ホームマーケット経済指標解説2019年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2019年2月分鉱工業生産指数・速報値について

2019年3月29日

-2月分鉱工業生産指数前月比+1.4%と4カ月ぶり増加、前年同月比は▲1.0%の減少-
-経済産業省の基調判断は、2カ月連続して「総じてみれば、生産は足踏みをしている」-
-1~3月期生産指数は、2四半期ぶり前期比減少の可能性大だが、4~6月期は増加か-
-2月分景気動向指数一致CI前月差は上昇に。基調判断「下方への局面変化」継続で「悪化」は回避-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・2月分速報値・前月比は+1.4%と4カ月ぶりの増加になった。2015年を100とした季節調整値の水準は102.5と、2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった18年10月分の105.9から3.4ポイント低い水準で、18年12月の104.7以来の水準になった。また、前年同月比は▲1.0%と2カ月ぶりの減少になった。

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、2月分の前月比は最頻値で+0.4%。90%の確率に収まる範囲で▲0.6%~+1.4%の見込みとなっていた。前月比+1.4%は、上限値と同じ伸び率となった。1月分の大幅な減少からの反動増で、前月の減少率と比べると戻りは大きくはないものの、底堅い伸び率にはなったと思われる。

●2月分鉱工業生産指数では、自動車工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業等の10業種が前月比増加で、輸送機械工業(除.自動車工業)、無機・有機化学工業、電子部品・デバイス工業等の5業種が前月比減少となった。

●2月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+1.8%と4カ月ぶりに増加となった。前年同月比は▲0.3%で、3カ月連続の減少になった。

●2月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+0.5%と2カ月ぶりの前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+1.4%と4カ月連続の増加となった。

●2月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲0.2%で2カ月連続の前月比低下となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期から17年7~9月期までは「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期では出荷の前年同期比が+2.1%、在庫が同+4.1%となり「在庫積み上がり局面」に入った。18年1~3月期は出荷の前年同期比が+0.8%、在庫が同+5.2%、18年4~6月期は出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.4%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.5%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であった。18年10~12月期は、10~11月分までは出荷の前年同月比が在庫の前年同月比を上回り「在庫積み増し局面」に戻ることが一時的に期待されたものの、最終的に10~12月期全体では出荷の前年同期比が+1.0%、在庫が同+1.9%となった。18年1~2月分は出荷の前年同期比が▲0.4%、在庫が同+1.4%で、依然として「在庫積み上がり局面」の状態にあることが確認された。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると3月分は前月比+1.3%の増加、4月分は同+1.1%の増加の見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、3月分の前月比は最頻値で+0.4%の増加見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.5%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数を、3月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.4%)、4月分は前月比(+1.1%:製造工業予測指数)、5月分・6月分を前月比横這いで延長すると、1~3月期の前期比は▲2.8%の減少に、4~6月期の前期比は+1.8%になる。また、先行きの鉱工業生産指数を、3月分・4月分を製造工業予測指数前月比(+1.3%、+1.1%)で延長した場合は、1~3月期の前期比は▲2.5%の減少に、4~6月期の前期比は+2.3%になる。どちらのケースになっても、スタートの1月分が弱いので昨年に続き1~3月期の生産は前期比減少となってしまいそうだが、4~6月期は前期比増加に転じそうだ。

●経済産業省の基調判断は、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が17年12月分までの「生産は持ち直している」から下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●18年10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。前回11月分も、12月分でも同じ判断継続となった。

●19年1月分では「生産は足踏みをしている」に下方修正となった。今回2月分では判断据え置きになった。

(2月分景気動向指数予測)

●2月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.8程度と8月分以来6カ月ぶりの上昇に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、3月29日午前9時現在で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、そのうち最終需要財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は前月差プラス寄与になると予測した

●2月分の一致CIは前月差+0.9程度と10月分以来4カ月ぶりの上昇に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・卸売業が前月差寄与ゼロに、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になろう。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、18年9月分・10月分・11月分・12月分と4カ月連続「足踏みを示している」となった。1月分では、一致CI前月差は下降、かつ一致CIの7カ月後方移動平均の前月差の2カ月の累計と3カ月の累計が振幅目安の▲0.77を超えるマイナス幅となり、「下方への局面変化」に下方修正された。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す判断である。

●2月分の景気動向指数の一致CIの3カ月後方移動平均は前月差マイナスとなりそうだ。これで4カ月連続のマイナスになろう。「下方への局面変化」からさらに下方修正され、景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」になる条件のひとつである一致CIの3カ月後方移動平均の前月差が3カ月以降連続して下降になるという条件は満たす。但し、当月の一致CIの前月差がプラスになるので、「悪化」への下方修正は回避され、「下方への局面変化」の判断は維持されよう。

●3月分の景気動向指数の一致CIも、3月分製造工業生産予測指数が前月比+1.1%となっていることからみて、3月の一致CIの前月差がプラスになりそうなので、「悪化」への下方修正は回避されそうだ。4月分の一致CIの3カ月後方移動平均では、弱かった1月分のデータが外れるので、3カ月後方移動平均の前月差が上昇に転じよう。このため、「悪化」という判断に下方修正される可能性は小さいと思われる。

●2月分の先行DIは33.3%程度と景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、3月29日午前9時現在で数値が判明している8系列で、新規求人数、日経商品指数、マネーストックの3系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは33.3%以上44.4%以下と景気判断の分岐点の50%割れになることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。

●2月分の一致DIは21.4%程度と景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、耐久消費財出荷指数1系列がプラス符号、有効求人倍率1系列が保合い、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になろう。