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2018年12月調査 日銀短観

2018年12月14日

―大企業・製造業・業況判断DI+19で前期比横這い、4期ぶり悪化止まる。非製造業は改善―
―中小企業・製造業・業況判断DI+14で前回と同水準、非製造業は+11で改善―
―中小企業・全産業・雇用人員判断DI▲39で91年8月調査の▲40以来27年4カ月ぶりの水準―
―18年度ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベース全産業・全規模の設備投資上方修正―

●12月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが+19と9月調査の+19から横這いとなった。悪化は4期ぶりに止まった。この結果は関連データのQUICK短観やロイター短観の悪化とは異なる、意外にしっかりした結果となった。なお3期連続の悪化は、リーマンショック時を挟む07年12月から09年3月調査までの6期連続悪化以来であった。夏場の度重なる自然災害で悪化した景況感が下げ止まった感がある。米中貿易戦争などの影響は懸念されるが、足元は意外とよかったという感じだ。但し、先行き判断は4ポイント悪化の+15とみており、米中貿易戦争などのへの不安は引き続き根強いことがわかる。なお、13年6月調査以降23期連続して「良い」超のプラスであり、景況感の底堅さが継続していることを示唆する数字であるとも言えよう。
 
●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は16年3月調査・6月調査とも10%だったが9月調査で9%、12月調査と17年3月調査で7%に、6月調査・9月調査で5%に低下し、17年12月調査で4%まで低下した。しかし、18年3月調査・6月調査で5%に戻り、9月調査では6%になってしまった。今回12月調査では9月調査と同じ6%で一応悪化に歯止めはかかった。

●なお、「悪い」と答えた割合は「最近」では6%だが、「先行き」では5%だ。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では25%、「先行き」では20%で、こちらは変化幅が5ポイント減だ。先行き不透明感から「さほど良くない」に変えた企業が多いことがわかる。
 

●12月調査の調査期間は11月13日~12月13日である。

●12月調査の大企業・製造業の業況判断DI+19は9月調査の「先行き」見通し+19と同じだった。足元の景況感が予測通りだったということになる。 

●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIをみると、+15と「最近」の+19から4ポイントの悪化が見込まれている。12月調査の18年度下期想定為替レートは109円26銭で、足元の実際の為替の動き(12月14日朝:1ドル=113円台)よりかなり円高水準に置いている。このため、為替レートの今後の動向次第では業況判断DIが上振れることも予想される。 

●大企業・非製造業・業況判断DIでは、17年12月調査は15年9月調査・12月調査と並ぶ+25で91年11月調査の+33以来の高水準だったが、18年3月調査で+23と2ポイント低下した。6月調査で+24にやや改善したが、前回9月調査で+22と2ポイント低下した。今回12月調査で再び+24に戻った。

●「18年12月調査の大企業・非製造業・業況判断DIは30期連続のプラスである。大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は17年9月調査・12月調査・18年3月調査・6月調査で4%だったが、前回9月調査で1ポイント上昇し5%になった。今回12月調査では1ポイント低下し再び4%になった。「悪い」と答えた割合はこのところ低いままである。

●大企業・非製造業では「先行き」は+20と「最近」の+24より4ポイント低下が見込まれている。但し、「悪い」と答えた割合は「先行き」は4%で「最近」と同じである。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では28%、「先行き」では24%で変化幅が4ポイント減だ。先行きの不透明さが「先行き」悪化の要因であることがわかる。

●中小企業・製造業の業況判断DIは16年9月調査で▲3と3四半期連続マイナスになったあと16年12月調査では+1とプラスに転じ、17年12月調査で+15と9月調査より5ポイント改善した。+15は91年8月調査+20以来の水準である。18年3月調査でも+15で変わらなかったが、6月調査で+14とやや低下し、前回9月調査でも、今回12月調査でも+14と同水準になった。なお、12月調査の「最近」+14は9月調査の「先行き」見通しが+11になるとみていたのに対し、3ポイント上回った。足元の景況感が予測より改善するという結果である。中小企業・製造業の景況感がしっかりしている内容と言えよう。

