ホームマーケット経済指標解説2017年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年10月31日

-9月分鉱工業生産指数は前月比減少に転じる。前年同月比は増加基調継続-
-基調判断は11カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-予測指数からみて10-12月期鉱工業生産指数は7四半期連続前期比増加-
-7-9月期の在庫サイクルは「在庫積み増し局面」、在庫の前年比はマイナス-
-9月分一致CI前月差と3カ月移動平均も下降に転じるが景気判断は12カ月連続「改善」か-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・9月分速報値前月比は▲1.1%と2カ月ぶりの減少になった。8月分の前月比が+2.0%だったので、大幅な増加のあと、小幅に減少したかたちである。鉱工業生産指数9月分速報値の季節調整値は102.4になった。前年同月比は+2.5%で11カ月連続の増加になった。

●鉱工業生産指数は、昨年12月分以降、前月比は増減を繰り返しているが前年同月比は増加が継続している。前月比も移動平均をとるなどして均してみると増加基調が続いている。はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業といった業種は同じパターンである。なお、一部自動車メーカーの不正検査の影響による自動車生産停止の影響が足元懸念されるが、新車販売の大幅な減少に繋がらない限り、影響は限定的だろう。

●今年はゴールデンウィーク中の5月1日が月曜日、2日が火曜日と平日だったが、この2日間は工場の操業を止めた企業が多かったのではないだろうか。季節調整値にこの影響が出ている可能性もありそうだ。また、東日本大震災の前後で電力不足などへの対応から月ごとの生産パターンが大きく変わった可能性がある。

●鉱工業生産指数の季節指数は8年間のデータで算出される。東日本大震災前後の異なる生産パターンが季節指数に反映されているため、前月比の振れが生じている可能性が大きいとみられる。もう数年経つと季節指数も東日本大震災後のパターンを反映し、落ち着いたものになるのではないかと思われる。それまで少しの間は、データを読むときに均してみるなどの工夫が必要になろう。

●9月分速報値の生産指数をみると、15業種のうち、化学工業(除.医薬品)、石油・石炭製品工業、非鉄金属工業など5業種が増加し、プラスチック製品工業1業種が横這い、電子部品・デバイス工業、はん用・生産用・業務用機械工業、金属製品工業など9業種が前月比減少となった。

●9月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲2.6%、前年同月比は+1.4%で、生産指数同様に、昨年11月分から11カ月連続して前年同月比増加が続いている。

●9月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比0.0%で3カ月連続の前月比減少のあと横這いになった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、9月分の前月比は最頻値で▲1.4%、90%の確率に収まる範囲で▲2.4%~▲0.4%とマイナスの伸び率となっていた。9月分前月比実績の▲1.1%は試算値の予想範囲内のやや良い方の前月比になった。

●製造工業生産予測指数10月分前月比は+4.7%、11月分前月比は▲0.9%で、増減を繰り返している。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、10月分の前月比は最頻値で+2.4%、90%の確率に収まる範囲で+1.4%~+3.4%とプラスの伸び率となっている。製造工業生産予測指数前月比+4.7%より小幅だが、プラスの伸び率が見込まれる。

●先行きの鉱工業生産指数10月分を先行き試算値最頻値前月比(+2.4%)で延長し、11月分を製造工業予測指数前月比(▲0.9%)で、12月分を前月比ゼロで延長した場合は10~12月期の前期比は+1.8%の増加になる見込みだ。

●先行きの鉱工業生産指数9月分を製造工業予測指数前月比(+4.7%)で延長し、11月分を製造工業予測指数前月比(▲0.9%)で、12月分を前月比ゼロで延長した場合は10~12月期の前期比は+3.9%の増加になる見込みだ。17年10~12月期まで7四半期連続前期比プラスになる可能性が大きいと考えられる。

●なお、鉱工業生産指数9月分速報値の102.4を10月分の製造工業予測指数の前月比で延長すると、107.2になるが、これはリーマンショック発生直後の08年10月分の107.4以来の水準に戻ることを意味する。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年8月分に続き、今回17年9月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になった。この判断は11カ月連続だ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、16年4~6月期(出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同▲0.5%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同▲2.7%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.8%、在庫が同▲5.3%とさらに右下に動いた。17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%になり、引き続き「在庫積み増し局面」にある状況だ。

(9月分景気動向指数予測)

●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.8程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列だ。消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の3系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●9月分の一致CIは前月差▲1.8程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。最近、前月差は交互に上昇・下降を繰り返しているが、採用系列の生産指数(鉱工業)の影響を受けているとみられる。速報値からデータが利用可能な7系列中の、商業販売額指数・小売業1系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分で、それまで1年5カ月間もの間続いた「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年8月分も同じ基調判断になった。9月分は一致CIの前月差が予測通りなら3カ月移動平均の前月差も下降に転じるとみられるが、振幅の目安より小幅な下降にとどまるため、「改善を示している」という判断が12カ月連続で続くことになろう。

●9月分の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を3カ月連続で上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明している8系列中、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは66.7%以上77.8%以下と50%を上回ることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測する。

●9月分の一致DIは35.7%程度と、景気判断の分岐点である50%を2カ月ぶりに下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合いに、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の4系列がマイナス符号になると予測する。