ホームマーケット経済指標解説2月分鉱工業生産指数・速報値について

2月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年3月30日

2月分鉱工業生産指数・前月比▲6.2%と爆発事故の影響で2カ月ぶり減少

基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置き

3月分先行き試算値・最頻値は前月比+3.5%、4月分予測指数も増加

2月分景気動向指数・一致CI前月差は下降に転じる見込み

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・2月分速報値前月比は▲6.2%となった。2カ月ぶりの減少である。前年同月比は▲1.5%と3カ月連続減少した。

●2月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が2業種、減少が13業種だった。石油・石炭製品工業、窯業・土石製品工業が増加し、愛知製鋼の爆発事故により部品供給の障害から計画減産があった輸送機械工業、東アジアの春節による工場停止で部品出荷が少なくなった電子部品・デバイス工業などが減少した。

●前回の製造工業生産予測調査によると、2月分前月比は▲5.2%減少であったが、実現率は▲1.8%の下振れだった。製造工業生産予測調査ベースの2月分前月比は▲6.9%減少が実績だった。

●情報通信機械工業の2月の実現率は▲13.9%だった。これで4カ月連続実現率が2ケタのマイナスだ。10日時点の見通しとその月の実績が大きく乖離している。

●今回の製造工業生産予測調査によると、3月分前月比は+3.9%、4月分は同+5.3%の見通しである。輸送機械工業3月分前月比は+11.5%、4月分は同+9.4%の見通しとなっている。

●前回から鉱工業生産指数の先行き試算値を経済産業省が公表するようになった。それによると、3月分の前月比は最頻値で+3.5%、90%の確率に収まる範囲で+2.4%~+4.5%で増加になる見通しだ。

●先行きの鉱工業生産指数を、3月分先行き試算値最頻値前月比(+3.5%)で延長した場合1~3月期の前期比は▲0.8%と2四半期ぶりの減少になる見込みだ。また、3月分を製造工業予測指数前月比(+3.9%)で延長した場合の1~3月期前期比の試算値は▲0.7%とこちらも減少になってしまう。年明けの金融市場の混乱と併せ、主に特殊要因によるとはいえ、経済指標の弱含みが、人々の景況感を冷やさないか懸念される局面だ。

●3月分先行き試算値最頻値前月比、4月分製造工業予測指数前月比(+5.3%)で延長した場合、4月分の対1~3月平均比は+5.4%と2四半期ぶりの増加になる見込みだ。また、3月分、4月分とも製造工業予測指数前月比(+3.9%、+5.3%)で延長した場合の4月分の対1~3月平均比は+5.8%になる。

●2月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲4.6%と2カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫指数は前月比▲0.1%と2カ月連続の減少になった。鉱工業在庫率指数は114.1、前月比+0.5%と2カ月ぶりの上昇になったが、2~3カ月前の水準(116.0、115.5)を下回っている。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年10~12月期でも、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と45度線を上回ったままとなった。16年1~2月分でも出荷の前年比が▲3.8%、在庫が同▲0.9%、と45度線を上回ったままとなった。なお、16年1~3月期で在庫の前年同期比がこのままマイナスになれば、14年1~3月期の▲1.2%以来となる。

●経済産業省の基調判断は14年12月分で「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●その後、15年9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になった。11月分・12月分・16年1月分に続き、2月分でも「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」という判断で据え置きになった。

1~3月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月平均の対10~12月平均比は▲0.8%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.4%とこちらは増加だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売指数の1~2月平均の対10~12月平均比は▲2.4%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1~2月平均の対10~12月平均比は前期比+0.2%の増加だ。乗用車販売台数の1~2月平均の対10~12月平均比は▲2.6%の減少だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数の1月分対10~12月平均比は前期比+0.5%だ。総合的に判断すると、1~3月期第1次速報値の個人消費の前期比はプラスにはなると考えるが、もたついた伸び率になる可能性が大きそうだ。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1~2月平均の対10~12月平均比は▲0.4%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲1.2%の減少である。また、建設財は同▲0.7%の減少になった。投資財総供給の1月分対10~12月平均比は前期比▲2.8%の減少だ。供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資・前期比はもたつきそうだ。

●実質輸出入の動向をみると輸出の1~2月平均の対10~12月平均比は▲0.8%の減少になった。輸入は同+2.1%の増加になっている。10~12月期のGDP統計の実質輸出の財は前期比▲1.0%で日銀の実質輸出と予想外の逆方向になったため幅を持ってみる必要があるが、1~3月期はモノの動向を示す実質輸出入の動きだけからみると、外需はマイナス寄与になりそうだ。

●5月18日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値・前期比は3月分の関連指標の動向にもよるが、うるう年の割にもたついた伸び率になりそうな状況である。

2月分景気動向指数予測

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲2.6程度と2カ月ぶりの低下になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列である。このうち、最終需要財在庫率指数、新規求人数の2系列は前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列は前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差プラス寄与になると予測した。

●2月分の一致CIは前月差▲3.0程度と2カ月ぶりの下降になると超暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、3月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列で、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、中小企業出荷指数1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は2月分でも、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」の判断が継続しそうだ。

●基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。2月分一致CIの3カ月後方移動平均前月差は▲0.47程度の下降になってしまうと予測される。3カ月以上連続上昇の条件を満たすのは、早くても7月上旬発表の5月分になってしまうだろう。

●一方、景気の基調判断が「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.85)以上」であることが必要だ。2月分一致CIの7カ月後方移動平均前月差は3カ月の累積でも▲0.53程度にとどまるものとみられ、景気の基調判断の下方修正はないとみる。

●2月分の先行DIは22.2%程度と2カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回る数字になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月30日午前9時時点で数値が判明している8系列中、最終需要財在庫率指数、新規求人数の2系列がプラス符号で、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは22.2%以上33.3%以下と50%割れが既に確定している。残る新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●2月分の一致DIは25.0%程度と予測する。2カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を割り込もう。速報値からデータが利用可能な8系列で、3月30日午前9時時点で数値が判明している7系列中、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の2系列が前月差プラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列が前月差マイナス符号になることが判明している。一致DIは25.0%以上37.5%以下と50%割れが既に確定している。残る、中小企業出荷指数1系列がマイナス符号になると予測する。