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、13年12月調査で+4と、92年2月の+5以来21年10カ月ぶりのプラスになっていた。18年3月調査では17年12月調査の+9から1ポイント改善し91年11月調査+13以来26年4カ月ぶりの水準である+10となったが、6月調査では+8に低下した。そこをボトムに9月調査では+10と再び2ケタのプラスに戻り、今回12月調査では+11になった。21期連続でマイナスになっていない。+11は9月調査時点の「先行き」+5を6ポイント上回る水準で、予測よりはかなり良かったということになる。

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は+8と「最近」+14から6ポイント悪化する見通しである。また、中小企業・非製造業は+5とこちらは「最近」+11より6ポイントの悪化見通しであるもののプラスの数字になった。中小企業、特に非製造業では比較的「先行き」を慎重に見る傾向があることを考慮すれば、次回3月調査の「最近」がそこまで悪くなかったとなる可能性が大きいのではないかとみられる。

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになった。その後は消費税率引き上げによるもたつきなど様々な動きがあったが緩やかに改善し18年3月調査では+17になった。しかし、6月調査では+16、前回9月調査では+15と1ポイントずつ若干だが悪化していたが、今回12月調査で+16に1ポイント改善した。全規模・全産業という全体の景況感は22期連続してプラスの水準だ。景気が底堅いことを示唆する数字だろう。

●また、全規模・全産業の「先行き」業況判断は+10と、「最近」+16から6ポイント悪化する見通しである。全体としてみた、企業の景気の先行きには不透明感が強いことを示唆していよう。

●18年度の売上高計画は、9月調査に続いて、大企業・中堅企業・中小企業、製造業・非製造業の、組み合わせ6つのすべてのカテゴリーで増加率がプラス、前回からの修正率がプラスになっていることは明るい数字と言えよう。

●雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は人手不足感が再び足元で強まったことを示唆する数字となった。18年3月調査で大企業・全産業の雇用人員判断DIは▲22で92年2月調査の▲24以来26年1カ月ぶりの水準になった。6月調査では一旦▲21になったが、前回9月調査では▲23で26年7カ月ぶりの水準になった。今回12月調査も▲23である。中小企業・全産業は18年3月調査で▲37で91年11月調査の▲38以来26年4カ月ぶりの水準をつけたが、6月調査では▲35であった。前回9月調査では再び▲37で26年10カ月ぶりの水準になった。今回12月調査ではさらに2ポイント低下し▲39と91年8月調査の▲40以来27年4カ月ぶりの水準をつけた。バブル景気の「山」直後の人手不足感である。

●18年12月調査の18年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+14.3%。一方、18年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲3.7%だった。18年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は+10.4%になった。いずれも9月調査から上方修正され、しっかりした計画と言える。

●また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2018年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+10.4%。一方、18年度の中小企業・全産業で+0.8%だった。18年度の全規模・全産業では+9.6%になった。こちらも9月調査から上方修正された。18年度は設備投資の伸びが期待される状況だ。

●「上昇」-「下降」の割合を示す、販売価格判断DIは、大企業・中小企業、製造業(うち素材業種)・製造業(うち加工業種)・非製造業の、企業規模・業種6つのカテゴリーで、前回からの変化幅で見て、拡大したものが大企業・非製造業1つ、縮小したものが3つ、横這いが2つで、物価上昇圧力が止まった感じがする内容だと思われる。仕入れ価格判断DIは企業規模・業種6つのカテゴリーで前回からの変化幅で見て、拡大したものが大企業・非製造業と中小企業・製造業(うち加工業種)の2つ、残りは横這い2つ、縮小2つとまちまちだった。大企業・製造業(うち素材業種)は6ポイントの大幅低下で原材料安の影響が感じられる数字である。

●12月17日に発表される「企業の物価見通し」の内容が注目される。

●今回の日銀短観では、米中貿易戦争などの懸念の大きさが先行き判断などから引き続き感じられる一方、足元では平成最後の夏に多く発生してしまった自然災害の落ち込みからの持ち直しの動きなどがみられる内容になった。雇用判断や設備投資計画などはしっかりしており、引き続き緩やかな景気拡張継続を示唆する内容であると言えそうだ。