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2019年3月分鉱工業生産指数・速報値について

2019年4月26日

-3月分鉱工業生産指数前月比▲0.9%と減少に転じ、経産省先行き試算値・下限を下回る-
-経済産業省の基調判断は、「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」に下方修正-
-1~3月期生産指数は前期比▲2.6%と2四半期ぶり減少だが、4~6月期は増加になる見込み-
-3月分景気動向指数一致CI前月差は下降、基調判断は「悪化」に下方修正-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・3月分速報値・前月比は▲0.9%と2カ月ぶりの減少になった。2015年を100とした季節調整値の水準は101.9と、2015年基準(2013年1月以降)の最高水準であった18年10月分の105.8から3.9ポイント低い水準で、18年1月の101.4以来の低水準になった。また、前年同月比は▲4.6%と2カ月連続の減少になった。

●鉱工業生産指数・1~3月期・前期比は▲2.6%と2四半期ぶりの減少になった。中国景気の減速、情報関連財の在庫調整等の影響で、生産は弱い動きとなっている。

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値では、3月分の前月比は最頻値で+0.4%。90%の確率に収まる範囲で▲0.6%~+1.5%の見込みとなっていた。前月比▲0.9%は、下限値を下回る弱い伸び率となった。

●3月分鉱工業生産指数では、電子部品・デバイス工業、汎用・業務用機械工業、無機・有機化学工業等の8業種が前月比増加で、自動車工業、生産用機械工業、金属製品工業等の7業種が前月比減少となった。

●3月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.6%と2カ月ぶりに減少となった。前年同月比は▲3.3%で、4カ月連続の減少になった。

●3月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.6%と2カ月連続して前月比増加となった。鉱工業在庫指数の前年同月比は+0.4%と5カ月連続の増加となった。

●3月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+1.7%で2カ月連続の前月比上昇となった。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年1~3月期から17年7~9月期までは「在庫積み増し局面」だったが、17年10~12月期で「在庫積み上がり局面」に入った。18年1~3月期は出荷の前年同期比が+0.8%、在庫が同+5.1%、18年4~6月期は出荷の前年同期比が+1.6%、在庫が同+2.5%、18年7~9月期も出荷の前年同期比が▲0.3%、在庫が同+3.5%と「在庫積み上がり局面」であった。18年10~12月期は、10~11月分までは出荷の前年同月比が在庫の前年同月比を上回り「在庫積み増し局面」に戻ることが一時的に期待されたものの、最終的に10~12月期全体では出荷の前年同期比が+1.1%、在庫が同+1.7%となった。18年1~3月期は出荷の前年同期比が▲1.4%、在庫が同+0.4%で、依然として「在庫積み上がり局面」の状態にあることが確認された。

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると4月分は前月比+2.7%の増加、5月分は同+3.6%の増加の見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、4月分の前月比は最頻値で▲0.5%の減少見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲1.5%~+0.5%と弱めの数字になっている。 

●先行きの鉱工業生産指数を、4月分は先行き試算値最頻値前月比(▲0.5%)、5月分は前月比(+3.6%:製造工業予測指数)、6月分を前月比横這いで延長すると、4~6月期の前期比は+1.5%になる。また、先行きの鉱工業生産指数を、4月分・5月分を製造工業予測指数前月比(+2.7%、+3.6%)で、6月分を前月比横這いで延長した場合は、4~6月期の前期比は+4.8%の増加になる。どちらのケースになっても、5月分がしっかり伸びれば、4~6月期は前期比増加に転じそうだ。

●経済産業省の基調判断は、18年1月分では「生産は緩やかに持ち直している」に判断が17年12月分までの「生産は持ち直している」から下方修正された。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」に判断が下方修正されて以来、2年5カ月ぶりのことだった。

●18年2月分以降6月分までは、「生産は緩やかに持ち直している」という判断が継続となっていたが、7月分で「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に6カ月ぶりに下方修正された。8月分・9月分でも「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と同じ判断だった。

●18年10月分では「生産は緩やかに持ち直している」という18年6月分以来の判断に上方修正された。11月分も、12月分でも同じ判断継続となった。

●19年1月分では「生産は足踏みをしている」に下方修正となった。前回2月分では判断据え置きになった。

●今回3月分では「生産はこのところ弱含み」に下方修正となった。

(3月分景気動向指数予測)

●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.4程度と2カ月ぶりの下降に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、4月26日午前9時現在で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、そのうち鉱工業生産財在庫率指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列が前月差プラス寄与、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は前月差プラス寄与になると予測した。

●3月分の一致CIは前月差▲0.9程度と2カ月ぶりの下降に転じると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列が前月差プラス寄与に、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列が前月差マイナス寄与になろう。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、16年10月分でそれまでの「足踏みを示している」から「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~18年8月分まで23カ月連続して同じ最高の基調判断で推移してきていたが、18年9月分・10月分・11月分・12月分と4カ月連続「足踏みを示している」となった。19年1月分では、「下方への局面変化」に下方修正された。「下方への局面変化」は事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す判断である。2月分も同じ判断になった。

●3月分では「悪化」に残念ながら下方修正される。3月分で一致CIの3カ月後方移動平均は前月差マイナスとなりそうだ。これで5カ月連続のマイナスになろう。景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」になる条件のひとつである一致CIの3カ月後方移動平均の前月差が3カ月以降連続して下降になるという条件を満たす。さらに、当月の一致CIの前月差がマイナスになるので、「悪化」への下方修正の条件が満たされる。

●3月分の先行DIは38.9%程度と景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、3月29日午前9時現在で数値が判明している8系列で、最終需要財在庫率指数、日経商品指数、東証株価指数の3系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合いに、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは38.9%以上50.0%以下となることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はマイナス符号になると予測した。

●3月分の一致DIは7.1%程度と景気判断の分岐点の50%割れになると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、有効求人倍率1系列が保合い、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がマイナス符号になろう。