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2018年7~9月期法人企業統計・設備投資などについて

2018年12月3日

―設備投資(除くソフトウェア)前期比▲4.0%、前年同期比+2.5%―
―7~9月期実質GDP成長率、第2次速報値は設備投資主因に大幅下方修正か―

●18年7~9月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+2.5%と、8四半期連続の増加になったものの、4~6月期の前年同期比+14.0%からは▲11.5ポイントと伸び率が大幅に鈍化した。季節調整済み前期比は▲4.0%で5四半期ぶりの減少になった。また、ソフトウェア投資額を含むベースでは7~9月期の全産業の前年同期比は+4.5%だった。7~9月期の前年同期比+12.8%からは8.3ポイント伸び率が鈍化した。 

●資本金1,000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は+1.6%の増加で、4~6月期の前年同期比▲1.2%からは2.8ポイント改善した。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は+4.3%で、4~6月期の前年同期比+3.5%から0.8ポイント改善した。一方、資本金10億円以上の大企業では前年同期比は+6.0%と、4~6月期の前年同期比+23.5%から▲17.5ポイントと大幅に鈍化した。全数調査の大企業の悪化はそのままGDPの需要サイドの設備投資の悪化につながってしまう。

●供給サイドのデータに基づいて算出した18年7~9月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前年同期比は+5.2%で4~6月期の+7.5%から増加率が▲2.3ポイント鈍化していたが、今回の法人企業統計の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の4~6月期から7~9月期への前年同期比の鈍化幅は▲11.5ポイントとGDPに比べ法人企業統計の方が大幅である。18年7~9月期GDP第1次速報値の名目設備投資の前期比(季節調整済み)は+0.3%と8四半期連続の増加であるが、法人企業統計の前期比は▲4.0%でこちらは5四半期ぶりの減少だった。 

●7~9月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+7.4%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+13.4%であると公表されている。法人企業統計調査・全産業(金融業・保険業を除くベース)に設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の名目原系列前期比+13.4%を当てはめると、7~9月期の前年同期比は、4~6月期の+14.9%から伸び率が低下し+12.5%程度になる。実際は▲10.0ポイント低い+2.5%にとどまった。 

●その他のデータをみると、7~9月期の個人企業の設備投資は業種により動きはまちまちだが総じてみると製造業中心に下方修正要因になりそうだ。また、9月分が7・8月分平均よりやや鈍化した前年同月比が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成も下方修正要因になりそうだ。 

●なお、GDPベースの設備投資の算出には固定資産の当期末・前期末の関係などを考慮する断層補正が加味されるが、大企業の前年同期比の鈍化が大きいことから全体としてはあまり改善要因としては働かないとみた。

(在庫投資)

●法人企業統計の仕掛品在庫をみると18年7~9月期は1兆7,416億円で17年7~9月期の1兆7,687億円から▲271億円の減少となった。原材料在庫は18年7~9月期は3,930億円で17年7~9月期の1,701億円から2,229億円の増加となった。合わせて1,958億円、前年同期に比べ増加した。 

●一方、18年7~9月期GDP第1次速報値の名目在庫投資・原数値は622億円で17年7~9月期の1,395億円から773億円の減少であった。18年7~9月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、マイナス寄与の大きい順に原材料在庫、流通在庫で、製品在庫、仕掛品在庫はプラス寄与となっている模様だ。今回の法人企業統計からみると、仕掛品在庫は下方修正だが、原材料在庫は上方修正になるとみられる。

●なお、18年7~9月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、流通在庫は前期比寄与度▲0.2%、製品在庫が前期比寄与度+0.1%、また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同0.0%だった。

(18年7~9月期GDP・第2次速報値)

●12月10日に発表される7~9月期第2次速報値では、本日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定される。また、7~9月期第2次速報値では、16年度が第2次年次推計値に、17年度が第1次年次推計値に各々改訂される。これに伴い、過去の数字が変動する可能性がある。 

●18年4~6月期GDP第2次速報値では、実質設備投資は前期比▲3.4%程度と第1次速報値の同▲0.2%から大幅下方修正になるとみた。また、実質在庫投資の前期比寄与度は▲0.1%程度で、第1次速報値と同程度になろう。 

●また、公共工事出来高の前年比は7~8月分平均が▲3.0%だったが、7~9月期の前年比は▲2.9%とほとんど変わらなかった。このことからみて第2次速報値での実質公共投資の前期比は▲0.1%程度と第1次速報値と同程度になるとみた。

●18年7~9月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比▲0.8%程度、前期比年率▲3.2%程度と予測する。季節調整替えなどの影響もあり予測値はある程度幅を持ってみる必要があるが、第1次速報値の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%から大幅に下方修正されるとみた。