ホームマーケット経済指標解説2016年4~6月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年4~6月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年8月15日

実質GDP成長率は前期比年率+0.2%と微増ながら2四半期連続の増加
個人消費は前期比+0.2%、消費総合指数同+0.3%と同様、前期比プラス
-設備投資は法人企業統計類似指標からみて第2次速報値で上方修正か-
-内閣府年央試算+0.9%達成に16年度残り3四半期・前期比年率+1.5%必要-

●16年4~6月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.0%、前期比年率+0.2%と、2四半期連続のプラス成長になった。個人消費、住宅投資、政府最終消費支出、公共投資は前期比プラスになったが、設備投資が前期比マイナス、純輸出の前期比寄与度がマイナス寄与になったことで成長率は僅かなプラスにとどまった。国内景気は、足踏み状態に近いものの、緩やかな回復基調が続いていることを裏付ける内容になった。

●4~6月期の名目GDP成長率は前期比+0.2%、前期比年率+0.9%と、こちらも2四半期連続のプラス成長になった。

●4~6月期・第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は+0.2%と、うるう年効果の反動も乗り越えプラスの伸び率になった。8月10日夜に発表された内閣府の消費総合指数で(GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている指数)で4月分が前月比+0.1%から▲0.0%に、5月分が同+0.3%から▲0.0%に下方修正されたものの、6月分が前月比+0.4%で、4~6月期の前期比が+0.3%になっていた。GDPの個人消費も4~6月期はほぼ同様なプラスの伸び率を維持した。

●雇用者報酬の前期比は名目+0.1%、実質+0.3%と、名目は11四半期連続、実質は8四半期連続で前期比増加となった。GDPの雇用者報酬の動きから見ると、所得の動向は個人消費の下支え要因になっているようだ。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は+1.3%と2四半期連続の増加になった。半耐久財の前期比は▲1.4%と2四半期ぶりの減少になった。非耐久財の前期比は▲0.3%と2四半期ぶりの減少になった。サービスの前期比は+0.2%と2四半期連続の増加になった。

●実質設備投資4~6月期の前期比は▲0.4%と2四半期連続の減少になった。名目の前期比(季節調整済み)は▲0.6%とこちらも2四半期連続の減少になった。名目の前年同期比は▲0.5%で12四半期ぶりの減少になった。名目の前年同期比は16年1~3月期・第1次速報値で11四半期ぶりの減少であったが、第2次速報値で増加に戻った。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲5.2%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲30.9%であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、16年4~6月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。ちなみに15年4~6月期の法人企業統計・原数値の前期比は▲30.9%と今回の需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比と同じ減少率であった。なお、法人企業統計の類似データと言われている8月10日に発表された建設物価調査会・設備投資調査によると、設備投資額(ソフトウエア・土地除く)16年1~3月期(実績見込み)の前年同期比は+6.8%、4~6月期(計画)の前年同期比は+8.1%と4~6月期の前年同期比は伸び率が高まる見込みとなっている。このことからみて法人企業統計を使う第2次速報値での設備投資は、仮置き値より高めの伸び率になる可能性が高いと考えられよう。

●実質住宅投資はマイナス金利の効果などから前期比+5.0%と、3四半期ぶりの増加になった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度▲0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は▲0.1%、残る流通在庫は前期比寄与度+0.2%だった。

●実質政府最終消費支出は前期比+0.2%と8四半期連続増加。実質公共投資は、前期比+2.3%と2四半期連続の増加だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は▲0.3%と4四半期ぶりのマイナス寄与になった。実質輸出は前期比▲1.5%と2四半期ぶりの減少になった。財は前期比▲1.8%と2四半期ぶりの減少になった。3四半期連続して日銀の実質輸出と逆方向に動いた。サービスは前期比▲0.2%と3四半期連続の減少になった。輸出に計上されるインバウンド消費の前期比寄与度は▲0.0%だった。実質輸入の前期比は▲0.1%と3四半期連続の減少になった。財に関しては前期比▲1.0%と2四半期ぶりの減少、サービスは前期比+4.3%と2四半期ぶりの増加になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は前期比+0.1%の増加になった。7四半期連続の増加である。

●4~6月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.8%で、10四半期連続プラスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.6%と、4四半期連続マイナスの伸び率になった。一方、4~6月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは+0.2%で7四半期連続のプラス、国内需要デフレーターの前期比は▲0.2%になった。マイナスは4四半期連続になった。

●16年度の実質GDP成長率・内閣府年央試算は+0.9%程度。これを達成するには残り各3四半期前期比年率+1.5%(前期比+0.36%)が必要だ。15年度から16年度へのゲタは+0.3%だ。これから政府の経済対策効果が出ることなどを考慮すると、達成不可能は数字ではないだろう。

●9月8日に発表される4~6月期第2次速報値では9月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定されるので、法人企業統計の内容が注目される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、原材料在庫と製品在庫が前年同期比マイナス寄与だった模様だ。そのうち製品在庫が大きなマイナス寄与だったようだ。流通在庫と仕掛品在庫はどちらも若干のプラス寄与だった模様だ。