宅森昭吉のエコノミックレポート

REPORT

2018年3月調査 日銀短観

2018年04月02日

―大企業・製造業・業況判断DI+24は8四半期ぶり悪化、但し高水準は継続―
―中小企業・製造業・業況判断DI+15と横這い、91年8月(+20)以来の水準維持―
―「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベース全産業・全規模の設備投資」の18年度+2.0%―

●3月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが+24程度と12月調査(旧)の+25から1ポイント程度低下、12月調査(定例見直し後・新)の+26から2ポイント程度低下した。筆者の予想通りとなった。16業種中、鉄鋼や非鉄金属など8業種が低下した。足元、円高の影響や原材料高の影響などで一服感が出た。但し13年6月調査以降20期連続して「良い」超のプラスであり、息の長い緩やかな景気拡張局面が継続していることを示唆する数字と言えよう。
 
●大企業・製造業の業況判断DIは、鉱工業生産指数と相関が強い。鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+4.1%と2カ月ぶりの増加になったが、1月分の前月比▲6.8%減少をカバーするほどの前月比ではなかった。このため、先行きの鉱工業生産指数3月分を経済産業省の先行き試算値最頻値前月比(+0.5%)で延長した場合は1~3月期の前期比は▲2.0%、3月分を製造工業予測指数前月比(+0.9%)で延長した場合は1~3月期の前期比は▲1.9%と、どちらも8四半期ぶりの減少になる見込みだ。3月調査日銀短観で、大企業・製造業の業況判断DIが12月調査から低下したことと整合的だ。

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は16年3月調査・6月調査とも10%だったが9月調査で9%、12月調査と17年3月調査で7%に、6月調査・9月調査で5%に低下し、前回17年12月調査で4%になったが今回18年3月調査では5%に戻ってしまった。 

●なお、「悪い」と答えた割合は「最近」では5%だが、「先行き」では3%だ。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では29%、「先行き」では23%で変化幅が6ポイント減だ。

●3月調査の調査期間は2月26日~3月30日である。

●3月調査の大企業・製造業の業況判断DI+24は12月調査(新)の「先行き」見通し+21より3ポイント改善した。足元の景況感が予測よりは良かったということになる。
 
●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIをみると、+20と「最近」の+24から4ポイント低下が見込まれている。3月調査の18年度想定為替レートは109円66銭で、足元の実際の為替の動き(4月2日9時1ドル=106円31銭)より円安に置いている。このため、為替レートの今後の動向次第では業況判断DIが下振れることも懸念される。
 
●大企業・非製造業・業況判断DIでは、17年12月調査(新)は15年9月調査・12月調査と並ぶ+25で91年11月調査の+33以来の高水準だったが、18年3月調査では+23と2ポイント低下した。 

●18年3月調査の大企業・非製造業・業況判断DIは27期連続のプラスである。大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は16年6月調査・9月調査・12月調査で6%だったが、17年3月調査で5%に低下、6月調査で3%となった。しかし9月調査では1ポイント上昇し4%に、12月調査(新)と今回18年3月調査でも同じ4%になった。 

●大企業・非製造業では「先行き」は+20と「最近」の+23から3ポイントの悪化が見込まれている。但し、「悪い」と答えた割合は「最近」では4%だが、「先行き」は3%である。何か大きな悪材料があってDIの悪化が見込まれているわけではないことがわかる。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では27%、「先行き」では23%で変化幅が4ポイント減だ。先行きの不透明感からDIは悪化する見通しになっていることがわかる。

●中小企業・製造業の業況判断DIは16年9月調査で▲3と3四半期連続マイナスになったあと16年12月調査では+1とプラスに転じ、17年12月調査で+15と9月調査より5ポイント改善し5期連続プラスになった。なお、中小企業・製造業の業況判断DIは新・旧で変わらなかった。+15は91年8月調査+20以来の水準である。今回18年3月調査でも+15で変わらなかった。なお、3月調査の「最近」+15は12月調査の「先行き」見通しが+12になるとみていたのに対し、3ポイント上回る数字になった。足元の景況感が予測より大きく改善するという結果になった。中小企業・製造業の景況感が相当しっかりしている内容となった。
 

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、13年12月調査で+4と、92年2月の+5以来21年10カ月ぶりのプラスになっていた。17年12月調査では9月調査の+8から1ポイント改善し+9となった。なお、中小企業・製造業の業況判断DIは新・旧で変わらなかった。18年3月調査では12月調査の+9から1ポイント改善し+10となった。18期連続でマイナスになっていない。12月調査時点の「先行き」+4を6ポイント上回った。予測よりはかなり良かったということになる。+10は91年11月調査+13以来26年4カ月ぶりの水準である。
 
