ホームマーケット経済指標解説2017年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年3月31日

-2月分鉱工業生産指数・前月比+2.0%と2カ月ぶりの増加-
-生産指数は予測指数で延長すると4~6月期にかけ5四半期連続前期比増加か-
-基調判断は4カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-一致CIによる景気判断、2月分は5カ月連続で「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・2月分速報値前月比は+2.0%と2カ月ぶりの増加になった。2月分確報値の段階で例年通りに季節調整替えが実施されることになった。2月分速報値前年同月比は+4.8%と4カ月連続の増加になった。

●2月分の生産をみると、15業種のうち1月に予定通りの減産を終えた輸送機械工業や、クレーンや数値制御用ロボットなどが増加した、はん用・生産用・業務用機械工業など9業種が増加し、1月に好調だったものの反動が出た電子部品・デバイス工業など6業種が前月比減少だった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、2月分の前月比は最頻値で+1.1%、90%の確率に収まる範囲で+0.1%~+2.1%だった。2月分前月比実績の+2.0%は製造工業生産予測指数前月比(+3.5%)より予想通り下振れたが、試算値の予想範囲内の上限内にとどまった。

●中華圏の春節の時期が今年は1月に早まったこと、トランプ大統領が就任した直後先行きの不透明感がかなり高まったことも影響し1月分は前月比減少だったが、2月分はその反動もあり増加に転じたと思われる。

●製造工業生産予測指数3月分前月比▲2.0%、4月分前月比+8.3%で、振幅を伴いつつしっかりと増加する見込みである。予測修正率も2か月連続上方修正となっており、比較的強気の生産計画になっている。4月分では運搬用や建設機械などのはん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、スマホ関連の生産増加が見込まれる電子部品・デバイス工業は前月比2ケタの前月比である。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、3月分の前月比は最頻値で▲0.3%、90%の確率に収まる範囲で▲1.3%~+0.7%である。製造工業生産予測指数前月比(▲2.0%)より上振れるという、興味深い数字になっている。熊本地震や工場爆発事故などいろいろあった昨年のデータが反映される可能性がある季節調整替えの影響が注目される。

●先行きの鉱工業生産指数3月分・4月分を製造工業予測指数前月比(▲2.0%、+8.3%)で延長し、5・6月分を横這いとした場合、1~3月期の前期比は+1.3%の増加に、4~6月期の前期比は+7.5%の増加になる見込みだ。一方、3月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.3%)、4月分は予測指数の前月比で延長し、5・6月分を横這いとした場合は1~3月期の前期比は+1.8%に、4~6月期の前期比は+9.4%の増加になる見込みだ。16年4~6月期以降17年4~6月期にかけ前期比プラスは5四半期連続になりそうだ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、15年10~12月期では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と近づいたものの45度線をやや上回った。それ以降16年4~6月分(出荷の前年比が▲2.0%、在庫が同0.0%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同▲2.0%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.7%、在庫が同▲4.6%とさらに右下に動いた。17年1~2月分では出荷の前年比が+4.0%、在庫が同▲3.3%となった。現在、在庫循環図からみて、生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていると言えよう。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分・17年1月分に続き今回17年2月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断は4カ月連続となった。

(1~3月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月平均対10~12月平均比は▲3.3%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.9%の増加だ。商業販売額指数・小売業の1~2月平均対10~12月平均比は▲0.4%の減少である。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1~2月平均対10~12月平均比は+2.1%の増加になった。乗用車販売台数の1~2月平均対10~12月平均比は▲2.0%の減少になった。供給サイドと需要サイドのデータともまちまちの動きをしている。さらにGDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の1月分対10~12月平均比は+0.8%とプラスである。総合的に考えると、1~3月期第1次速報値の個人消費は、前期比で若干増加となる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1~2月平均対10~12月平均比は▲1.5%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲1.4%の減少になった。また、建設財は同+0.3%の増加になった。供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資がどうなるかは3月分の結果待ちだ。

●実質輸出入の動向をみると輸出の1~2月平均対10~12月平均比は+2.2%の増加になった。輸入は同+0.8%の増加になっている。1~3月期の外需の前期比寄与度は3四半期連続で前期比プラス寄与になりそうだ。

●総合的に判断すると、5月18日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値はプラス成長率にはなりそうだ。

(2月分景気動向指数予測)

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.4程度と前月差下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月31日午前9時現在でデータがわかっているのは8系列だ。そのうち、最終需要財在庫率指数、日経商品指数、マネーストックの3系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しの5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になるとみた。

●2月分の一致CIは前月差+0.4程度と、1月分の下降から上昇に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数の3系列が前月差プラス寄与に、商業販売額卸売業1系列が前月差寄与ゼロに、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は16年10月分から基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になっている。予測通りなら、2月分では3カ月後方移動平均は前月差横這い、7カ月後方移動平均は上昇とみる。「足踏み」や「下方への局面変化」にはならず、5カ月連続して「改善」が続くことになろう。

●2月分の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を5カ月連続して上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月31日午前9時現在でデータがわかっているのは8系列。そのうち、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しの5系列はプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数の3系列はマイナス符号になることが判明している。先行DIは55.6%以上66.7%以下と50%超が確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列は微妙だが、プラス符号になると予測する。

●2月分の一致DIは57.1%程度と景気判断の分岐点の50%を上回る数字になると予測する。生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列がプラス符号、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列がマイナス符号だと予測した。予測通りなら景気判断の分岐点の50%を7カ月連続で上回ることになろう。