ホームマーケット経済指標解説2017年10月分全国消費者物価指数について

2017年10月分全国消費者物価指数について

2017年12月1日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.8%、10カ月連続上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は+0.2%、4カ月連続上昇―
―同・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.3%へ鈍化。実質賃金プラスに寄与か―
―11月分東京都区部消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.6%上昇―

●10月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.6となり、前年同月比は+0.2%と13カ月連続の上昇。前月比(季節調整値)は0.0%の横這いになった。

●生鮮食品の前年同月比は▲12.1%の下落だった。9月分は+1.2%の上昇だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.62%と大きかった。前年同月が天候不順の影響で高値だった反動が出ていよう。レタスの前年同月比は▲68.6%の下落だった。

●10月分のエネルギー全体の前年同月比は+8.6%と9月分の+7.6%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.07%と上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はプラスのものとゼロのものとまちまちに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回9月分では+7.1%だったが、今回10月分では+9.9%と上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%だった。灯油の前年同月比は、9月分では+21.1%だったが、今回の10月分では+24.5%になった。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。原油市況動向が遅れて反映される都市ガス代の前年同月比は+8.3%と、9月分の+7.6%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった.一方、電気代の前年同月比は+7.9%と9月分と同じ伸び率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%にとどまった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は10月分では前年同月比▲1.1%と、9月分の前年同月比▲2.1%からやや下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比+0.8%で、9月分の前年同月比+1.2%からやや上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。10月分の通信料(携帯電話)は前年同月比▲5.2%の下落だった。携帯電話の通信料を含む通信の10月分・前年同月比は▲2.5%と、8月分の前年同月比▲3.5%から下落率が縮小した。総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と上昇要因になった。

●10月分の宿泊料は前年同月比+1.0%で、9月分の前年同月比+0.7%からやや伸び率が上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。9月分は前年同月比+3.1%の上昇だった外国パック旅行費は、10月分では同▲2.9%の下落になった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。

●診療代などの保健医療サービスの10月分は+3.1%の上昇で前回9月分と同じ上昇率だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●10月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+0.4%と9月分の同+1.5%から上昇率が大幅に鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、▲0.54%と物価下落要因になった。但し、生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.7%と9月分の+1.5%から上昇した。9月分から10月分への寄与度差は、+0.09%と物価上昇要因だった。一方、サービスの前年同月比は0.0%と9月分の表面上は同0.0%と同じだが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。なお、一般サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だが、通信・教養娯楽関連サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差の▲0.02%が主因である。

●また、10月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.3%と9月分の+0.9%から大きく鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.53%だった。この指数でデフレートする実質賃金などは前年同月比でなかなかプラスになりにくかったが、11月分ではプラスになりやすいだろう。なお10月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で9月分と同じだった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●10月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.6で、前年同月比は+0.8%の上昇となった。前月比(季節調整値)は+0.2%だった。前年同月比は1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、10カ月連続の上昇になった。前年同月比の+0.8%は9月分の+0.7%より0.1ポイント高く、消費税率引き上げの影響(+2.0%)を除くと、2014年10月の+0.9%(消費税率引き上げの影響含む+2.9%)以来3年ぶりの上昇率である。

●10月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.0で、前年同月比は+0.2%になった。前月比(季節調整値)は+0.1%だった。前年同月比は13年10月分以来17年2月分まで41カ月連続で上昇が続いていたが、そこで途絶えた。17年3月分では▲0.1%と13年7月分の▲0.1%以来44カ月ぶりの下落だったが、4月分・5月分・6月分はともに0.0%で、7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、8~10月分で+0.2%、4カ月連続の増加になった。

●ESPフォーキャスト調査・11月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、17年10~12月期で+0.75%、18年1~3月期+0.72%、4~6月期+0.73%と足踏み状態になった後、7~9月期は+0.83%、10~12月期は+0.85%、19年1~3月期は+0.88%への緩やかな上昇を見込んでいる。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では16年10~12月期0.0%、17年1~3月期0.0%の後、17年4~6月期は+0.4%、7~9月期は+0.5%のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.45%、17年1~3月期+0.75%、17年4~6月期は+1.22%と3四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)は消費者物価指数の上昇要因になるものと思われる。

●11月の内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は75.7%になった。4月分以降8カ月連続して70%台になっている。9月の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると概ね横ばいとなった。16年前半までにみられた下落基調に落ち着いた見通しになっている。

(11月分の暫定的予測)

●11月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.5%程度と10月分の+0.2%から上昇率を高めよう。14カ月連続上昇になると予測する。

●11月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.8%程度と10月分と同じ上昇率になると見た。11カ月連続上昇になると予測する。

●11月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は+0.3%程度と10月分の+0.2%からやや上昇率を高め5カ月連続の上昇と予測する。

●関連データである11月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、総合の前年同月比は+0.3%と10月分の▲0.1%の下落から2カ月ぶりに上昇に転じた。中旬速報値では、生鮮食品の前年同月比は▲6.7%で、10月分の▲14.5%から下落率が縮小した。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.37%だった。

●エネルギー全体の前年同月比は+9.2%で10月分+9.8%からやや上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%で下落要因になった。11月分の家庭用耐久財の前年同月比は+1.4%と、10月分の+4.0%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%になった。また11月分の教養娯楽用耐久財の前年同月比は+0.9%と、10月分と同じ伸び率だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。11月分の宿泊料は前年同月比+1.5%で10月分の+1.0%から上昇率がやや高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。

●また、大阪市の総合11月分前年同月比は▲0.1%で10月分の▲0.2%から下落率が縮小した。2カ月連続の下落だ。生鮮食品の11月分前年同月比は▲6.4%だ。

●11月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.6%と10月分と同じ上昇率だった。5カ月連続の上昇だ。大阪市の生鮮食品を除く総合の11月分前年同月比は+0.2%でこちらも10月分と同じになった。4カ月連続の上昇だ。

●11月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.2%で10月分の+0.0%から上昇率を高めた。また、大阪市の11月分前年同月比は▲0.1%で10月分の▲0.3%から下落率は縮小したものの、15カ月連続の下落になった。