ホームマーケット経済指標解説2018年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年3月30日

-2月分鉱工業生産指数前月比+4.1%、2カ月ぶり増加。前年比16カ月連続増加-
-2月分基調判断は「生産は緩やかに持ち直している」で、前月から据え置き-
-1~3月期の生産は8四半期ぶりの前期比減少の可能性大に、4~6月期は増加か-
-1~3月期実質GDP第1次速報値、9四半期ぶりのマイナス成長も懸念される-
-2月分景気動向指数一致CI前月差上昇になり、判断は17カ月連続「改善」に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+4.1%と2カ月ぶりの増加になった。1月分の生産指数が前月比▲6.8%減少した反動的側面も大きいとみられる。季節調整値の水準は103.4と、17年12月分の106.5以来の水準に戻った。一方、前年同月比は+1.4%で16カ月連続の増加になった。

●2月分速報値の生産指数をみると、11業種が前月比増加、3業種が前月比減少となった。増加寄与が特に大きいのは、1月分で減少の主因だった輸送機械工業である。これに続いて、はん用・生産用・業務用機械工業だった。特に、輸送機械工業の寄与が大きく、全体低下寄与の半分近くになっている。

●輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、電気機械工業の寄与が2月分では大きい。この4業種が2月分の生産の牽引役である。

●2月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+2.2%と2カ月ぶりに増加したが、生産指数の+4.1%の半分程度の伸び率にとどまった。前年同月比は+0.6%になった。前年同月比は、低めの伸び率になったものの、生産指数同様に16年11月分から16カ月連続して増加が続いている。

●2月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+0.9%で4カ月ぶりに前月比増加となった。出荷の伸び率が生産の伸び率を下回ったからだ。鉱工業在庫指数の前年同月比は+1.6%と5カ月連続の増加となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+3.0%、在庫が同+2.1%と「在庫積み増し局面」だった。18年1~2月では出荷の前年比が+1.3%、在庫が同+1.6%と「在庫積み上がり局面」に入ってきた。1~3月期全体での動きを注視したいところだ。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、2月分の前月比は最頻値で+4.7%、90%の確率に収まる範囲で+3.6%~+5.7%となっていた。2月分前月比実績の+4.1%は試算値・最頻値の+4.7%をやや下回った。

●製造工業生産予測指数3月分・前月比は+0.9%で、4月分・前月比は+5.2%となっている。4月分については、経済産業省はHPで「4月の生産計画は、補正前の3月計画から前月比5.2%上昇するという結果でした。最終的には、来月段階の計画見直しや実績段階で、下方修正されることとなっても、それなりの伸びを見込んでいることになります。ただ、この4月の生産計画の水準は、昨年12月の水準をかなり上回るものとなっています。比較的高めの生産だった昨年4月の生産実績との比較でも、8.3%増産という計画です。相当、強気の生産計画と言えると思います」と判断している。先行きの生産の基調が強いと考えられるコメントだと思われる。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、3月分の前月比は最頻値で+0.5%、90%の確率に収まる範囲で▲0.5%~+1.5%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数3月分を先行き試算値最頻値前月比(+0.5%)で延長した場合延長した場合(ケース①)は1~3月期の前期比は▲2.0%、3月分を製造工業予測指数前月比(+0.9%)で延長した場合(ケース②)は1~3月期の前期比は▲1.9%と、どちらも8四半期ぶりの減少になる見込みだ。87年7~9月期から89年4~6月期までの8四半期連続以来28年9カ月ぶりの連続記録達成は難しそうだ。

●先行きの鉱工業生産指数4月分を前月比(+5.2%:製造工業予測指数の前月比)、5月分・6月分を各々前月比ゼロで延長した場合、4~6月期の前期比は(ケース①)では+6.9%、(ケース②)では+7.2%とプラスになる見込みだ。先行き生産の増加基調が続くことを示唆する数字だろう。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、前回18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●今回2月分では「生産は緩やかに持ち直している」と判断継続となった。

(1~3月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月分平均対10~12月分平均比は▲3.2%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+0.6%の増加である。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1月分対10~12月分平均比は+1.8%の増加になった。乗用車販売台数の1~2月分平均対10~12月分平均比は▲2.1%の減少になった。さらにGDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)1月分対10~12月分平均比は▲0.2%の減少になった。総合的に考えると、1~3月期第1次速報値の個人消費は、前期比で横這い程度の可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1~2月分平均対10~12月分平均比は+0.6%の増加になった。資本財(除.輸送機械)は同▲2.3%の減少になった。また、建設財は同▲4.9%の減少になった。総合的に考えると、供給サイドから推計される1~3月期の実質設備投資・前期比はあまり芳しくない伸び率になりそうだ。

●実質輸出入の動向をみると輸出の1~2月分平均対10~12月分平均比は+1.4%の増加になった。輸入は同+2.9%の増加になっている。モノだけでみると外需はマイナス寄与になる可能性がある。非居住者家計の国内での直接購入(いわゆるインバウンド需要)はサービス面で輸出の伸びにプラス寄与するとみた。1~3月期の外需の前期比寄与度は4四半期ぶりで前期比マイナス寄与になる可能性も出てきたと判断する。

●総合的に判断すると、5月16日に発表される1~3月期の実質GDP第1次速報値は9四半期ぶりのマイナス成長も懸念される状況だ。3月分のデータがどうなるか注目されるところだ。

(2月分景気動向指数予測)

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差0.0程度になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、最終需要財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数の3系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差プラス寄与になると判断した。 

●2月分の一致CIは前月差+2.2程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の4系列が前月差プラス寄与に、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年1月分まで同じ最高の基調判断で推移してきている。2月分の一致CI前月差が上昇に戻るので、17カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。2月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は2カ月連続下降、一方、7カ月後方移動平均の前月差は上昇に戻ると予測する。 

●なお、3月分の鉱工業生産指数が前月比プラスになりそうなことは、3月分の一致CI前月差が上昇を維持する可能性が高いことを意味する。この場合は18カ月連続して「改善を示している」という判断が続くことになろう。万一、3月分の鉱工業生産指数が前月比マイナスになると、3月分の一致CI前月差が下降になり、3カ月後方移動平均の前月差の動向から見て、「足踏み」に転じる可能性が大きくなってしまう。 

●2月分の先行DIは11.1%程度と8カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、3月30日午前9時時点で数値が判明している8系列で、日経商品指数1系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは11.1%以上22.2%以下になることが確定している。残る新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。 

●2月分の一致DIは28.6%程度と7カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列は、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になると予測した。