発表さえ大幅に遅れている。5月中には発表したいとのことで、3月調査(調査時点3月1日)の集計はその後になるので、今回も法人企業統計の予測などには使えない。

●実質住宅投資は前期比▲0.8%と、2四半期連続の減少になった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度▲0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は▲0.1%、残る流通在庫は前期比寄与度+0.2%だった。

●実質政府最終消費は前期比+0.7%と7四半期連続増加。実質公共投資は、前期比+0.3%と3四半期ぶりの増加だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は0.0%であった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.2%と3四半期連続のプラス寄与になった。実質輸出は前期比+0.6%と2四半期ぶりの増加になった。財は前期比+0.8%の増加と10~12月期に続いて日銀の実質輸出と逆方向に動いた。サービスは前期比▲0.5%と2四半期連続の減少になった。輸出に計上されるインバウンド消費の前期比寄与度は+0.1%だった。実質輸入の前期比は▲0.5%と2四半期連続の減少になった。財に関しては前期比▲0.0%と2四半期連続の減少、サービスは前期比▲2.4%と2四半期ぶりの減少になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は前期比+0.3%の増加になった。6四半期連続の増加である。

●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.9%で、9四半期連続プラスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.5%と、3四半期連続マイナスの伸び率になった。一方、1~3月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.1%で6四半期連続のプラス、国内需要デフレーターの前期比は▲0.5%になった。マイナスは4四半期ぶりだ。

●15年の実質GDP成長率は+0.6%と2年ぶりのプラスの伸び率になった。15年10~12月期第1次速報値段階で+0.4%、第2次速報値段階で+0.5%だったので、発表の度ごとに上方修正されている。

●15年度実質GDP成長率は+0.8%と2年度ぶりのプラスの伸び率になった。政府見通し実績見込み+1.2%の達成はできなかった。16年度の政府経済見通しは+1.7%。各4四半期前期比年率+2.4%(前期比+0.58%)が必要だ。15年度から16年度へのゲタは+0.2%だ。

●16年度の実質GDP成長率は各四半期が前期比+0.4%なら、前期比年率+1.2%になる。4~6月期は熊本地震の影響で足踏み状態が続きそうだが、夏以降の持ち直しに期待したいところだ。

●6月8日に発表される1~3月期第2次速報値では6月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定されるので、法人企業統計の内容が注目される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、原材料在庫と製品在庫が前年同期比マイナス寄与だった模様だ。そのうち原材料在庫は大きなマイナス寄与だったようだ。流通在庫と仕掛品在庫はプラス寄与で、流通在庫のプラス寄与度が大きかった模様だ。