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2016年5月分全国消費者物価指数について

2016年7月1日

―総務省・総合・前年同月比、コア指数前年同月比とも3カ月連続下落―
―総務省・総合・前年同月比、財は▲1.5%、サービスは+0.6%―
―コアコア指数前年比は、17年9カ月ぶりの32カ月連続上昇―
―日銀流コア前年比は4月分より0.1ポイント低下・内閣府流のコア前年比は変わらず―

●5月分の全国消費者物価指数・総合指数は2010年を100とした指数が、103.6となり、前月比は+0.1%上昇、前年同月比は▲0.4%下落した。前年同月比がマイナスになったのは3カ月連続だ。

●生鮮食品の前年同月比は▲1.2%下落に転じた。4月分は+0.2%上昇だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%と下落要因になった。一方、エネルギー全体の前年同月比は▲12.6%下落した。4月分と同じ下落率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%と中立要因だった。

●エネルギー分野の中身はまちまちだった。ガソリンの前年同月比は14年12月分で▲2.5%の下落と19カ月ぶりの下落となった後マイナスが続き、前回の16年4月分では▲16.0%になったが、今回の5月分では▲16.1%になった。前月比は+1.6%だったが、前年の方がやや上昇していた。その結果、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%と僅かに物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は14年12月分で▲3.4%の下落と28カ月ぶりの下落となった後マイナス継続で、16年4月分では▲26.8%だったが、今回の5月分では▲26.9%になった。前年同月比に対する寄与度差は0.00%と中立要因だった。電気代の前年同月比は▲9.6%で、4月分の▲9.9%から下落率がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲16.6%と、4月分の▲16.8%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●レギュラーガソリンの価格は3月7日の112円/ℓを底に6月20日・27日には124.0円/ℓまで上昇したが、4~6月は原油価格の前年水準が高かった反動や足元の円高要因などで、前年比の上昇要因になりにくい。但し、先行き夏場以降の前年比の回復にプラスに働くとみられる。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は5月分では前年同月比+5.3%と4月分の+9.2%から上昇率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%だった。そのうちテレビは4月分の前年同月比+13.3%から5月分は+5.2%へと鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲1.4%で、4月分の前年同月比▲2.4%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●5月分の宿泊料は前年同月比+6.6%で、4月分の前年同月比+1.9%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%だった。4月分は前年同月比+12.0%の上昇だった外国パック旅行は、5月分では同+9.4%と上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。

●5月分の全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比は財が▲1.5%と下落、一方サービスは+0.6%の上昇であった。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの4月分から5月分への寄与度差をみると、財は▲0.16%。一方、雇用・所得環境が改善している中、サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.01%で僅かに物価押上げ要因であった。

●5月分の生鮮食品を除く総合指数は2010年を100とした指数は103.0で、前月比は+0.1%上昇、前年同月比は▲0.4%下落した。13年4月の▲0.4%以来、3年1カ月ぶりの下落幅である。前年同月比の下落は3カ月連続だ。

●5月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.8で、前月比+0.1%の上昇、前年同月比は+0.6%の上昇となった。4月分の+0.7%から伸び率は鈍化したものの、前年同月比は32カ月連続上昇した。32カ月連続前年同月比がプラスになったのは98年8月まで長期にわたって連続で上昇していた時以来で、17年9カ月ぶりである。

●5月分の総合指数の季節調整済み指数は103.4で前月比+0.1%の上昇。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は102.8でこちらは前月比横ばい。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は101.6でこちらも前月比横ばいである。

●ESPフォーキャスト調査・6月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年4~6月期に▲0.30%まで下落したあと、7~9月期は▲0.10%、10~12月期は+0.22%、17年1~3月期は+0.69%と緩やかに上昇していく見込みだ。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度の上昇率は+0.13%、17年度の上昇率は+0.84%が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年43.53ドル/バレル、17暦年50.11ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=110円41銭、17年度1ドル=112円81銭となっている。英国の国民投票の結果EU離脱となったことで生じた円高の影響は織り込まれておらず、円高の進展の影響は物価下落要因となって働こう。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年1~3月期は▲1.1%と、15年10~12月期の▲1.5%からマイナス幅が縮小している。需給ギャップの改善は、足元の消費者物価指数の前年同月比の上昇要因になっていくと思われる。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、5月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.8%で、4月分の+0.9%から0.1ポイント低下した。前回4月分は15年7月分の+0.9%以来の+1.0%割れだったが、さらに上昇率が鈍化した。足元、日経ナウキャスト日次物価指数T指数の前年比が6月に入っても弱含み基調で、6月29日の7日移動平均は+0.2969%である。月間でも+0.3%台の可能性が大きく、5月分の+0.40%を下回るとみられる。6月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.8%を下回る可能性もあろう。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。内閣府流コア指数(固定基準)3月分の前年同月比は、+1.0%だったが、前回4月分は+0.8%で、日銀流コア指数と同じ幅の0.2ポイント分鈍化した。15年5月以来の低い伸び率で、15年6月の+0.9%以来の1.0%割れである。今回5月分は+0.8%で、日銀流コア指数とは異なり4月分と同じ伸び率で落ち着いた動きだった。

(6月分の暫定的予測)

●6月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は、5月分の▲0.4%からマイナス幅が拡大し、▲0.5%程度になると予測する。前月比は▲0.3%程度とみる。

●6月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、5月分の▲0.4%からマイナス幅が拡大し▲0.5%程度になると予測する。前月比は▲0.1%程度とみる。全国ベースの生鮮食品を除く総合の前年同月比マイナス幅が連続して拡大すれば人々のデフレ・マインドを呼び起こすものとなってしまう可能性もあり、追加の金融緩和期待が高まる要因のひとつとなろう。

●また、6月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.6%程度と5月分と同程度の伸び率になると予測する。前年同月比は98年8月までの連続上昇以来、17年10カ月ぶりの33カ月連続プラスになりそうだ。前月比は▲0.1%程度になろう。

●関連データである6月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は▲0.5%と5月分と同じ下落率になった。生鮮食品の前年同月比は+0.1%で5月分の▲1.5%の下落から上昇に転じた。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.06%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲15.3%で5月分の下落率の同▲16.0%からマイナス幅がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.07%で、上昇要因になった。一方、6月分ではテレビの前年同月比が▲6.2%と5月分同+0.5%の上昇から下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%で、物価下押し要因になった。6月分の宿泊料は前年同月比+4.0%で、5月分の前年同月比+6.6%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%になった。6月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は▲0.3%だった。また、大阪市の総合6月分前年同月比は▲0.3%と5月分の同▲0.1%から下落率が拡大した。6月分の前月比は▲0.4%だった。

●6月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.5%で5月分と同じ下落率だった。6カ月連続の下落だ。6月分の前月比は▲0.1%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の6月分前年同月比は▲0.4%と5月分の▲0.1%からマイナス幅が拡大した。6月分の前月比は▲0.2%だった。

●6月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.4%で5月分の+0.5%からやや鈍化したものの、これで14カ月連続の上昇になった。6月分の前月比は▲0.1%だった。また、大阪市では6月分前年同月比は+0.2%で5月分の+0.3%から鈍化したものの、33カ月連続の上昇となった。6月分の前月比は▲0.2%だった。