ホームマーケット経済指標解説2016年7月分全国消費者物価指数について

2016年7月分全国消費者物価指数について

2016年8月26日

―総務省・総合・前年同月比は4カ月連続、コア指数前年同月比は5カ月連続下落―
―総務省・総合・前年同月比6月分との寄与度差、財、サービスともにマイナス―
―コアコア指数前年同月比は、17年11カ月ぶりの34カ月連続上昇―
―総務省・東京都区部コア指数・前年同月比・8月分は6カ月連続下落―
―日銀流コア7月分前年同月比は0.5%へ、内閣府流コア前年同月比は0.4%に鈍化―

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数は今月から2015年基準に改定となった。2015年を100とした指数は99.6となり、前月比は▲0.2%下落、前年同月比は▲0.4%下落した。前年同月比がマイナスになったのは4カ月連続だ。

●生鮮食品の前年同月比は+0.7%の上昇だった。6月分は+0.1%の上昇だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%の上昇要因になった。一方、エネルギー全体の前年同月比は▲11.3%下落した。6月分は▲12.0%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.06%と上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目をみると、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はマイナスに働くもの、プラスに働くものまちまちとなった。ガソリンの前年同月比は、前回の16年6月分では▲13.9%だったが、今回7月分では▲14.8%と減少率が拡大した。前月比は▲0.6%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%と僅かに物価押下げ要因になった。灯油の前年同月比は、16年6月分では▲25.6%だったが、今回の7月分では▲25.4%になった。前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。電気代の前年同月比は▲8.2%で、6月分の▲9.5%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.06%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲14.4%と、6月分の▲16.1%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。

●なお、レギュラーガソリンの価格は3月7日の112円/ℓを底に6月20日・27日には124.0円/ℓまで上昇した。但し、その後は下落に転じ、8月15日は121.7円/ℓになった。8月22日も121.7円/ℓで、8週ぶりに値下がりが止まった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は7月分では前年同月比0.0%と6月分の+1.7%の上昇から横這いに転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。そのうちテレビは6月分の前年同月比▲7.8%から7月分は▲11.9%へと下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。再びデフレ的な価格設定になっている可能性がある。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲4.5%で、6月分の前年同月比▲3.6%からマイナス幅が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。

●7月分の宿泊料は前年同月比+1.0%で、6月分の前年同月比+3.7%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。また、6月分は前年同月比+10.3%の上昇だった外国パック旅行費は、7月分では同+7.4%と上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。

●7月分の全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比は財が▲1.1%と下落、一方サービスは+0.3%の上昇であった。

●6月分から7月分への変化をみると、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は幅広い品目で横ばいか僅かなマイナスになっている。全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの6月分から7月分への寄与度差は、財では▲0.01%。サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.04%であった。

●7月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は99.6で、前月比は▲0.2%下落、前年同月比は▲0.5%下落した。13年3月の▲0.5%以来、3年4カ月ぶりの下落率である。前年同月比の下落は5カ月連続だ。

●7月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は100.3で、前月比は▲0.2%下落、前年同月比は+0.3%の上昇となった。6月分の+0.5%から伸び率は鈍化したものの、前年同月比は34カ月連続上昇した。34カ月連続前年同月比がプラスになったのは98年8月まで長期にわたって連続で上昇していた時以来で、17年11カ月ぶりである。

●7月分の総合指数の季節調整済み指数は99.6で前月比▲0.2%下落。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は99.5でこちらも前月比▲0.2%下落。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は100.3でこちらは前月比▲0.1%下落である。

●ESPフォーキャスト調査・8月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年4~6月期に▲0.4%(実績)まで下落したあと、7~9月期は▲0.27%、10~12月期は▲0.00%と下落が続き、17年1~3月期になると+0.42%と緩やかに上昇していく見込みだ。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度は▲0.05%の下落、17年度は+0.70%の上昇が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年43.78ドル/バレル、17暦年50.04ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=104円40銭、17年度1ドル=106円31銭となっている。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年1~3月期は▲1.1%と、15年10~12月期の▲1.5%からマイナス幅が縮小している。需給ギャップの改善は、消費者物価指数の前年同月比の上昇要因になっていくと思われる。



(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、7月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.5%で、6月分の+0.7%から0.2ポイント伸び率が鈍化した。8月に入って、日経ナウキャスト日次物価指数T指数の前年比は概ね0.0%~+0.2%程度で推移しており、8月分は7月分のT指数の前年比+0.20%を下回るとみられる。8月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.5%を下回る可能性がありそうだ。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。2015年基準の、内閣府流コア指数(固定基準)1~3月分の前年同月比は、+0.9%だったが、4月分以降伸び率が鈍化し、今回7月分は+0.4%まで鈍化した。2010年基準時代の13年10月分の+0.3%以来の低い伸び率である。

(8月分の暫定的予測)

●8月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は、7月分の▲0.4%からマイナス幅が拡大し、▲0.5%程度になると予測する。前月比は+0.1%程度とみる。

●8月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、7月分と同じ▲0.5%程度になると予測する。前月比は0.0%程度とみる。

●また、8月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.2%程度と7月分の+0.3%の伸び率から鈍化すると予測する。但し、前年同月比は98年8月までの連続上昇以来、18年ぶりの35カ月連続プラスと、連続プラス記録は維持しそうだ。前月比は+0.1%程度になろう。

●関連データである8月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は▲0.5%と7月分の▲0.4%から下落率が拡大した。5カ月連続の下落だ。生鮮食品の前年同月比は▲2.5%で7月分の▲0.6%から下落率が拡大した。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲12.7%で7月分の下落率の▲13.9%からマイナス幅がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.09%で、上昇要因になった。また、8月分ではテレビの前年同月比が▲10.9%と7月分の▲5.9%に続き下落だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%で、下落要因になった。8月分の宿泊料は前年同月比▲0.4%で、7月分の前年同月比+1.0%の上昇から下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%になった。8月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は+0.1%だった。また、大阪市の総合8月分前年同月比は▲0.6%と7月分の▲0.3%から下落率が拡大した。8月分の前月比は0.0%だった。

●8月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.4%で7月分の▲0.4%と同じ下落率だった。6カ月連続の下落だ。8月分の前月比は+0.1%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の8月分前年同月比は▲0.6%と7月分の▲0.4%から下落率が拡大した。8月分の前月比は0.0%だった。

●8月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.1%で7月分の+0.2%から上昇率が縮小したが、34カ月連続の上昇になった。8月分の前月比は+0.3%だった。また、大阪市では8月分前年同月比は▲0.3%で7月分の▲0.1%から下落率が拡大し、2カ月連続の下落になった。8月分の前月比は+0.1%だった。