ホームマーケット経済指標解説2016年10月分景気動向指数(速報値)

2016年10月分景気動向指数(速報値)

2016年12月7日

-遂に景気基調判断が上方修正される。「足踏み」から1年半ぶりの「改善」に-
-先行CI前月差+1.0と2カ月ぶり上昇、一致CI前月差+1.4で2カ月連続上昇-
-DIを使った景気拡張の目安の3カ月連続50%超を10月分100.0%で達成-

●10月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは+1.0と2カ月ぶりの前月差上昇となった。10月分の先行CIの指数水準は101.0となった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数の3系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差+1.4と2カ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の6系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業、中小企業出荷指数の2系列が前月差マイナス寄与になった。10月分の一致CIの指数水準は113.9である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の96.2よりは17 .7ポイント高い水準だが、直近のピークである14年3月分の117.8よりは3.9ポイント低い水準だ。

●一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.63と3カ月連続して上昇した。7カ月後方移動平均の前月差は+0.40と2カ月連続の上昇になった。

●一致CIを使った景気の基調判断の近年の推移をみると、14年12月分で、「改善を示している。ただし、基調判断に用いている3カ月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない」に「下方への局面変化」から上方修正された。「下方への局面変化」から「改善を示している」に戻るのは異例のパスということだった。15年1月分で、但し書きは消えて、「改善を示している」という判断継続になった。15年2月分~4月分でも、「改善を示している」という判断継続になったが、15年5月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正された。

●その後、15年6月分~16年9月分でも判断据え置きで、1年5カ月間もの間、同じ基調判断が続いていた。

●基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。8・9・10月分で3カ月連続して3カ月後方移動平均が上昇し、10月分が前月差+1.4上昇したので遂に条件を満たした。

●景気動向指数の第一の採用系列である鉱工業生産指数の基調判断は、15年8月の「弱含み」を除き、15年5月~16年7月まで概ね「一進一退」だった。そして、16年8月分~10月分で「緩やかな持ち直し」になった。在庫調整が進展し、意図せざる在庫減少局面に入ったことが大きいとみられる。鉱工業生産指数は16年10~12月期で3四半期連続増加が予測される。景気動向指数の基調判断の改善には鉱工業生産指数の持ち直しが大きく寄与したとみられる。

●今回10月分速報値では先行DIは88.9%と4カ月ぶりに景気判断の分岐点である50%を上回った。また、一致DIは100.0%と3カ月連続50%超になった。CIを使った機械的判断が公表される以前は、よく一致DIで景気局面の判断がなされていた。一致DIを使った景気拡張の目安であった3カ月連続50%超を、直近月が100.0%という最高のかたちで、10月分は達成した。

●10月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに加わる実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は+0.21程度とプラス寄与になると予測する。機械受注の発表日は12月12日である。在庫率関連データなどが12月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかにもよるが、先行CI・改定値の前月差は+1.2程度と速報値の+1.0から上方修正となろう。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)の符号がマイナス符号になるとみて、80.0%程度と速報値の88.9%から下方修正になると予測するが、景気判断の分岐点の50%超は維持しよう。

●10月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。確報値が速報値と同じだとすれば所定外労働時間指数は前月差▲0.09程度のマイナス寄与になろう。確報値の発表日は12月22日である。一致CI前月差は+1.2程度と速報値の+1.4から下方修正となろう。また、一致DIでは所定外労働時間指数が速報値と同じだとすればプラス符号で加わることになり、他の指標の符号が不変なら、速報値と同じ100.0%程度になり、3カ月連続の50%超となろう。

●11月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。このうち日経商品指数、東証株価指数の2系列が前月差プラス寄与に、中小企業売上げ見通しDI1系列が前月差寄与ゼロに、消費者態度指数1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。4系列の前月差寄与度を合計するとプラス寄与で上昇要因になる。

●また、11月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列中、日経商品指数、東証株価指数の2系列がプラス符号に、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。このため、11月分先行DI速報値は、22.2%以上77.8%以下が確定している。