ホームマーケット経済指標解説2017年5月分景気動向指数(速報値)

2017年5月分景気動向指数(速報値)

2017年7月7日

-一致CI前月差▲1.6、4月分の大幅上昇の反動で下降に-
-生産指数・前月比プラスが見込める6月分一致CI前月差は上昇か-
-景気の基調判断は8カ月連続で「改善を示している」継続-

●5月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは+0.5と2カ月ぶりの上昇となった。5月分の先行CIの指数水準は104.7となった。速報値からデータが利用可能な9系列で、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の5系列が前月差プラス寄与に、新規求人数、新設住宅着工床面積、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差▲1.6と2カ月ぶりの下降になった。4月分が前月差+2.7と大幅上昇だった反動が出たようだ。最近、前月差が交互に上昇・下降を繰り返しているのは、採用系列の生産指数(鉱工業)の影響を受けているとみられる。速報値からデータが利用可能な7系列中、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の5系列が前月差マイナス寄与になった。

●5月分の一致CIの指数水準は115.5である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の95.8よりは19.7ポイント高い水準で、直近のピークである消費税率引き上げ直前の14年3月分の117.6を2.1ポイント下回る水準になった。

●一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.17と2カ月連続の上昇になった。7カ月後方移動平均の前月差は+0.37と10カ月連続の上昇になった。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、15年5月分~16年9月分の1年5カ月間もの間、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」という同じ基調判断が続いていたが、16年10月分で「改善を示している」に上方修正された。その後11月分・12月分・17年1月分・2月分・3月分・4月分と同じ基調判断だった。今回5月分も「改善を示している」で8カ月連続して最高の判断が続いている。

●基調判断が、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるには「当月の前月差の符号がマイナス。かつ3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(▲1.04)以上」であることが必要だ。

●また基調判断が、事後的に判定される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるには「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(▲0.87)以上」であることが必要だ。

●6月分で、「足踏み」や「下方への局面変化」などに、にわかに基調判断が下方修正になる可能性はないだろう。

●12年12月から始まった「アベノミクス景気」は17年3月分で52カ月間の長さになり、戦後3番目の長さであった86年12から始まった「バブル景気」の51カ月を超え、単独3位になった。4・5月分でさらに長さの記録を伸ばし、54カ月の長さになった。

●今年の11月8日に発表される9月分まで「改善」が続くと、65年11月から始まった「いざなぎ景気」の57カ月を抜き、景気拡張の長さは戦後単独第2位の58カ月となる。

●今回5月分速報値では先行DIは44.4%と2カ月連続して景気判断の分岐点である50%を下回った。一方、一致DIは57.1%で4カ月連続50%超になった。

●5月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は7月10日である。また在庫率関連データなどが7月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●5月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。確報値の発表日は7月21日である。速報値の寄与は前月差▲0.07程度とみられる。確報値も速報値と同じで、鉱工業生産指数などの確報値も速報値と同じと仮定すると、一致CIは▲1.6程度と速報値と同程度になり、「改善」の基調判断は変わらないだろう。また、一致DI上の所定外労働時間指数の速報値段階の符号はマイナスになる。所定外労働時間指数や鉱工業生産指数などの確報値が速報値と同じだとすると、一致DIは速報値の57.1%から50.0%に下方修正されよう。

●6月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数、日経商品指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。

●また、6月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列でプラス符号は東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列、マイナス符号は消費者態度指数、日経商品指数DIの2系列と判明している。6月分速報値段階の先行DIは22.2%以上77.8%以下が確定している。