ホームマーケット経済指標解説2018年11月分全国消費者物価指数について

2018年11月分全国消費者物価指数について

2018年12月21日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.9%と鈍化も23カ月連続上昇―
―生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合とも、前月比0.0%―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比+0.3%と鈍化も17カ月連続上昇―

●11月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.8となり、前年同月比は+0.8%と10月分より0.6ポイント鈍化したものの、26カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は▲0.2%の下落となった。

●11月分で前年同月比の下落に寄与したのは生鮮食品だ。夏場の自然災害の影響が剥落し、昨年の台風の影響の反動が出た生鮮食品の前年同月比は10月分の+10.8%の2ケタ上昇から11月分では▲1.4%の下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.51%だった。 

●一方、11月分では生鮮食品を除く食料の前年同月比は11月分も+0.9%と10月分と同じ伸び率だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●11月分のエネルギー全体の前月比は+0.1%上昇したが、前年同月比は+8.1%と10月分の+8.9%から鈍化した。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は▲0.06%と前年同月比下落要因になった。なお、最近の原油価格の下落の影響から、エネルギーは先行き物価上昇を鈍化させる要因として働くと予測される。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差の動きはまちまちだった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+5.6%と10月分の+4.5%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%となった。都市ガス代の前年同月比は+5.1%と、10月分の+3.9%から上昇率が高まり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。一方、石油製品をみると、前回10月分で+2.1%だったプロパンガスの前年同月比は今回11月分では+2.3%と伸び率がやや高まったが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差が下落したのは、灯油とガソリンだ。灯油の前年同月比は、10月分では+25.8%だったが、11月分では+21.9%に鈍化した。前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。ガソリンの前年同月比は、10月分では+17.8%だったが、今回11月分では+12.8%の上昇率に鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.09%になった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は11月分では前年同月比▲1.0%と、10月分の前年同月比▲0.3%から下落率がやや拡大したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、家庭用耐久財は前年同月比▲0.6%で、こちらは10月分の▲2.0%から下落率が縮小し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●11月分の宿泊料は前年同月比+1.4%で、10月分の前年同月比▲0.3%の下落から上昇に転じ、総合指数の前年同月比に対する寄与度差が+0.02%と上昇要因になった。一方、10月分は前年同月比+15.4%の上昇率だった外国パック旅行費は、11月分では同+11.4%と鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%の下落要因になった。

●11月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.4%と10月分の同+2.6%から伸び率が鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.62%と物価下落要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.6%と10月分の+1.9%から上昇率が鈍化し、10月分から11月分への総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.11%だった。 

●11月分のサービスの前年同月比は+0.3%と10月分の同+0.2%から上昇率が高まった。10月分から11月分にかけて総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%と僅かに上昇した。内訳は公共サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差が0.00%で、一般サービスの寄与度差が+0.01%である。 

●一般サービスのうち、外食の前年同月比は10月分+1.0%から11月分+1.1%にやや上昇率が高まったが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家事関連サービスの前年同月比は10月分+0.5%から11月分+0.6%にやや上昇率が高まったが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●また、実質賃金等の計算に使用する11月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+1.0%と10月分の+1.7%から生鮮食品の下落を主因に伸び率が低下した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.61%だった。11月分の実質賃金や実質消費支出の前年同月比を押し上げる要因になる。なお、11月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で10月分同▲0.2%と同じだった。持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●11月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.6、前年同月比は10月分の+1.0%から0.1ポイント鈍化した。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、23カ月連続の上昇になった。 

●11月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は0.0%だった。 

●11月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.3で、前年同月比は10月分の+0.4%から0.1ポイント鈍化し+0.3%になった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、17年8月分以降は+0.2%~+0.5%の間で推移し、17カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。 

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年4~6月期は+0.3%、7~9月期は+0.7%、10~12月期は+0.8%、18年1~3月期+0.3%、4~6月期は+0.7%と連続してプラスが続いていたが7~9月期は▲0.2%とマイナスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.33%、17年1~3月期+0.72%、4~6月期は+1.06%、7~9月期は+1.16%、10~12月期+1.45%、18年1~3月期+1.63%、4~6月期は+1.86%と7四半期連続でプラスになっている。まだ内閣府の試算しか発表されていない(日銀は1月8日公表予定)が、18年7~9月期はもたつきがみられる状況だ。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年6月分で86.2%と16年9月の調査開始以来当時の最高になった後、18年7月分で77.1%、8月分で75.7%まで一時鈍化した。しかし、18年9月分で81.1%と3カ月ぶりに80.0を超え、10月分で87.1と最高を更新した。直近11月分では83.1と3カ月連続80台となっている(12月分は12月25日公表予定)。 

●12月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後と5年後が9月調査から0.1ポイントずつ上昇し0.9%と1.2%になった。3年後は9月調査と同じ1.1%と6四半期連続して同じ前年比上昇率になった。また、「販売価格の見通し」では1年後と5年後が9月調査と同じで各々0.8%と1.5%になった。また3年後は9月調査から0.1ポイント鈍化し1.2%になった。総じてみると企業の予想物価上昇率は9月調査と概ね同じという感じになっている。 

●ESPフォーキャスト調査・12月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、18年10~12月期+0.94%をピークに、19年1~3月期+0.89%、4~6月期+0.81%、7~9月期は+0.77%と緩やかに鈍化する見込みだ。しかし、19年10~12月期は消費増税を受けて1.63%に上昇(消費増税の影響除くと+0.73%)となっている。19年度は+1.22%(11月調査+1.35%)、19年度(消費税の影響除く)は+0.75%(11月調査+0.89%)と12月調査は11月調査より予測値がやや下振れてしまっている。足元の原油価格下落の影響で先行きエネルギー価格の鈍化が見込まれること、携帯電話料金の大幅引き下げが見込まれること、幼児教育の無償化が実施されることなどが、当面の前年同月比の抑制要因として考えられるからであろう。