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2018年6月分機械受注

2018年8月9日

―6月分機械受注(除船電民需)前月比▲8.8%と2カ月連続減少に―
―6月分内訳、製造業前月比▲15.9%、非製造業前月比▲7.0%と両方減少―
―4~6月期前期比+2.2%に。見通し+7.1%に届かず。7~9月期は減少見通し―
―内閣府基調判断「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正―

●6月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲8.8%と2カ月連続の減少になった。一方、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+0.3%の微増ながら3カ月連続の増加になった。

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回5月分に続き、今回6月分も0件だった。 

●6月分の製造業の前月比は▲15.9%と3カ月ぶりの減少。製造業17業種中、4業種で増加し、減少は13業種だった。 

●6月分の実質機械受注・製造業の前月比が大幅になったことと本日発表されたマネーストック「M2」で6月分が下方修正されたことから、景気動向指数・確報値での先行CI前月差は、速報値の▲1.7から現状では▲2.3程度に下方修正される可能性が大きくなった。6月分の先行DIは、実質機械受注・製造業が比較対象の3月分よりは高水準だったのでプラス符号で新たに加わる。マネーストックがプラス符号から保合いに下方修正されたので、他の系列の符号が速報値段階と変わらなければ、44.4%から45.0%に上方修正されるとみられる。

●6月分の非製造業(除船電民需)の前月比は▲7.0%と6カ月ぶりの減少になった。6月分前年同月比は▲4.6%で2カ月ぶりに減少に転じた。電力業の5月分は大型案件が内燃機関で1件あり、前月比+94.4%と大幅増加だった4月分のあと、5月分も前月比+9.9%と増加だった。4月分・5月分の反動からか、電力業の6月分は、火水力原動機と運搬機械の2件の大型案件があったものの、前月比は▲11.7%の減少になった。非製造業全体では前月比▲3.9%で、こちらは3カ月ぶりの減少になった。非製造業12業種中、3業種が増加で9業種が減少となった。 

●大型案件は、前回5月分では合計4件だった。内訳をみると、民需は電力業の1件(内燃機関)。外需は3件(電子計算機類1件、化学機械1件、航空機1件)であった。今回6月分では合計7件だった。内訳をみると、民需は電力業の2件(火水力原動機、運搬機械)。官公需は地方公務の1件(その他産業機械)、外需は4件(火水力原動機2件、通信機1件、化学機械1件)であった。 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は6月分で前月比▲15.8%と2カ月ぶりの減少となった。前年同月比は▲10.3%と4カ月ぶりの減少になった。 

●外需は6月分で前月比▲12.0%と3カ月ぶりの減少となった。前年同月比は▲3.2%と15カ月ぶりの減少となった。 

●内閣府の基調判断は、17年8月分で「機械受注は 、持ち直しの動きがみられる」に4カ月ぶりに判断が上方修正された。「足踏み」という言葉が入らない表現は16年8月分以来、1年ぶりだった。9月分・10月分に続き、11月分でも基調判断は「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」で据え置きになった。12月分は、「機械受注は、持ち直しの動きがみられるものの、12月の実績は大きく減少した」で実質的に判断据え置きとなった。こうした表現は16年4月分の「機械受注は、持ち直しの動きがみられるものの、4月の実績は大きく減少した」以来であった。

●18年1月分~3月分では基調判断は「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」で据え置きになった。4月分では基調判断は「機械受注は、持ち直している」に8カ月ぶりに判断が上方修正された。前回5月分では基調判断は「機械受注は、持ち直している」で据え置きになった。今回6月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」に13カ月ぶりの下方修正になった。3カ月移動平均は6カ月ぶりに下落した。 

●機械受注(除船電民需)7~9月期の前期比見通しは▲0.3%。7~9月期の前期比実績は見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの9年間で上振れ7回、下振れ2回となっている。18年(平成30年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率101.6をかけたものである。7~9月期の前期比実績が見通しより上振れるか、下振れるかは不透明で、とりあえず7月分の動向を注視する必要がありそうだ。

●日銀短観6月調査で、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2018年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+11.0%。一方、18年度の中小企業・全産業で▲4.7%。18年度の全規模・全産業では+9.1%になった。6月時点としてはかなりしっかりした数字となっていた。また、日本政策投資銀行が8月1日に発表した18年度の設備投資計画調査で全産業の国内投資が17年度の実績比+21.6%の増加で19兆7,468億円。伸び率としては80年度以来38年ぶりの高さで、増加は7年連続としっかりした内容になった。このように計画調査はしっかりしている。 

●3月分の景気ウォッチャー調査・設備投資関連・現状判断DIを計算してみると、53.1(コメントしたウォッチャー数:8人)なのに対し、設備投資関連・先行き判断DIが45.8(同12人)と景気判断の分岐点の50割れとなっており、先行きの不透明さが、折角良くなってきた機械受注、設備投資の動きを妨げないか懸念されていた。しかし、4月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIが61.4(同8人)、設備投資関連・先行き判断DIが63.9(同9人)となった。5月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは53.3(同15人)、設備投資関連・先行き判断DIが61.4(同11人)。6月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは50.0(同12人)だが、設備投資関連・先行き判断DIが65.6(同8人)。7月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは50.0(同9人)だが、設備投資関連・先行き判断DIが67.9(同7人)となった。先行き判断DIは4月分~7月分まで4カ月連続60台としっかりした数字である。景気ウォッチャー調査の設備投資関連・先行き判断DIの動向はしっかりしている。 

●設備投資の先行指標である機械受注6月分が弱含んだのは、保護主義の高まりや天候不順などの影響で企業行動が慎重になった可能性がある。しかし、各種設備投資計画や、景気ウォッチャー調査の設備投資関連・先行き判断DIはしっかりしており、7月分の機械受注統計で持ち直しの動きがみられるかどうか注目される。