ホームマーケット経済指標解説2018年3月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年3月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年4月27日

-3月分鉱工業生産指数前月比+1.2%、2カ月連続増加。前年比17カ月連続増加-
-3月分基調判断は「生産は緩やかに持ち直している」で、前月から据え置き-
-1~3月期の生産は前期が高すぎた反動で8四半期ぶり前期比減少、4~6月期は増加か-
-3月分鉱工業在庫指数上昇は1~3月期実質GDP第1次速報値にプラス寄与か-
-3月分景気動向指数一致CI前月差上昇になり、判断は18カ月連続「改善」に-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・3月分速報値・前月比は+1.2%と2カ月連続の増加になった。季節調整値の水準は103.9と、17年12月分の105.4以来の水準になった。一方、前年同月比は+2.2%で17カ月連続の増加になった。

●3月分速報値の生産指数をみると、電子部品・デバイス工業、化学工業(除.医薬品)、輸送機械工業等の13業種が前月比増加、その他工業、情報通信機械工業の2業種が前月比減少となった。

●3月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.2%と2カ月ぶりに減少した。前年同月比は0.0%になった。この動きが一時的なものであるか、4月分以降が要注目である。

●3月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+3.5%で2カ月連続前月比増加となった。出荷の伸び率がマイナスで、プラスの生産の伸び率と逆方向になったためだ。鉱工業在庫指数の前年同月比は+4.1%と6カ月連続の増加となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+3.0%、在庫が同+2.1%と「在庫積み増し局面」だった。18年1~3月期では出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+4.1%と「在庫積み上がり局面」に入ってきた。4~6月期で戻りの動きが出るかどうか要注目だ。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、4月分の前月比は最頻値で+1.4%、90%の確率に収まる範囲で+0.4%~+2.4%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数4月分を先行き試算値最頻値前月比(+1.4%)で、5月分を前月比(▲1.6%:製造工業予測指数の前月比)、6月分を前月比ゼロで延長した場合、4~6月期の前期比は+1.9%になる。

●先行きの鉱工業生産指数4月分を前月比(+3.1%:製造工業予測指数の前月比)で、5月分を前月比(▲1.6%:製造工業予測指数の前月比)、6月分を前月比ゼロで延長した場合、4~6月期の前期比は+3.5%になる。先行き生産は増加基調に戻ることを示唆する数字だろう。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。17年12月分でも2カ月連続同じ判断だった。

●しかし、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●前回2月分・今回3月分では「生産は緩やかに持ち直している」と判断継続となった。

(3月分景気動向指数予測)

●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.1程度になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、4月27日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、新規求人数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、マネーストック1系列が前月差寄与ゼロに、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差プラス寄与になると判断した。 

●3月分の一致CIは前月差+0.4程度と2カ月連続上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数の3系列が前月差プラス寄与に、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年2月分まで同じ最高の基調判断で推移してきている。3月分の一致CI前月差が上昇になるので、18カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。3月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は下降、一方、7カ月後方移動平均の前月差は上昇になると予測する。 

●3月分の先行DIは16.7%程度と2カ月連続景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、4月27日午前9時時点で数値が判明している8系列で、中小企業売上げ見通しDI1系列がプラス符号に、消費者態度指数1系列が保合いに、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは16.7%以上27.8%以下になることが確定している。残る新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。 

●3月分の一致DIは7.1%程度と2カ月連続景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列は、有効求人倍率1系列が保合いに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がマイナス符号になると予測した。