ホームマーケット経済指標解説2017年4月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年4月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年5月31日

-4月分鉱工業生産指数はリーマン・ショック時08年10月以来の水準に回復-
-4月分鉱工業出荷指数は消費税率引上げ直前14年3月以来の水準に回復-
-基調判断は6カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-在庫サイクルは「意図せざる在庫減局面」を抜けて「在庫積み増し局面」に-
-4月分一致CI前月差大幅上昇、景気判断7カ月連続「改善」に。一致DI100%-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・4月分速報値前月比は+4.0%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業生産指数・4月分速報値の季節調整値は103.8とリーマン・ショック時08年10月分107.4以来の水準に回復した。

●自動車会社の年度末3月分の生産競争の一服や、11年の東日本大震災による電力不足対応などでの生産の季節パターンが近年変化していることに加え、昨年の愛知製鋼の爆発事故、熊本地震などの影響が残り、季節調整値は年前半に月々の振れが出やすい状況になっているようだ。加えて今年は中華圏の春節の時期が昨年に比べてズレたことも影響しているようだ。昨年12月分から生産は前月比で増減を繰り返しながら水準を切り上げてきた。最近の鉱工業生産指数の動きは、均してみると増加基調が続いてきたことを示唆している。

●鉱工業出荷指数・4月分速報値前月比は+2.7%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業出荷指数・4月分速報値の季節調整値は101.1となった。こちらは生産と違いリーマン・ショック時の水準にはまだ遠いものの、消費税率引上げ直前の14年3月分107.4以来の水準に回復した。

●4月分の生産をみると、15業種のうち輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業など11業種が増加し、情報通信機械工業、パルプ・紙・紙加工品工業、石油・石炭製品工業など4業種が前月比減少した。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、4月分の前月比は最頻値で+5.3%、90%の確率に収まる範囲で+4.3%~+6.4%だった。4月分前月比実績の+4.0%は試算値の予想範囲内の下限を下回り、製造工業生産予測指数前月比(+8.9%)より大幅に下振れた。+4.0%は一見強そうな伸び率だがこうしてみると弱含みの数字と考えられる。

●製造工業生産予測指数5月分前月比は▲2.5%、6月分前月比は+1.8%で、増減を繰り返す見込みだが4月分の水準は超えられない見通しである。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、5月分の前月比は最頻値で▲3.5%、90%の確率に収まる範囲で▲4.4%~▲2.5%とマイナスの伸び率となっている。製造工業生産予測指数前月比▲2.5%は試算値の上限だ。

●先行きの鉱工業生産指数5月分・6月分を製造工業予測指数前月比(▲2.5%、+1.8%)で延長した場合、4~6月期の前期比は+2.7%の増加になる見込みだ。一方、5月分を先行き試算値最頻値前月比(▲3.5%)、6月分は予測指数の前月比で延長した場合は4~6月期の前期比は+2.0%の増加になる見込みだ。16年4~6月期以降17年4~6月期にかけ前期比プラスは5四半期連続になりそうだ。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分・17年1月分・2月分・3月分に続き今回17年4月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になった。この判断は6カ月連続だ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、16年4~6月分(出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同▲0.5%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同▲2.7%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.8%、在庫が同▲5.3%とさらに右下に動いた。17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4月では出荷の前年比が+4.9%、在庫が同▲1.1%と右上に動いた。現在、在庫循環図からみて、「在庫積み増し局面」に入ったと言えよう。電子部品・デバイス工業や情報通信機械工業などの、製造工業生産予測指数の4月の実現率・5月の予測修正率が揃ってマイナスになっていることなど注視していく必要があろう。

(4月分景気動向指数予測)

●4月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.8程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、5月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列だ。マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の6系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になるとみた。

●4月分の一致CIは前月差+3.1程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の6系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は16年10月分から基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になっている。4月分も、一致CIの前月差が予測通りなら3カ月移動平均の前月差が上昇するので、「改善を示している」という判断が7カ月連続で続くことになろう。

●4月分の先行DIは38.9%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、5月31日午前9時時点で数値が判明している8系列中、新規求人数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの3系列がプラス符号に、消費者態度指数が保合いに、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは38.9%以上50.0%以下になることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●4月分の一致DIは景気判断の分岐点の50%を大幅に上回り、16年11月分以来の100.0%になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列は、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列がプラス符号になるとみた。