●但し、業種ごとに見ると、小売、と宿泊・飲食サービス以外はプラスである。なお、寒波・大雪の影響が出たとみられる小売だが3月になって桜が早く開花するなど春物が売れる環境になったことで、12月調査の▲8から3月調査では▲5とマイナスながら改善した。
 
●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は+12と「最近」+15から3ポイント悪化する見通しである。また、中小企業・非製造業は+5とこちらは「最近」より5ポイントの悪化見通しであるもののプラスの数字になった。中小企業、特に非製造業では比較的「先行き」を慎重に見る傾向があることを考慮すれば、次回6月調査の「最近」がそこまで悪くなかったとなる可能性が大きいのではないかとみられる。
 
●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになった。その後は消費税率引き上げによるもたつきなど様々な動きがあったが緩やかに改善している。今回18年3月調査では+17で17年12月調査(新)より1ポイント改善した。円高や天候不順の影響などがあったものの、それを跳ね返しての改善だ。全規模・全産業という全体の景況感は19期連続してプラスの水準だ。景気が底堅いことを示唆する数字だろう。 

●また、全規模・全産業の「先行き」業況判断は+12と、「最近」+17から5ポイント悪化する見通しである。全体としてみた、企業の景気の先行きには不透明感が強いことを示唆していよう。

●18年度の売上高計画は、大企業・中堅企業・中小企業、製造業・非製造業の、組み合わせ6つで中小企業・非製造業の0.0%以外のすべてのカテゴリーで増加になっている。マイナスのカテゴリーがないことは明るい数字と言えよう。

●雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は人手不足感が一段と強まってきていることを示唆する数字となった。大企業・全産業では▲22で12月調査の▲19(新・旧同じ)より3ポイント不足超が拡大した。92年2月調査の▲24以来26年1カ月ぶりの水準である。一方、中小企業・全産業では▲37で12月調査の▲35(新)より2ポイント不足超が拡大した。こちらは91年11月調査の▲38以来26年4カ月ぶりの水準である。バブル景気の「山」直後の人手不足感になっていることがわかる。

●18年3月調査の18年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.3%。一方、18年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲16.8%だった。18年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は▲0.7%になった。

●一方、ソフトウエア投資額と研究開発投資額は、2018年度計画・前年度比は製造業・非製造業と大企業・中堅企業・中小企業を掛け合わせた6カテゴリー全てで増加となっている。

●このためGDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2018年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+2.7%。一方、18年度の中小企業・全産業で▲10.8%だった。18年度の全規模・全産業では+2.0%になった。3月調査としてはかなりしっかりした数字で、18年度は設備投資の伸びが期待される。

●「上昇」-「下降」の割合を示す、販売価格判断DIは2回前の17年9月調査では、大企業・中小企業、製造業(うち素材業種)・製造業(うち加工業種)・非製造業の、企業規模・業種6つのカテゴリーで、前回からの変化幅で見て、拡大したものが2つ、縮小したものが1つ、変わらないものが3つで一服感が感じられる内容だったが、今回18年3月調査では前回17年12月調査(旧)と同様に縮小したものがなく、拡大したものが4つ、変わらないものが2つだった。緩やかながら物価上昇圧力が出てきている感じがする内容だと思われる。なお、仕入れ価格判断DIは前回17年12月調査(旧)では、企業規模・業種6つのカテゴリー全てで前回からの変化幅が全て拡大しコスト増の面が懸念されていたが、今回18年3月調査では中小企業・非製造業で変化幅が変わらなかった。しかし、大企業・製造業(うち素材業種)で上昇超幅が12ポイントも一気に上昇している。原材料高の影響が大きかったことがわかる。

●4月3日に発表される「企業の物価見通し」の内容が注目される。

●今回の日銀短観は、円高、株価の乱高下、原材料高、天候不順などで、大企業中心に景況感が悪化したものの、中小企業は意外と底堅い。国内政治の先行きや国際情勢や為替レートなどの先行きに関する不透明感が大きく、企業の判断も慎重にならざるをえない状況だが、詳細に見ると、設備投資計画などはしっかりで、引き続き企業の景況感の堅調さや、緩やかな景気拡張継続を示唆する数字が散見される内容と言えそうだ。